Webgisdr ユーティリティで ArcGIS Enterprise を AWS の S3 にバックアップ

はじめに

AWS の S3 はデータを格納・管理できるオブジェクトストレージサービスです。保存したデータを自動的に 3 つのデータ センターに複製し、99.999999999% の高いデータ耐久性を実現しています。この S3 を ArcGIS Enterprise のバックアップ場所にすることで、運用中のデータを保護していきます。ここでは、Windows サーバー環境にて Portal for ArcGIS、ArcGIS Server、ArcGIS Datastore (※バージョンは、10.9.1) の基本構成が配置されていることを前提に話を進めます。

S3 接続用アカウントの作成

(※アクセス制限の部分は参考の設定になります。必要に応じて設定してください。)

  • AWS コンソールの IAM サービスにて、[ユーザー] タブをクリックします。
  • 右上の [ユーザーを追加] をクリックします。
  • [ユーザー名] を入力し、[AWS 認証情報タイプを選択] にて「アクセスキー・プログラムによるアクセス」にチェックを入れ、[次のステップ:アクセス権限] をクリックします。
  • [既存のポリシーを直接アタッチ] を選択し、フィルターに「S3」と入力します。
  • 「AmazonS3FullAccess」にチェックを入れ、[次のステップ:タグ] をクリックします。
  • [次のステップ:確認] をクリックします。
  • [ユーザーの作成] をクリックします。
  • アクセスキーID とシークレットアクセスキーを保管します。

S3 バケットの作成

バックアップ ファイルの保存先を Amazon S3 にするため、バケットを作成します。

  • AWS コンソール画面の [S3] サービス → [バケット] をクリックします。
  • [バケットを作成] をクリックします。
  • 以下の通り、設定を行い [バケットを作成] をクリックします。

<一般的な設定>

  • [バケット名]: test-arcgisenterprise-backup
  • [AWS リージョン]: アジアパシフィック(東京)ap-northeast-1

<オブジェクト所有者>

  • [ACL 無効] にチェック

<このバケットのブロックパブリックアクセス設定>

  • [パブリックアクセスをすべて ブロック] にチェック

<バケットのバージョニング>

  • 無効にする

<タグ – オプション>

  • 特に設定なし

<デフォルトの暗号化>

  • [サーバー側の暗号化]: 無効にする

<詳細設定>

  • [オブジェクトロック]: 無効にする

共有フォルダーの準備

Webgisdr ユーティリティは、S3 へのバックアップの前に Windows の共有フォルダーに一時的にファイルを保管します。Windows の共有フォルダーを作成し、ArcGIS Enterprise のインストール アカウントへのアクセス権を設定します。(※ここでは、Portal for ArcGIS、ArcGIS Server、ArcGIS Datastore の 3 つのインスタンスが arcgis というインストール アカウントでインストールされていることが前提となります。)

  • Portal for ArcGIS がインストールされているインスタンスに接続します。
  • C ドライブ直下に「backups」フォルダーを作成します。
  • 作成したフォルダーを右クリック → [プロパティ] をクリックします。
  • [セキュリティ] タブをクリックし、[編集] → [追加] をクリックします。
  • 入力欄に「arcgis」と入力した後 [名前の確認] をクリックし、[OK] をクリックします。(※インストールアカウントが arcgis の場合の例)
  • 追加した「arcgis」に対し、「フル コントロール」を許可し [適用] → [OK] をクリックします。
  • [共有] タブをクリックし、[共有(S)…] をクリックします。
  • 「arcgis」に対し、「読み取り/書き込み」のアクセスが許可されていることを確認し [共有] をクリックします。
  • 「はい、すべてのパブリック…」をクリックします。
  • [終了] をクリックします。

Webgisdr ユーティリティの設定

AWS の S3 を利用する準備が整いましたので、これでArcGIS Enterprise をバックアップする環境の利用ができます。

  • Portal for ArcGIS がインストールされているインスタンスにて、C ドライブ直下に「propfiles」フォルダーを作成します。
  • 作成したフォルダーに「webgisdr.properties」を配置します。
  • メモ帳を管理者として実行し、「webgisdr.properties」を開きます。※Portal for ArcGIS のインストールフォルダの tools にテンプレート ファイルがあります。(C:\Program Files\ArcGIS\Portal\tools\webgisdr など)
  • 以下の項目を編集します。
PORTAL_ADMIN_URL =https://testportal.esrij.local:7443/arcgis
PORTAL_ADMIN_USERNAME = portaladmin
PORTAL_ADMIN_PASSWORD = [portaladminのパスワード]
PORTAL_ADMIN_PASSWORD_ENCRYPTED = false
SHARED_LOCATION=\\\\[testportal.esrij.localのコンピューター名]\\backups
BACKUP_STORE_PROVIDER = AmazonS3
S3_ACCESSKEY = [S3接続用アカウントのアクセスキー]
S3_SECRETKEY = [S3接続用アカウントのシークレットキー]
S3_ENCRYPTED = false
S3_BUCKET = test-arcgisenterprise-backup
S3_CREDENTIALTYPE = accessKeys
S3_REGION = [バケットのリージョン 例]ap-northeast-1など]

※PORTAL_ADMIN_URL は内部ネットワークでアクセス可能な URL になります。

※SHARED_LOCATION はバックスラッシュがエスケープされている必要があります。また、Portal for ArcGISの環境から自身の共有フォルダーに一度エクスプローラーでアクセスできるか確認することをお勧めいたします。

バックアップの実行

Windows の [スタート] をクリックし、「cmd」と入力し [コマンド プロンプト] をクリックし、以下のコマンドを実行します。

% cd C:\Program Files\ArcGIS\Portal\tools\webgisdr

% webgisdr –export –file C:\propfiles\webgisdr.properties

正常にバックアップ処理起動すると、「2022-06-15 03:05:44 INFO  [main] com.esri.arcgis.webgis.client.WebGISDR – Starting the WebGIS DR utility.」 と表示されます。ArcGIS Datastore、ArcGIS Server、Portal for ArcGIS の順にバックアップして処理が終了します。「2022-06-15 03:14:51 INFO  [main] com.esri.arcgis.webgis.client.WebGISDR – Stopping the WebGIS DR utility.」と表示されるとバックアップ処理が終了になります。

ArcGIS Enterprise であれば製品のユーティリティを利用して AWS S3 などにバックアップを作成することが可能となります。オンプレ環境などで GIS データの保護に活用してみてください。

※参考 ArcGIS Enterprise バックアップの作成

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