ArcGIS Business Analyst Pro 3.6 をリリース|解析用データの準備に便利な新機能が登場

ArcGIS Pro をベースにした商圏分析・エリアマーケティング特化型アプリケーション「ArcGIS Business Analyst Pro」(以下、BA Pro) の最新バージョン 3.6 を、2025 年 12 月 18 日 (米国時間)(2025 年 12 月 19 日 (日本時間)) にリリースしました。本記事では、BA Pro の主な新機能や機能強化をご紹介します。

[Business Analyst データの追加] ユーティリティー

指定範囲の標準区画/六角形グリッドを作成

[Business Analyst データの追加] ユーティリティーは、指定した範囲で標準区画 (市区町村、町字・字等、メッシュなど) や六角形グリッドを抽出するツールです。範囲の指定には、都道府県や市区町村などの標準区画、現在のマップの表示範囲、マップ上のレイヤーを使用できます。また、ポリゴンの抽出時にデータ ブラウザーから人口統計変数を付与することも可能です。

似たような機能であるカラーコード レイヤーは以下のような制約があります。

  • 一度に表示できるレコード数の上限が 10,000 件
  • 一度に付与できる変数が 2 つまで

一方、[Business Analyst データの追加] ユーティリティーではこれらの制約がなく、必要に応じて広域でのデータ作成、複数の変数の付与ができます。任意の範囲で標準区画ポリゴンを作成・変数を付加する作業が 1 フローで完了するため、ハフ モデルやテリトリー解析などに使用するデータの準備に便利です。

インフォグラフィックス エディター

インフォグラフィックスのマップにレイヤーを追加

インフォグラフィックス エディターは、人口統計や市場データを視覚的にわかりやすく伝えるためのレポート (インフォグラフィックス) のカスタム テンプレートを作成するツールです。グラフ、チャート、テキスト、マップなどの要素を組み合わせて、分析結果を一目で理解できるレポートを作成できます。

インフォグラフィックス エディター

BA Pro 3.6 では、インフォグラフィックスのマップ パネルにプロジェクト内の任意のレイヤーを追加できるようになりました。これにより、標準のベースマップだけでなく、ユーザーが保持する分析レイヤーやテーマ別データをインフォグラフィックスに組み込み、よりリッチなビジュアルを作成できます。

マップに駅レイヤー、コンビニレイヤーを追加した様子

ベンチマーク比較

比較方法に [等量] と [極値のハイライト表示] が追加

ベンチマーク比較は、商圏などの複数サイトの統計データや属性値を比較する機能です。BA Pro 3.6 では、従来の比較方法に加え、マップ上のサイトを分位数ごとにグループ化して色分けしたり (等量)、極値または外れ値を強調したり (極値のハイライト表示) できるようになりました。

左: 等量、右: 極値のハイライト表示

Excel への出力機能が強化

BA Pro 3.5 以前は、ベンチマーク比較の結果を Excel にエクスポートしたときにマップで適用されている比較方法のみが Excel テーブルに出力されました。BA Pro 3.6 では、出力された Excel テーブル内ですべての比較方法の解析属性が色分けされて表示されるようになりました。

ベンチマーク比較のその他の機能強化

  • コンテンツ ウィンドウでベンチマーク比較レイヤーを選択すると、プロパティや結果ウィンドウが連動
  • [サイト属性] にテキスト フィールドを区別するアイコンが表示
  • [結果の表示] ボタンで結果ウィンドウを表示可能
  • 結果ウィンドウのテーブルに [隣接区画] で追加したサイトを区別するアイコンが表示

カラーコード レイヤー

オンライン データ使用時のポップアップが改善

カラーコード レイヤーは、統計データを簡単な操作でマッピングできる機能です。従来、オンライン データをソースとしてカラーコード レイヤーを実行すると、ポップアップには実数のみ表示されていました。BA Pro 3.6 では実数以外に % やインデックスも表示されるようになり、変数名が日本語で表示されるようになりました。

左: BA Pro 3.5、右: BA Pro 3.6

テリトリー デザイン

各種ツール ダイアログがフローティング化

テリトリー デザインの各種ジオプロセシング ツールのダイアログがフローティング表示されるようになり、[テリトリーの変更] ウィンドウを覆い隠すことなく解析を実行できるようになりました。

ツールのフローティング表示

テリトリーの数の設定方法が追加

[テリトリーの解析] ツールでは、テリトリー数を固定せずに、制約条件に基づいて自動的に調整できます。テリトリー数を決定する方法として、[テリトリーの最大数] と [テリトリーの最小数] が追加されました。

[テリトリーの最大数] では、可能な限り多くのテリトリーを作成します。各テリトリーのサイズは小さくなり、設定した最小制約に近づくよう自動的に計算されます。営業単位を細分化したいときに有効なオプションです。

[テリトリーの最小数] では、可能な限り少ないテリトリーを作成します。各テリトリーのサイズは大きくなり、設定した最大制約に近づくよう自動的に計算されます。一つのテリトリーで広範囲をカバーしたいときにはこちらが適しています。

左: [テリトリーの最大数]、右: [テリトリーの最小数]

その他の機能強化

  • 適合性解析ウィンドウの UI が改善され、追加した条件の詳細を確認可能
  • 結果パネルに [フラッシュ]、[拡大]、[画面移動] のコマンドが追加
  • キーボード アクセシビリティが改善し、キーボード操作のみで各 Business Analyst ツールを起動可能

おわりに

今回のアップデートでは、Business Analyst データの追加機能が搭載され、解析用のデータの準備を手軽に行えるようになりました。そのほか、インフォグラフィックス内のマップへのレイヤー追加や、ベンチマーク比較の機能強化など、データの準備から可視化まで、商圏分析のワークフロー全体が強化されています。さらに便利になった BA Pro 3.6 をご活用いただければ幸いです。

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