2023年最後の数週間、経済見通しは慎重に楽観的だった。米連邦準備制度理事会(FRB)の金利引き締めは、失業率を急上昇させたり景気後退を招いたりすることなく、インフレを抑えているように見えた。ソフトランディングは現実的な可能性のように見えた。しかし現実的ではあるが、確実ではない。ある経済指標は、この国が景気後退の瀬戸際にあることを示唆していた。
景気後退の始まりは、どんなビジネスにも難題を突きつける、 雇用レベルから在庫補充に至るまで、すべてに影響を与える。ある著名なエコノミストは、的を絞った地理的アプローチによって、景気減速が近づいているかどうかを示すことができると提唱している。
景気後退を察知するためのサーム・ルール
この指標は、2019年にこの理論を発表した元連邦準備制度理事会(FRB)のエコノミスト、クラウディア・サームにちなんで名付けられた「サーム・ルール」である。これは、失業率が12ヵ月前の最低値から0.5%上昇すると、景気後退に数ヵ月入るというものだ。サーム・ルールは1970年以来、すべての景気後退に当てはまる。サームは、最近の研究として現在の状況はサーム・ルールを回避するのに十分なほど例外的である可能性があると指摘しているが、企業幹部は依然として警戒している。サームが最近の記事「Looking local for early signs of trouble」で述べているように、サーム・ルールが適用されるのは全米経済だけではない。各州が不況に見舞われているかどうかの指標としても有効である。言い換えれば、サーム・ルールは地域化できる。ロケーション・インテリジェンスは、それが提供する洞察を強化し、企業が地域レベルで戦略的計画を手直しすることを可能にする。
たとえば、ジャスト・イン・タイム戦略をとる大型小売業は、不況に見舞われている州や地域の在庫を制限することを決定するかもしれない。マーケティングチームが2024年に向けて一連のポップアップストアを計画していた場合、マネジャーは特定の地域の経済状況を反映して展開計画を変更するかもしれない。
GISを使えば、アナリストや経営幹部は、地域の失業率データを地図上で調べることができる。GISの利点は、地図に他のデータセット(売上動向、人口統計、交通量など)を加えることで、さらに際立つ。これらの情報は、その場所の経済的性格を明らかにし企業の意思決定の指針となる。
州ごとの未来を占う
GISベースのロケーション・インテリジェンスをサーム・ルール・データに適用すると、広範囲に影響を及ぼす可能性を感じとることができる。電子回路やリチウムイオン電池のメーカーが、カリフォルニア州で不況が始まっていることに気づき、海外のサプライヤーからの原材料購入を削減することを決定するかもしれない。サーム・ルールのデータを、たとえば郡や国勢調査区といった小規模な単位で適用すれば、経営幹部は特定の地域で不況のシグナルを察知し、雇用を抑制するかもしれない。逆に、意思決定者は、景気の足腰が強くなっている地域では、雇用を加速させる余地があると考えるかもしれない。
サーム・ルールのような経済の指標がビジネスに与える影響は、無限大である。
このデータは、物流企業が地域の物流施設におけるオペレーションや投資をどのように調整するかを決定するのに役立つだろう。また、潜在的な労働力がどこに移転することを望んでいるのか、そこで働く労働者はどの程度の給与を期待しているのかを企業がよりよく理解するのにも役立つだろう。
サーム自身は、2024年には、たとえ経済が多少の波乱に見舞われたとしても、景気がソフトランディングする可能性があると予測している。企業経営者が事業や投資の計画を立てるという重要な仕事に取り組む際、ロケーション・インテリジェンスとサーム・ルールは、今後の波乱を予測するための有用な指標となるだろう。
この記事は WhereNext のグローバル版に掲載されたものです。 原文: Economy in Focus: A Local View on the Soft Landing