ノーコードで柔軟な Web アプリを作成できる ArcGIS Experience Builder (以下、「Experience Builder」) が 2024 年 6 月 26 日 (日本時間 2024 年 6 月 27 日) にアップデートされました。今回のアップデートでも新しいウィジェットが追加され、加えて既存のウィジェットの機能強化も複数実装されました。
本ブログでは、追加されたウィジェットと主な機能強化についてご紹介します。
またESRIジャパンでは、Experience Builder の簡単な利用ガイドとして、ArcGIS StoryMaps で作成されたストーリー マップ「ArcGIS Experience Builder を始めよう!」を公開しています。こちらも是非合わせてお読みください。
目次
新しいウィジェット
今回のアップデートでは、4 つの新しいウィジェットが追加されました。各ウィジェットについてご紹介します。
ビルディング エクスプローラー ウィジェット
ビルディング エクスプローラー ウィジェットは、Web シーンで表示しているビルディング シーン レイヤーを探索できます。本ウィジェットは Scene Viewer の [ビルディング エクスプローラー] ツールと同様の機能を利用できます。
次の動画のように、ウィジェットに設定したビルディング シーン レイヤーのレベルや構造エレメントをフィルタリングして、複雑な建造物の内装を絞り込み、限定的なレイヤー構造のみを探索できます。また、建設フェーズの選択オプションも利用できます。
フィーチャ レポート ウィジェット
フィーチャ レポート ウィジェットは、ArcGIS Survey123 の調査結果のレコードからレポートを生成できます。レポートの生成を実行すると、テンプレートで定義済みのタイトルや見出しなどの静的な要素と、レイヤーのレコード数の合計や属性一覧のテーブルといった動的な要素を組み合わせ、それらをマップ付きのレポートとして出力できます。
レポートの生成に必要なテンプレートは Microsoft Word で作成できます。[+ 新しいテンプレート] から既存または新規のレポート テンプレートを使用するか、[個々のレコード]、[サマリー]、[結合] のいずれかのサンプル レポートを作成して設定することもできます。
レポート生成時には、使用したテンプレートで定義されている形式によってそれぞれクレジットを消費します。「サマリー」形式では 1 回の生成につき 0.5 クレジット、「個々のレコード」または「結合」形式では 1 レコードにつき 0.5 クレジットが消費されます。クレジット消費についての詳細はヘルプ (英語) をご参照ください。
計測ウィジェット
計測ウィジェットは、マップ上の距離・面積・外周を測定できます。これらの測定には、メートル、ヤード、海里といった既定の単位を設定できます。
My Location ウィジェット (Beta)
My Location ウィジェット (Beta) は、ユーザーの現在位置と移動軌跡をマップ上に表示・記録できます。現在位置は、Web アプリを表示しているデバイスの位置情報を利用します。位置情報は指定の間隔でポイントとして記録され、ポイントを基にラインを描画することもできます。
作成したトラック データには、経度・緯度、取得時間、高度、速度、方位、精度が記録されます。このデータは、データ アクションの [エクスポート] で JSON、CSV、GeoJSON、ArcGIS アイテムとして出力できます。ポイント (Locations) と ライン (Paths) は、それぞれで別にエクスポートを行う必要があります。
Experience Builder の Web アプリにデータの追加ウィジェットを挿入している場合、エクスポートした ArcGIS アイテムを追加してその場で利用できます。また、データ アクションの [マップに追加] や [テーブルに追加] を使用して、他のウィジェットに出力ソース データとして追加できます。
既存ウィジェットの機能強化
今回のアップデートでも、多くの既存ウィジェットで機能強化が実装されました。その中から、特に注目すべき機能についてピックアップしてご紹介します。本ブログで記載できなかった機能強化については、ヘルプをご参照ください。
凡例ウィジェット
凡例ウィジェットのコンテンツ設定の [凡例] モードで [現在のマップ範囲内にある表示レイヤーを表示] オプションを使用すると、マップ範囲内に表示されているシンボルだけを凡例に表示できるようになりました。
マップ ウィジェット
マップ ウィジェットのツールに新しく [概観図] ツールが追加されました。マップ ウィジェットの右下に表示される [概観図] ボタンをクリックして、現在のマップ範囲に対応した概観図を表示できます。[概観図] ツールは、小画面デバイスでは利用できないのでご注意ください。
また、新しく [ポップアップのドッキング] オプションが追加されました。マップ ウィジェットで表示されるポップアップのドッキング位置を、6 つの位置から設定できます。
その他、以下の機能が追加されました。
- 新たに URL パラメーター「zoom_to_selection」を使用して、選択したフィーチャにズーム可能に
- Web シーンのベースマップ ギャラリーに Esri の 3D ベースマップが追加
チャート ウィジェット
チャート ウィジェットで、X 軸のレンジ スライダーが追加されました。レンジ スライダーを使用して、チャートの表示範囲を拡大して各要素を見やすくできます。また、新たなチャート タイプとしてゲージ チャートが追加されました。
近隣検索ウィジェット
近隣検索ウィジェットの解析結果を CSV、JSON、GEOJSON、ArcGIS アイテムでエクスポートできるようになりました。エクスポートに含まれるフィールドは、[解析の編集] ウィンドウの [エクスポートするフィールドの構成] オプションで選択できます。
また、解析結果のフィーチャをグループ化する際に、サブグループを作成するフィールドを設定できるようになりました。以下の画像のように、建物構造でグループ化したフィーチャをさらに建物築年数でグループ分けしたいといった場合に活用できます。
テーブル ウィジェット
テーブル ウィジェットに新しいシートを設定する際にマップ、サービス、グループ レイヤーを選択することで、それらに含まれる複数のレイヤーを一括で追加できるようになりました。
また、[シートの構成] ウィンドウの [ツール] セクションに [レコードの削除] が追加されました。このオプションをオンにすると、 ウィジェットで選択したレコードを [選択の削除] ボタンで削除できます。
オプションの有効化には、ホスト フィーチャ レイヤーの削除の許可が必要です。詳細はヘルプをご参照ください。
ブックマーク ウィジェット
ブックマーク ウィジェットでは、ウィジェットの [スタイル] タブから背景色を変更できるようになりました。さらに [ブックマーク描画表示] セクションに [レイヤーの表示設定を無視] オプションが追加されました。
[レイヤーの表示設定を無視] オプションをオンにすると、ブックマークに記録されたレイヤー設定を無視して、マップ ウィジェットのレイヤー設定を維持するように設定できます。オフにすると、ブックマークを作成した環境のレイヤー設定に変更されます。
Business Analyst ウィジェット
Business Analyst ウィジェットでは、以下の主要機能が強化されました。
- Business Analyst ウィジェットを含む Web アプリをパブリック公開可能に
※ ウィジェット内でクレジットを消費する機能をユーザーが操作する際は、アプリを保有する組織のクレジットが使用されます。 - ワークフロー モードで地名・住所検索およびバッファー作成時の UI を変更
- Web マップで設定されたポリゴン フィーチャのスタイルを、インフォグラフィックスにも反映
その他の機能強化
データ アクション
データ アクションには新しく 3 つのアクションが追加されました。
解析の入力として設定
[解析の入力として設定] アクションでは、フィーチャのポップアップまたは選択ウィジェットやリスト ウィジェットといった他のウィジェットで選択したフィーチャを、解析ウィジェットの入力レイヤーとして設定できます。
関連データ
[関連データ] アクションでは、テーブル ウィジェットやポップアップなどで関連レコードを表示できるようになり、ユーザーが独立したデータ ソース間の関係をより詳細に調べることができます。
ルートの計画
[ルートの計画] アクションでは、他のウィジェットで選択したフィーチャを基に、ルート案内ウィジェットでルート生成を行います。同じくデータ アクションである [ルート案内の出発地] アクションと [ルート案内の目的地] アクションと併用することで、よりルート案内への接続を強化できます。
メッセージ アクション
ボタン ウィジェットを使用したメッセージ アクションに、新しく [ウィジェットを開く] が追加されました。このアクションを使用して、ウィジェット コントローラー ウィジェットに含まれるウィジェットをボタンのクリックで展開できます。
一般オプション
[一般] パネルに新たに [プライバシー] が追加されました。[プライバシー] では、Google Analytics (GA4) を利用してユーザーのアプリ使用状況を追跡したり、クッキー バナーを利用してユーザーに Cookie 利用の同意書を提示したりといったオプションが設定できます。
おわりに
今回のアップデートでは、前回のアップデートより多い 4 つの新しいウィジェットが追加され、既存のウィジェットのアクション機能やオプションの強化も実装されました。今後も新しいウィジェットおよび機能強化が予定されていますので、成長を続ける ArcGIS Experience Builder をぜひご活用ください。
関連記事
以下、ArcGIS Experience Builder の関連ドキュメントも合わせてご参照ください。
- ArcGIS Experience Builder で Web アプリ構築をはじめる方へ
「ArcGIS Experience Builder 利用ガイド」 - ArcGIS Web AppBuilder のサポート終了について
「ArcGIS Web AppBuilder のサポート終了について」 - ArcGIS Experience Builder と ArcGIS Web AppBuilder の機能の違いについて
「Web AppBuilder と Experience Builder の機能比較表」