国の大きさが”正しく”比較できる Webアプリ

はじめに

メルカトル図法で描かれた世界地図は、高緯度になるほど極端に拡大されるため、国や陸地の大きさを誤解してしまいます。国の面積を簡単に比較できる Web サイトがありますが、それにはたいていメルカトル図法が使われています。メルカトル図法は、特性を理解して使えばまったく問題ありませんが、「世界の形はメルカトル図法」と信じている人は少なくなく、使い方によっては大きな誤解を生んでしまいます。地球が丸いことは知っていても、それゆえに世界も丸いことはほとんど実感されていないのです。

メルカトル図法で表現した世界

今やインターネットの Web マップをはじめ、汎用の GIS ソフトウェアでさえも、メルカトル図法で地図投影することの方が多くなりました。メルカトル図法は、中学地理では「緯線と経線が直角に交わる地図」の例として目にします。高校地理では「正角図法」の一種で、地図上のどこでも等角航路が直線で描けるが (注:正角図法=等角航路が直線という意味ではありません)、極に近づくほど面積が誇張される図法として習います。そのため、面積比を正しく表示するべき分布図で、国や世界の範囲のような小縮尺地図を表示するのには適しません。

地球の様子、つまり国や島など陸の形を、誤解なく理解し正しく捉えるには、地球儀を使うのが一番です。地球儀は持ち運びが不便で、世界全体を一目で表現できない (半球しか見渡せない) 難点はありますが、スクリーン上に地球儀のような姿を表現した、いわゆるデジタル地球儀を使うことで、この難点は概ね克服できます。

デジタル地球儀で表現した世界

今回は、デジタル地球儀を使って国の大きさが比較できる Web アプリを紹介します。

World Sizes

World Sizes は、Esri の開発者エヴァンジェリスト、Arno Fiva 氏 (@arnofiva) が作成した、バーチャルな地球儀の上で各国の国境を移動して面積が比較できる Web アプリです。このアプリの見た目はよく見かけるデジタル地球儀ですが、選択した国を、形を維持したまま別の場所に移動させることができます。

操作方法

World Sizes は、Google Maps や Google Earth を使ったことがある方なら直感的に扱えます。

  1. World Sizes にアクセスしします。
  2. マウスの左ボタンでドラッグすると中心が移動します。右ボタンでドラッグすると視点の角度が変えられます。マウスホイールを回す、もしくはホイールの中ボタンでドラッグするとスケールが変更できます。
  3. マウスで国や諸島をクリックすると、選択され、オレンジのガイドが表示されます。
  4. ガイドが表示された状態で、中心の円部分をドラッグすると、選択した国を別の場所に移動できます。
  5. ガイドの外周円をドラッグすると、選択した国を回転できます。
  6. 他の国をクリックすると、新しくピックアップされます。
  7. ガイドが表示された状態で、[Del] キーを押すと、ピックアップされた国は削除されます。

この Web アプリを作るには?

この Web アプリは自分で作ることもできます。これは Esri の ArcGIS API for JavaScript で作成されており、ArcGIS Developer サイトで開発者アカウントを作成すれば、さまざまな GIS アプリケーションを開発できます。アプリの開発はどなたでも無料から始めることができます。ESRIジャパンでは日本語のチュートリアルも用意しています。

また、Esri では ArcGIS Living Atlas of the World として、すぐに使えるデータが提供されています。GIS データを持っていない方でもすぐにプログラミングを試すことができますので、ぜひお試しください。

おわりに

World Sizes を活用することで、地球の姿をより自然に理解できます。この Web アプリは直感的に扱えますので、生徒やお子様の地図教育の教材として活用できます。また、自分も面白い・役立つ地図アプリを作ってみたい!と思われた方は、ぜひ ArcGIS の豊富な開発者向け製品もご利用ください。

いよいよ 2022 年度から、高校で地理の必修科目となる「地理総合」がはじまりました。地理総合では、GIS を活用した教育も必要とされています。ぜひ地理・地図教育に、この Web アプリを活用されてはいかがでしょうか。

また、近年は STEAM教育の重要性が認知され、小学生からプログラミング教育も行われるようになったり、大学入学共通テスト (旧センター試験) でも、2025 年から「情報」科目が追加されたりしています。GIS は地理+情報技術なので、STEAM教育にも最適です。「地図アプリを自分で作ってみたい」という興味から、将来、GIS のエンジニアリングにも関心を持つ人材が増えてくれるとうれしいです。

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