2024 年 12 月のアップデートにおいて、ArcGIS Urban の指標機能が強化されました。この機能を使用することで、都市計画における定量的な評価を簡単に行うことができます。
このブログでは、指標機能を使用して開発計画を緑地の観点から評価する方法を紹介します。
指標機能とは?
ArcGIS Urban の指標機能は、都市計画や開発プロジェクトの成果や影響を定量的に評価・可視化するためのツールです。指標は、ダッシュボードで対話的に操作可能であり、グラフにマウスカーソルを合わせるとマップ上でその空間がハイライトされるため、シミュレーションした指標を空間用途ごとに詳細に確認することができます。
これまでは、正味空間面積に基づく計算にのみ対応していましたが、空間面積や住戸に基づく計算にも対応しました。
また、新たに解像度機能が追加されました。空間、建物、区画、分析範囲の 4 つの解像度ごとに指標を評価できるようになりました。
同じ解像度ごとの計算はもちろん、低い解像度と組み合わせて計算することも可能です。例えば、[建物: 延床面積] を [区画: 区画の面積] で除算することで容積率を計算することができます。
また、指標の作成や変更時に「元に戻す/やり直し」機能が利用可能になり、意図しない操作を簡単に修正できるようになりました。
新機能を使用して、開発計画を緑地の観点から評価してみよう
都市計画において、緑地に注意を払うことは非常に重要です。緑地は、リラックスや運動、社会的な交流の場として、人々の幸福に大きく貢献しています。
例えば、建設会社の都市計画に従事している都市計画家であると仮定します。私たちの仕事の一環として、開発地域が目標を達成するために必要な規定を厳守することが求められます。今回の開発では以下の規定があるとします。
【開発における規定】
- 住民 1 人当たり少なくとも 20 ㎡ の緑地を提供すること
住民 1 人当たりの緑地は、開発区域の総緑地面積から住民数を割ることで算出できます。規定を満たしているか、ArcGIS Urban の新機能を使用して、確認してみましょう。詳細な計算方法について、次の 3 つのステップで紹介します。
住民数の計算
住民数を計算するには、開発で作成される全居住空間の面積を 1 人あたりの平均居住面積で除算します。この開発地域では集合住宅を建設し、1 人あたりの平均居住面積は 33 平米を想定しています。平均居住面積の値は [空間用途タイプ パラメーター] で設定することができます。ここでは、空間用途タイプ パラメーターとして「1 人あたりの平均居住面積」を追加し、パラメーターには「集合住宅」を追加します。値は「33 ㎡」を入力します。これを基に、開発地域の住民数を計算します。
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次のステップでは、算出した住民数を整数にします。新しい指標では、[演算子: 丸め]を使用することで整数にすることが可能です。
これで、住民数を算出できました。次に総緑地面積を算出します。
総緑地面積の計算
総緑地面積を計算するには、空間面積から緑地に該当する空間を指定することで算出できます。
今回は、空間用途タイプ パラメーター として「緑地がある空間用途タイプ」を追加し、パラメーターには、緑地として該当している「公園」「緑道」を追加します。空間用途が緑地に該当しているかを知るために、それぞれに「1」と入力します。これで、緑地のみの空間面積を計算できます。
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1 人あたりの緑地面積の計算
必要な素材は揃いましたので、開発区域の総緑地面積から住民数を割ることで 1 人あたりの緑地を算出します。これで、シミュレーションする指標を作成できました。
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今回の結果では、設定した開発範囲内で、1 人当たり 20 ㎡ 以上の緑地を提供できているか下記の画面のように確認が可能です。また、開発を変更すると、計算で算出される値が変化するため、ダッシュボードの結果を確認しながら計画を進めることも可能です。
今回は、ArcGIS Urban の指標機能を活用し、新しい開発が地域の緑地規定を満たしているか評価しました。
ArcGIS Urban は、都市計画や開発プロジェクトの成果を定量的に評価し、目標達成の効果を確認するための強力なツールです。これにより、計画の透明性を高め、持続可能な都市開発を実現するための意思決定を支援することが可能です。
指標機能の詳細については、リリース ノートをご参照ください。また、操作に関する不明点やチュートリアルについては、リソースをご参照ください。