海のデータ連携。海しるAPI を使ってみる

皆さんは海しる(海洋状況表示システム)をご存じですか。

海しるは、政府が推進する海洋状況把握 (MDA: Maritime Domain Awareness) という施策の中核となるシステムとして位置づけられる、政府や関係機関が保有する海洋情報をマップに集約し提供する Web GIS サービスです。海洋情報は、行政だけでなく、海運事業者やマリンレジャーといった多分野からのニーズが高まっています。

今回は海しるのサービスの一つである海しるAPI を取り上げます。

海しるAPI

海しるAPI は、海しる上で閲覧できるデータの一部を Web API でアクセスできる環境を提供するものです。API を使って海洋情報を JSON や PNG で取得することができます。APIs ページには、海しるAPI で取得可能なデータの一覧が掲載されています。一覧を見る限り API で提供されているデータは、本家の海しるに搭載されている全項目ではなく、一部の項目に絞られているようです。

出典:海しるAPI(https://portal.msil.go.jp/

個々の API のページには、各 API の使用方法が掲載されています。Try It ボタンをクリックすると、API を試行できるサンドボックスツールが利用できるようになっていました。手軽に API の動作を確認できるので便利です。

海しるAPI を使ってデータを取得してみる

API の利用にはサブスクリプションキーが必要とのことです。今回は利用方法ページに掲載されている試用サブスクリプションキーを使用します。記事執筆時点では 3 つの試用キーが掲載されていましたので、いずれか 1 つのキーを控えておきます。なお、海上保安庁に問い合わせることで、個別のキーを発行してもらえるようです。

次に使用する API のページにアクセスします (図は「港湾区域」の API)。出力形式は「JSON形式」を選択します。ここでは東京湾の港湾区域を取得してみます。Try It をクリックしてサンドボックスを表示し、次の項目を入力します。

  • Subscription key → 上記で控えておいた試用キー
  • bbox → 139.5,35.1, 140.2, 35.7

※bbox はデータを取得する範囲のパラメータです。パラメータの指定は、bbox = 左端経度, 下端緯度, 右端経度, 上端緯度 の書式で行う必要があります。ここでは、概ね東京湾を囲む範囲の座標を設定しました。

その他のパラメータはデフォルトのままにして、Send をクリックします。

するとレスポンスが表示されます。HTTP Response の下に HTTP/1.1 200 OK と表示されていれば、正常にレスポンスが得られたことを意味します。今回は手動でデータを取り出してみます。下図を参考に、レスポンスの{~}の間のテキストをコピーし、テキストエディタ等にペーストし、任意の名前で拡張子を .json として保存します。

ちなみに、レスポンスのフォーマットは EsriJSON となっていました。

ArcGIS Pro でデータを変換して可視化

上記で取得した港湾区域データは、ArcGIS Pro の JSON → フィーチャ (JSON To Features) ツールを使って変換することができます。東京湾の港湾区域データを可視化できたことが分かります。

港湾区域データの属性情報に格納されていたのは「港湾名」のみでした。海しる上の港湾区域データには港湾名以外の情報もポップアップ表示されますので、海しるAPI では、提供される属性情報が絞られているものと考えられます。

なお、現状の海しるAPI では、一回のリクエストで取得できるデータ数の上限があるようです。範囲 (bbox) を省略する場合など、多数のデータへのリクエストを行うことができますが、このような条件で取得したデータは最大で 1,000 件となっていました。

気づき

今回は海しるのデータを海しるAPI を使って取得し、ArcGIS Pro で可視化する流れの一例を紹介しました。冒頭の繰り返しになりますが、試行を通じて感じたことは次のとおりです。

  • 海しるのデータを GIS で取り込みやすいフォーマットで取得できる
  • API で取得できるのは海しるの海洋情報のうち一部
  • 属性情報が海しるで閲覧できる内容と異なる場合がある
  • 取得できるデータ数の上限がある

また、現行の JSON 形式での提供に加え、GIS Web サービスでの公開にも対応されると、ArcGIS Online 等に URL で海しるの海洋情報をダイレクトに重ねることができるようになるため、更なる利用拡大が期待できると感じました。

さいごに

海しるの運用は海上保安庁が行っています。詳細に関心がある方は海しる(海洋状況表示システム)の Web サイトや当社の事例記事等をご参照ください。

最後に余談です。冬のこの時期特有の海洋情報として海氷密接度海氷域という情報があります。これは北極海域を航行する船舶向けの海洋情報として、毎年の冬季間に発表される情報です。海しるの News によると今シーズンは 2022 年 12 月 12 日に配信が開始されています。これらは海しるAPI のラインアップにはありませんが、海しるの Web アプリ上では閲覧できます。この時期だけの情報なのでこの機会にご覧になってはいかがでしょう。

フォローする