昨今、自然災害は世界中で増加傾向にあり、日本でも、洪水や土砂災害を引き起こす大雨や集中豪雨の回数が増加しています (国土交通白書 2022)。自然災害は気候変動が要因となっている可能性が高く、企業がこの気候変動で受ける影響を情報開示することが重要になってきています。
G20 からの要請を受け金融安定理事会 (FSB) により設置された「気候関連財務情報開示タスクフォース (TCFD;Task Force on Climate-related Financial Disclosures) 」 (経済産業省:気候変動に関連した情報開示の動向(TCFD)) の提言に沿った情報開示は一般に TCFD 開示と呼ばれていて、世界各国の企業は気候変動に関する情報の開示を進めています (朝日新聞デジタル:TCFDとは何か? 気候変動への注目の高まりや今後の展望について解説 金融・経済から見えるSDGsのトレンド【3】) 。
TCFD 提言で開示する情報の一つに、洪水、暴風雨等の気象事象によってもたらされる財物損壊等の直接的な影響のリスクである「物理的リスク」があります (TCFDを活用した経営戦略立案のススメ) 。日本では物理的リスクとして洪水の被害による影響が一般的に想定され、このリスクの分析、把握に ArcGIS を活用するソリューションを特設ページにて紹介しております。本ソリューションの内容である、ArcGIS Pro を利用して物件や建物の最大想定浸水深リスクを把握し、被災時の想定被害率を算出する流れを簡単にご紹介します。
目次
追加するデータの準備
物件や建物のデータ
リスクを把握したい物件や建物の住所情報が記載されているデータを用意します。「ジオコーディング」という機能を利用して、Excel などで管理している物件や建物の住所情報をポイント データに変換することができます。
住所情報以外に、緯度経度情報でも同様にポイント データとして利用できます。
最大想定浸水深リスクのデータ
国土数値情報では、洪水浸水想定区域のデータを公開しています。ダウンロードしたシェープファイルは、ArcGIS Pro ですぐに使えるデータとして、簡単に追加できます。
データを重ね合わせて、被害率を算出する
ArcGIS Pro で、上記 2 種類のデータを重ね合わせて表現を調整すると、このようなマップを作成できます。
また、「空間結合」という機能を使って、建物や物件に重なっている区域の浸水レベルをデータとして付与し、被害率を算出するためのデータを作成します。
作成したデータから、ArcGIS Pro 内の演算機能で被害率を算出します。算出した被害率の大小を、地図上で可視化することもできます。
気候変動によって生じるさまざまなリスクを把握しよう
この例と同様にして、気候変動によって生じるその他さまざまなリスクの把握に ArcGIS Pro を活用できます。TCFD 開示の GIS によるアプローチに関しましては、ぜひお気軽に弊社までお問い合わせください。