ArcGIS Runtime SDK (Android/iOS/.NET) の最新バージョン 100.14.0 を 2022 年 4月 27 日(日本時間 2022 年 4 月 28 日)にリリースしました。この記事では、バージョン 100.14.0 で追加された主要な機能や変更点について紹介します。
ArcGIS Runtime ライセンスパックをご購入の方は、2022 年 4 月 28 日以降保守有効なライセンスがアップデート対象となります。
各 SDK (Android/iOS/.NET) 共通のアップデート内容
3D オブジェクト/ 3D メッシュ シーン レイヤーの再投影
シーン ビューでは、3D オブジェクト シーン レイヤー、3D メッシュ シーンレイヤー、その他多くのレイヤー タイプをサポートしていますが、これらのいくつかを表示するには、シーン ビューの空間参照に一致するように、データを WGS84 座標系で公開する必要がありました。
100.14 では、他の座標系で公開された 3D オブジェクト シーン レイヤーと 3D メッシュ シーン レイヤーを、WGS84 座標系のシーン ビューに正しく表示できるようになりました。
3D 表示のパフォーマンス改善
ArcGIS Runtime は Draco 圧縮をサポートするようになり、メモリ使用量、ネットワーク トラフィック、ディスク I/O およびレンダリング時間が削減されました。最大でレンダリング時間が 30%、メモリ使用量が 20% 改善されることが確認されています。I3S Converter を使用して、Draco圧縮ジオメトリをサポートおよび含めるようにシーン レイヤー パッケージを更新できます。
また、シーン ビューを表示する際に必要となるタイルの計算を改善し、ラスターおよびベクター タイルのリクエスト数を最大 40% 削減することができます。
これらのアップデートにより、3D アプリケーションのパフォーマンスと応答性が大幅に改善されます。
Arcade Evaluator
Arcade は、ArcGIS システム全体(ArcGIS Online、ArcGIS Pro、ArcGIS Enterprise、およびその他の製品)で使用されている強力なスクリプト言語です。Arcade は、レンダリング、シンボル、ポップアップ、属性ルール、属性計算などに使用されます。ArcGIS Runtime SDK は長い間 Arcade をサポートしてきましたが、多く要望されていた機能に、開発者が自分で Arcade を実行できるようにする機能がありました。使用例としては、Arcade 式の検証や、Web マップなどで検出された Arcade に関連するカスタム ユーザー エクスペリエンスの構築などがあります。
100.14 では、強力な新しい Arcade API を提供し、それらをサポートします。Arcade 式から Arcade Evaluator を作成するだけです。Arcade 式の評価結果を確認する必要がある場合は、ArcGIS Runtime オブジェクトにマップされた Arcade 変数名のディクショナリを作成し、Evaluate を呼び出します。そして、その結果を自由に利用することができます。Arcade API は、特定の Arcade 式がどの変数をディクショナリに含める必要があるかを教えてくれます。また、ArcGIS Runtimeオブジェクトを渡すため、すべてのブリッジングは開発者に代わって行われます。
Arcade Evaluator を使用して、ポリゴン内のポイント フィーチャをカウントする Swift の例
モバイル ジオデータベースの作成
ArcGIS Runtime SDK は 100.12 以降、ArcGIS Pro で作成されたモバイル ジオデータベースと連携しています。今回、ArcGIS Runtime アプリケーションでモバイル ジオデータベースを作成できるように API を追加しました。
新しいモバイル ジオデータベースを作成したり、テーブルを追加および削除したりすることができます。作成したテーブルは、添付ファイル、すべてのジオメトリ タイプ(トゥルー カーブを含む)、Z 値と M 値をサポートします。さらに、ドメインを定義して、それを新しいテーブルで使用することもできます。
これにより、データ スキーマのソースとして ArcGIS Pro を必要としない、データ収集ワークフローを実現できます。もちろん、ArcGIS Runtime アプリケーションで作成したモバイル ジオデータベースは、他の ArcGIS Runtime アプリケーションや ArcGIS Pro で開き、読み取り・編集することができます。
ArcGIS Runtime アプリケーションでモバイル ジオデータベースを作成するには、ArcGIS Runtime Basic レベルのライセンスが必要です。
カスタム マップ エクステント
ArcGIS Runtime がマップ定義を読み込むとき、検出されたレイヤーに基づいてナビゲーション可能なマップの表示範囲が設定されます。100.14 では、マップ ビューでナビゲーションを制限するために使用するカスタムのエクステントを指定する機能が追加され、ユーザーによるナビゲーションを特定の範囲に制限することができます。
Esri 標高データのエクスポート
Terrain 3D や Bathymetry などの米国Esri社の公開する標高サービスから、標高データをオフラインのタイル パッケージ(.tpk または .tpkx)としてエクスポートできるようになりました。これらの標高タイル パッケージを使用して、オフラインでシーンを表示したり、可視領域や見通しなどの 3D 解析を実行したりできます。
BasemapType 列挙型の非推奨
ArcGIS Online のベースマップを表示する際に使用していた BasemapType 列挙型は非推奨となりました。この列挙型で参照されるベースマップの多くは開発終了バージョン サポートになっており、今後の更新は予定されていません。代わりに、BasemapStyle 列挙型によって提供される地理的に負荷分散されたベースマップを使用することができます。
各 SDK (Android/iOS/.NET) のアップデート内容
実行環境など、各製品固有のアップデート内容をご案内します。
ArcGIS Runtime SDK for Android
Android 6.0 Marshmallow (API レベル 23), 7.0 Nougat (API レベル 24), 7.1 Nougat (API レベル 25) が非推奨になりました。これらをサポートする最後のリリースは、ArcGIS Runtime SDK 100.15 です。それ以降のリリースでは、Android 8.0 Oreo (API レベル 26) 以上が必要になります。
ArcGIS Runtime SDK for iOS
iOS 13 が非推奨になりました。次のリリースでは、iOS 14 以上が必要になります。
ArcGIS Runtime SDK for .NET
- Windows 10 1903 (Build 18362), 1909 (Build 18363), 2004 (Build 19041) が非推奨になりました。次のリリースでは、Windows 10 20H2 (Build 19042) 以上が必要になります。
- Windows 8.1 が非推奨になりました。Windows 8.1 をサポートする最後のリリースは、ArcGIS Runtime SDK 100.15 です。
- Windows Server 2012, 2012 R2, 2016 が非推奨になりました。これらをサポートする最後のリリースは、ArcGIS Runtime SDK 100.15 です。将来のリリースでは、Windows Server 2019 以上が必要になります。
- .NET Framework 4.6.1 が非推奨になりました。.NET Framework 4.6.1 をサポートする最後のリリースは、ArcGIS Runtime SDK 100.15 です。将来のリリースでは、.NET Framework 4.8 以上が必要になります。
- ArcGIS Runtime Local Server もバージョン 100.14.0 がリリースされています。ArcGIS Runtime Local Server 100.14.0 を利用する場合は、ArcGIS Runtime SDK for .NET も同一バージョンをご利用ください。
本記事では主要な項目についてご紹介しましたが、各 SDK の詳細な情報は下記のリリース ノート(英語)をご覧ください。