ArcGIS 製品を使っていて、「こんな解析がしたいけれど、どのツールを使えばいいのか分からない…」「誰か方法を教えてくれないかなあ」と思ったことはありませんか?
今回は、そんな悩みを支援してくれる AI アシスタント「ArcGIS ドキュメント アシスタント」をご紹介します。ArcGIS 製品や機能に特化したこのアシスタントが、あなたの「やりたいこと」にぴったりの方法を見つける手助けをしてくれるかもしれません。
本記事は、ArcGIS で利用できる AI を紹介する Esri Japan AI Weeks 8 日目の内容です。
ぜひ他の投稿もチェックしてみてください。
本記事で取り上げる AI は 2025 年 9 月現在ベータ版での提供となっております。
ESRIジャパンで提供する Esri 製品サポート サービスや開発者サポート サービスはご利用いただけませんので、予めご了承ください。
また、本記事で紹介するプロンプトを使用しても内部の処理や状況によって出力が異なる場合があります。
ArcGIS における AI の信頼性についてはこちらの記事をご参照ください。
はじめに
ArcGIS ドキュメント アシスタントのベータ版が、ご利用いただけるようになりました。自然言語で質問を投げかけることにより、最適なツールや作業手順について教えてくれるチャット型 AI アシスタントです。
本アシスタントは、米国 Esri 社が提供するヘルプやブログ記事、チュートリアル、技術情報記事などのドキュメントから情報を収集し、それに基づいて回答を作成しています。インターネット上にある情報を網羅的に参照するのではなく、信用性の高い米国 Esri 社の出版物のみを参照しているため、ArcGIS に関連する質問に対して的確な回答を提供することができます。
現在、システム上、UI は英語表記となっておりますが、日本語で質問すると日本語で返答してくれます。ぜひ、お気軽にご利用ください。
ドキュメント アシスタントの概要
ここでは、ドキュメント アシスタントの概要についてご紹介します。
まず、本アシスタントが皆様の作業をどのように支援するのかについて、ご紹介します。支援の例として、以下の 3 つが挙げられます。
- ツール探しのお手伝い
ArcGIS 製品を初めてご利用するユーザーのために、ツールの検索と使用をサポートします。ドキュメントや製品ページを探して閲覧する代わりに、自然言語で質問するだけで、必要なツールや手順について知ることができます。 - ワークフローの高速化
ワークフローを構築済みの経験豊富なユーザーに対しては、ドキュメント アシスタントはクイック リファレンス ガイドとして役立ちます。ドキュメント内の探索を助け、特定の情報・ベスト プラクティス・設定手順などを素早く検索できます。 - 作業の効率化
ドキュメント アシスタントは、既存のワークフローを高速化しながら、ユーザーによる制御を維持できるようサポートします。アシスタントはユーザーのタスクを代行するのではなく、ガイダンスとドキュメントの参照を提供することで、ユーザーが作業を通して製品に対する理解をより深めていけるようにします。
また、本アシスタントには以下のような便利機能が備わっています。
- 製品の自動選定: 質問内容から該当製品を推測し、検索で優先順位を付けることができます。
- 検索範囲の絞り込み: 特定のアプリまたは製品 (ArcGIS Pro など) でフィルターをかけ、結果を絞り込むことができます。
- リセット ボタン: 結果が期待通りでない場合や、これまでの会話と関係ない質問をしたい場合は、リセット ボタンをクリックして、改めて会話をやり直すことができます。
- 多言語サポート: 質問者の言語に合わせて回答するようになっており、日本語で質問すると日本語で返答します。
- 関連する質問の提案: 結果をより最適なものにするため、これまでの会話に関連する質問の案をいくつか提案し、質問者とのさらなる議論を促します。
- 参考文献: アシスタントの回答より、もっと詳細な情報を知りたい方のために、回答として参照したドキュメントへのリンクを提示してくれます。
- フィードバック アイコン: 高評価・低評価ボタンをクリックして、アシスタントの回答に対する評価や意見を米国 Esri 社の開発チームに伝えることができます。
本アシスタントの使用にクレジットは消費されません。しかし、アシスタントが回答の中で推奨するワークフローの実行には、クレジットが必要になる場合がありますので、ご注意ください。
ドキュメント アシスタントを体験してみよう!
では早速、以下の手順に沿って、ドキュメント アシスタントを体験してみましょう。
ドキュメント アシスタントは、組織の管理者が AI アシスタント機能を有効化した場合にのみ利用できます。ArcGIS Online 組織サイトで AI アシスタント機能を有効化する方法はこちらの記事をご参照ください。
- こちらのドキュメント サイトにアクセスします。
今回は、ArcGIS Online のドキュメント サイトを例にご紹介します。 - サイトの上部にある [サイン イン] をクリックして、ArcGIS Online 組織向けアカウントでサイン インします。
- サイトの右下にある、円形の輝くアイコンをクリックして、ドキュメント アシスタントにアクセスします。
- [Before you get started, be aware] で「AI が生成した回答は誤りや偏りを含む場合があります。慎重にご確認ください。」という注意事項を確認し、[Proceed] をクリックします。
ArcGIS プラットフォームに関して質問を開始でき、アシスタントが関連するドキュメントをもとに回答を作成するようになります。 - [Add focus] をクリックします。ドロップダウンから特定のアプリまたは製品を選択することで、結果を優先させることができます。
現在、[Add focus] から製品の絞り込みを設定すると、英語で回答される仕様になっています。そのため今回は、何も選択せずにドロップダウンを閉じます。 - [Enter Question] テキスト ボックスに質問を入力します。今回は例として、「ArcGIS Pro のジオコーディングサービスで、エラーが出るのはなぜですか?」という質問を入力し、送信します。
- アシスタントから様々なアイデアが提示されます。
- アイデアの下には参照したドキュメントへのリンクや、追加のフォローアップ質問の例が挙げられています。リンク先のドキュメントを読んでより詳細な情報を収集したり、納得のいく回答が提示されるまで会話を続けたりすることができます。
- 新しい会話を始めるには、これまでの会話をリセットし、クリアにします。
右上のリセットをクリックします。
最適な回答を得るコツ
ドキュメント アシスタントは、現在の会話内容を記憶し、過去 4 件のメッセージおよび現在のプロンプトを保持します。これにより、ユーザーが追加で質問をして、アシスタントが過去の会話を踏まえて回答する、といった会話のキャッチボールを自然に行うことができます。
アシスタントとの会話を通して、最適な結果を得るためのヒントをご紹介します。以下、5 つのヒントを踏まえてアシスタントに質問してみてください。
- 明確でシンプルな言葉を使用する
- 質問する製品や機能について具体的に記述する
- 最初の回答が期待通りでない場合は、フォローアップの追加質問を繰り返す
- 「フォーカスを追加」機能を使用して、結果を特定の商品に絞り込む (ベータ版ではフォーカスを追加すると日本語で回答されない仕様になっています)
- 上手くいかないときは、UI の右上にあるリセット ボタンを使用して最初からやり直してみる
フィードバックでより賢く!
現在、ご利用できるドキュメント アシスタントはベータ版となっています。そのため、望む回答が得られない場合や、会話の途中で問題が発生する場合があります。そうした場合、アシスタントの回答に評価をつけることで、米国 Esri 社の開発チームにこれを知らせることができます。
アシスタントを評価するには、親指を立てる・下げる、のアイコンをクリックして、簡単なアンケートに回答します。アンケートでは評価の理由について、うまくいった点や改善できる点を具体的にフィードバックすることができます。
こうした皆様からのご意見は、米国 Esri 社の開発チームに匿名で共有され、アシスタントの精度と有用性の向上に役立てられます。皆様のフィードバックによって、アシスタントはより賢くなっていくことができます。
おわりに
ArcGIS ドキュメント アシスタントは、米国 Esri 社が提供するドキュメントに精通したチャットボットで、ユーザーの作業を成功へと導いてくれます。
まだベータ版であるため、不完全な応答を返す場合もありますが、求めている情報をより早く見つけ、これまで知らなかった機能を発見できるように設計されています。
今後も、パフォーマンスや回答の精度、回答の根拠となるドキュメントの追加などの、継続的な改善が予定されています。ArcGIS ドキュメント アシスタントのさらなる成長にご期待ください。
Esri Japan AI Weeks では ArcGIS で利用できる AI の記事を月曜日から金曜日の 5 日間、2 週にわたって投稿いたします。
明日は ArcGIS Pro アシスタントをご紹介いたします。