ArcGIS 上ですぐに使える!台風・地震関連リアルタイム データの比較

ArcGIS 上ですぐに利用できる台風や地震に関するレイヤーは、有償・無償も含めて複数あります。本記事では、有償で使える気象オンライン サービス(ゲヒルン版)(以下、気象オンライン(ゲヒルン版))と無償で使える ArcGIS Living Atlas of the World(以下、Living Atlas)上で提供されているレイヤーの比較を行います。

※ ArcGIS Living Atlas of the World とは、ArcGIS Online 上の信頼できるコンテンツを集めたカタログ サイトです。詳しくはこちらをご覧ください。

台風

台風の実況情報や予想情報を表すデータとして、Living Atlas 上には Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons があります。一方、気象オンライン(ゲヒルン版)では、台風解析・予報情報(5日予報)があります。それぞれの特徴を一覧表にまとめました。

Living Atlas 気象オンライン(ゲヒルン版)
提供アイテム Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons 台風解析・予報情報(5日予報)
有償・無償区分 無償 有償
レイヤーの更新頻度 15分 10分
データソース
  • 気象庁(ゲヒルン株式会社)
データソースの更新頻度
  • 基本6時間ごと(詳細
  • 12・24時間先:3時間ごと
  • 48~120時間先:6時間ごと(詳細
保持期間 リアルタイム リアルタイム
提供範囲 全世界 日本周辺のみ

どちらも台風に関するレイヤーですが、データソースが異なるため、データの更新頻度や提供範囲が異なります。Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons は米国 Esri 社がホストしており、NOAA(アメリカ海洋大気庁)など、アメリカの機関由来のデータを基にしています。一方で、気象オンライン(ゲヒルン版)では気象庁由来のデータが基になっています。そのため、同じ台風でも実況位置や予想進路等が異なる場合があります。

提供される情報の比較

実況位置・予報中心

どちらのデータでも、台風の実況位置や予報中心は提供されており、台風の勢力情報(最大風速や等級など)も含まれます。ただし、Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons に含まれる最大風速や等級は 1 分間の平均風速を基にしているのに対し、気象庁では 10 分間の平均風速を基準にしていることに注意が必要です。(1 分間の平均風速の方が、風速が大きくなる傾向にあります。)

また、台風の発達段階を階級分けする手法についても、Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons では、通常、ハリケーンの等級分けに利用するサファ・シンプソン・ハリケーン・ウィンド・スケールを台風にも用いており、気象庁の区分とは異なります。さらに、上述の通り、最大風速の計測方法が異なるため、気象庁の用いる台風の等級分けと Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons に含まれる等級の対応付けは難しくなっています。

気象庁|台風の大きさと強さ および Saffir-Simpson Hurricane Wind Scale を参考に作成

予報円

気象オンライン(ゲヒルン版)で、破線で表示される「予報円」は、台風の中心が到達すると予想される範囲(円内に入る確率 70%)を示しています。一方、Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons では、Forecast Error Cone として提供されており、およそ 60~70% の確率で予想進路が含まれる領域を表しています。詳細はアイテム説明をご確認ください。

暴風域・強風域

暴風域とは「台風の周辺で、平均風速が 25m/s 以上の風が吹いているか、地形の影響などがない場合に、吹く可能性のある領域」と定義される範囲であり、強風域は 15m/s 以上の同様の領域です。これらの情報は気象オンライン(ゲヒルン版)ではポリゴン データとして提供されます。一方、Active Hurricanes, Cyclones and Typhoons では、一定の風速以上になる確率を面的に表した Tropical / Strong Tropical / Hurricane Force レイヤーが提供される場合があります。

(左)Active Hurricane, Cyclones and Typhoons の Forecast Error Corn(右)気象オンライン(ゲヒルン版)の予報円および暴風域等

地震

地震関連のデータとして、Living Atlas 上には Recent Earthquakes震源情報(防災情報XML) 震度情報(防災情報XML) が存在します。一方、気象オンライン(ゲヒルン版)には、震度情報・震源情報に加えて、推計震度分布図が存在します。それぞれの特徴を一覧表にまとめました。

Living Atlas 気象オンライン(ゲヒルン版)
提供アイテム
  • 震源情報
  • 震度情報
  • 推計震度分布図
有償・無償区分 無償 無償 有償
レイヤーの更新頻度 5分 5 分 5分
データソース USGS 気象庁(防災情報 XML) 気象庁(ゲヒルン株式会社)
提供レイヤー
  • Events by Magnitude
  • Shake Intensity
  • 震源情報
  • 震度情報(市町村等)
  • 震源情報
  • 震度情報(細分区域、市町村等、観測地点)
  • 推計震度分布図
保持期間 30 日間(M3.0 以下は 3 日間、M4.5 以下は 7 日間) 30 日間 震度5弱以上は保持(それ以外は、30日間)
提供範囲 全世界 日本周辺のみ 日本周辺のみ

データソースが異なるため、これらのデータにも異なる特徴が存在します。たとえば、Recent Earthquakes では全世界の地震に対応していますが、後述するように日本国内において、計測震度相当のデータの取得は難しくなっています。また、防災情報XML は気象庁の留意事項「迅速・確実な電文の配信や、気象情報のコンサルティング等を希望される場合は、一般財団法人気象業務支援センターや予報業務許可事業者等にお問い合わせください。」との記述があるように、配信保証がございません。さらに、市町村より詳細な震度データの提供も行っておりません。配信保証や市町村より詳細な震度データが必要な場合は、気象オンライン(ゲヒルン版)の利用をご検討ください。

提供される情報の比較

震源情報

Recent Earthquakes では Events by Magnitude が、それ以外は震度情報レイヤーが該当するデータになります。USGS が発表するマグニチュードはモーメント・マグニチュードを採用していますが、気象庁では気象庁マグニチュードを採用しています。そのため、同じ地震でも異なるマグニチュードが観測される場合もありますので注意が必要です。

震度情報

地震の揺れ方を表すレイヤーとして、Recent Earthquakes では改正メルカリ階級を面的に表現した Shake Intensity レイヤーを提供しています。このデータと気象庁の震度階級との対応付けは難しく、計測震度を用いない推計方法のため、実際の揺れ方と大きく異なる場合も存在します。

たとえば、下の図は 2021 年 10 月 7 日に千葉県北西部を震源として、関東地方で最大震度 5 強を観測した地震の例です。震源が比較的深かったこともあり、埼玉県宮代町や川口市・東京都足立区など、震源から少し離れた地点で最大震度の震度 5 強を観測した地震でした。Shake Intensity では、千葉県北西部の色が濃くなっているように、実際の観測震度の分布を正確に捉えられていないことが分かります。

一方、同じように面的に震度を推計したデータとして「推計震度分布図」があります。このデータは、震度計で観測された震度をもとに、地表付近の地盤の増幅度 (地表付近における揺れの増幅を示す指標) を使用して、1km メッシュ単位で震度を推計したものであり、観測震度と相違のない震度分布を面的に得ることができます。詳細は「迅速かつ詳細な被害推定のために。気象オンラインサービス (ゲヒルン版) に推計震度分布図を追加しました! 」をご確認ください。

まとめ

このように一言で「台風」や「地震」に関連するレイヤーと言っても、データソースの違いなどにより、その特徴が異なります。これらの違いを理解した上で、ArcGIS 上でご活用することをお勧めいたします。

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