ArcGIS Pro Network Analyst エクステンションでは、ルート解析や到達圏解析、最寄り施設の検出など、全 6 種類の交通ネットワーク解析を提供しています。そして ArcGIS Pro 3.3 より新たにラスト マイル デリバリー解析が追加されました。本ブログでは、ラスト マイル デリバリー解析の概要、配車ルート解析 (VRP) との違い、ArcGIS Online サービスの利用についてご紹介します。
目次
ラスト マイル デリバリー解析とは
皆さんはラスト ワン マイル という単語をご存じでしょうか。「ラスト ワン マイル」とはある配送センター (ハブ) から顧客 (最終届先) までの最終の配送区間のことです。昨今、この区間配送「ラスト マイル デリバリー」における小型車両での配送による人員不足や再配達による輸送コストの増大が社会問題となっています。そのような問題を解決に導くための交通ネットワーク解析として、ArcGIS Pro のラスト マイル デリバリー解析では、一か所の配送センターや店舗から最終顧客に配達にフォーカスした解析を行うことができます。
配車ルート解析 (VRP) 解析との違い
Network Analyst エクステンションのネットワーク解析には、複数の車両による巡回ルートを一括で算出することができる配車ルート (VRP) 解析があります。ラスト マイル デリバリー解析は、この配車ルート (VRP) 解析と似ている箇所も多くあるためこれら 2 つの解析の違いを簡単にご紹介します。
解析処理時間の違い
ラスト マイル デリバリー解析は VRP 解析と比較し解析時間が短くなっています。
VRP 解析で使用できる様々な制約のうち一部のみをサポートすることで、品質とパフォーマンスに優れたアルゴリズムの提供を実現しています。
そのため、配送拠点の複数配置やドライバーの休憩時間、車両の燃費、固定費など様々な制約を用いる高度な交通ネットワーク解析を行いたい場合には、配車ルート (VRP) 解析、複雑な設定がなく最終顧客までの配送ルートの解析を行いたい場合には、ラスト マイル デリバリー解析と解析を使い分けることができます。
制約に関する詳細はラスト マイル デリバリーを選択する理由をご参照ください。
タイム ゾーン属性の利用
ラスト マイル デリバリー解析では、タイム ゾーン属性を用いることで時間に中立的な OD コスト マトリックスを使用し、ルートの割り当てと順序を決定します。その結果、正確な到着時間が反映されます。
日本ではタイム ゾーンは 1 つしかありませんが、ラスト マイル デリバリー解析を行う場合には、タイム ゾーン属性が設定されたネットワーク データセットが必要です。あらかじめご利用のネットワーク データセットのタイム ゾーン属性をご確認ください。
ESRIジャパンが販売する ArcGIS Geo Suite 2025 年の道路網および車種別規制付き道路網のネットワーク データセットにはタイム ゾーン属性が設定されており、ラスト マイル デリバリー解析をすぐに利用することができます。また、履歴交通量付き道路網には対応していませんのでご注意ください。
ネットワーク データセットへのタイム ゾーン属性の設定については、タイム ゾーン属性をご参照ください。
また、「ゾーン」と呼ばれる配送領域の設定や、通行規制のための「バリア」の設定も VRP 解析同様に扱えるため、いくつかのオプションを設けた解析においてもラスト マイル デリバリー解析を用いることで処理効率を向上させることができます。
ArcGIS Online のサービス利用
ArcGIS Pro では、ArcGIS Online のネットワーク サービスとクレジットを消費することで ArcGIS Network Analyst エクステンション、ネットワーク データセットをお持ちでない方にも利用していただけます。
詳細は過去ブログ「ArcGIS Pro で ArcGIS Online ネットワーク サービスを使用したネットワーク解析ができます!」をご覧ください。
ラスト マイル デリバリー解析でも ArcGIS Online クレジットを消費した解析は可能ですが、2024 年 12 月現在、ArcGIS Online 上の解析ツールには実装されておらず、ArcGIS Pro のネットワーク解析ツールでのみ使用できる解析です。ArcGIS Online のネットワーク サービスを利用した解析は、開発者サイトにおいてベータ提供となっており、このベータ期間中は解析にかかるクレジットは不要です。 今後、実際にお試しいただく時期によっては、ArcGIS Online のアップデートの影響によりクレジットの消費されることをご注意ください。
さいごに
Network Analyst を使用した解析には、ネットワーク データセットが必要です。ESRIジャパンでは、一方通行や右折左折禁止、規制速度などの交通規制情報をあらかじめ収録した道路ネットワーク データを販売しています。交通手段別の通行所要時間など、ネットワーク解析に必要な設定も完了済みのため、ArcGIS での解析にすぐにお使いいただけます。
また、Network Analyst には各ネットワーク解析ツールのチュートリアルも用意されており、新しく追加されたラスト マイル デリバリー解析のチュートリアルも用意されております。
新たにラストマイルデリバリー解析が追加され、ますます解析の幅の広がった ArcGIS Pro Network Analyst エクステンションでの交通ネットワーク解析をぜひご利用ください。
【参考リンク】
【関連ブログ】