目次
はじめに
ArcGIS Pro の Spatial Analyst エクステンションでは、日射量解析を行うことができます。今回は、オープンデータとして国土地理院が公開している基盤地図情報のうち、数値標高モデルのメッシュ データを使用した地形の日射量を解析する方法と、それに加えて国土交通省が公開している Project PLATEAU の 3D都市モデルを使用して建物の高さと地形が考慮された日射量を解析する方法をご紹介いたします。
※GIS Professional Basic 以上 + Spatial Analyst エクステンションが必要です。
ArcGIS での基盤地図情報数値標高モデルの利用
データの取得
今回の解析では、基盤地図情報 数値標高モデルの 5m メッシュ データで解析を行います。基盤地図情報ダウンロード サービスサイトにログインして、任意の地域の 5m メッシュの標高データをダウンロードします。本ブログでは鎌倉市が含まれる数値標高モデルを使用しています。
ArcGIS Pro を使った数値標高モデルのインポートと解析の準備
ESRIジャパンでは、日本の各種団体で規定・提供されている仕様のデータを ArcGIS Pro で利用できるようにするための変換ツールを提供しています。
変換ツール (国内データ) for ArcGIS Pro をあらかじめインストールしてご利用ください。
- [国内データ] タブから [国土地理院] → [基盤地図情報のインポート] をクリックします ①。
- [基盤地図情報のインポート] ウィンドウで [入力ファイルの追加] を選択し②、先ほどダウンロードしたファイルを選択します。
次に [出力ジオデータベースの選択] で任意の保存先を指定、[同一種別のデータは 1 レイヤーに保存] チェックボックスをオンにします③。異なる測量成果の数値標高モデルを結合したい場合は、[異なる測量成果の数値標高モデル (5m メッシュ) を結合] チェックボックスをオンにしてください。パラメーターの設定ができたら [実行] をクリックします④。基盤地図情報は地理座標系で整備されています。解析をなるべく正確に処理したい場合は、座標と高さの単位を揃えてから実行することが推奨されます。基盤地図情報における地理座標系の単位は、XY 座標は緯度経度を表す 「度」、Z 座標は 「メートル」 です。そのため、高さに関連した解析を行う際はそのまま地理座標系で解析を行うことは適切ではありません。今回の解析では鎌倉市を対象としているため、平面直角座標系第 9 系に変換を行います。 - [表示] タブから [ジオプロセシング] ウィンドウを選択します⑤。
- 検索ボックスに [ラスターの投影変換] と入力し、[ラスターの投影変換] ジオプロセシング ツールを選択します⑥。
- [入力ラスター] に先ほどインポートした標高のラスター データを入力します⑦。[出力ラスター データセット] には任意の保存場所と名前を入力し⑧、[出力座標系] では [平面直角座標系 第9系] を選択します⑨。[リサンプリング手法] には、標高などの連続データに適した [共一次内挿法] か [三次たたみ込み内挿法] を選択します⑩。パラメーターの設定ができたら [実行] をクリックします⑪。マップに投影変換された標高のラスター データが追加されます。
今回は追加した標高データを鎌倉市の行政区域でクリップして使用しています。
日射量解析を行う際、データが大きすぎると処理に時間がかかってしまいます。そのような場合は、[クリップ関数] を使用し、ラスター データを必要な範囲で切り抜くことで、処理時間を短縮できます。
日射量解析
パラメーターの設定・実行
- クリップしたデータを用いて日射量解析を行います。[表示] タブから [ジオプロセシング] を選択し、[ジオプロセシング] ウィンドウを開きます①。
- [ツールボックス] タブの [Spatial Analyst] → [日射量解析] → [エリアの日射量] をクリックします②。
- [入力ラスター] に標高データ③、[出力 全天日射ラスター] に任意の保存場所と名前を入力します④。今回は [時間設定] を 1 年間にし⑤、パラメーターの設定ができたら [実行] をクリックします⑥。
- 結果が出力されます。目的に応じて [シンボル] を変更することでより値の差が明瞭になります。
(ストレッチ 最大値 ‐ 最小値) (等量分類)
オプション設定
今回は 1 年間の全天日射について解析を行いましたが、パラメーターの設定で地形の計算方法や放射の条件を考慮した解析が可能なほか、[オプション出力] から出力先の指定を行うことで直達日射や散乱日射、日照時間のラスターも同時に出力することができます。
建物の高さを考慮した日射量解析
標高ラスターに建物の高さを加えることで、建物を考慮した日射量解析ができます。
今回は数値標高モデルと Project PLATEAU で整備された 3D都市モデルの LOD 2 モデルの建物の高さ情報を使用した日射量解析について紹介します。
データの取得
G空間情報センターから任意の ArcGIS ですぐ使用できるファイル ジオデータベース形式をダウンロードし、ファイルは解凍しておきます。
地形として使用する標高データは、同じ地域の 5m メッシュの標高モデルを、前半の「ArcGIS Pro を使った数値標高モデルのインポートと解析の準備」の手順で変換しておきます。
本ブログでは、新宿駅周辺を解析の対象とします。
解析手順
- ダウンロードしたデータをマップに追加します。[マップ] タブの [データの追加] を選択します①。
- PLATEAU の解凍したファイルを開きます。lod2_Building を選択し②、[OK] をクリックします③。マップにマルチパッチ フィーチャが追加されます。
- マルチパッチ フィーチャをラスターに変換します。[表示] タブの [ジオプロセシング] から、[ジオプロセシング] ウィンドウを開きます④。
- [ジオプロセシング] ウィンドウで [マルチパッチ → ラスター] を検索し、選択します⑤。
- パラメーターを以下のように設定します。
[入力マルチパッチ フィーチャ] : マップに追加したマルチパッチ フィーチャ…⑥
[出力ラスター] : 任意の保存場所と名前を設定…⑦
[出力セルサイズ] : 基盤地図情報ダウンロードサイトからダウンロードした 5m メッシュの数値標高モデルのデータまたは、任意のセルサイズ…⑧
[集約方法] : [最大高さ]…⑨
パラメーターの設定ができたら [実行] をクリックします⑩。 - 建物のラスターがマップに追加されます。ラスターは、地形データの準備の際と同様に、[ラスターの投影変換] ジオプロセシング ツールを用いて座標系を地形データと同じ投影座標系に変換し、必要に応じてクリップ処理を行います。
- 建物のラスターを基盤地図情報の数値標高モデルのラスターと結合します。[解析] タブの [ラスター関数] を選択します⑪。
- [ラスター関数] ウィンドウから [ラスターのマージ] を選択します⑫。
- [ラスター] には、建物のラスター、数値標高モデルの 5m メッシュの順に入力します⑬。[オーバーラップの解決方法] には最初に入力されたラスターの値を優先する [最初] を選択し⑭、[新しいレイヤーの作成] をクリックします⑮。2つのデータが結合されたラスターがマップに追加されます。
- マージされたラスターを [エリアの日射量解析] ツールの [入力ラスター] へ入力し、地形の日射量解析と同じ手順で [エリアの日射量] ジオプロセシング ツールを実行すると、建物の高さを考慮した日射量解析を行うことができます。
終わりに
今回は日射量解析ツールを使用し、建物や地形のエリアの日射量を解析しました。ArcGIS Spatial Analyst では、数値標高モデルのデータを活用して、水文解析やサーフェス (地形) 解析なども可能です。