ArcGIS Maps SDK for JavaScript は 2026 年 2 月にリリースされるバージョンより、ソフトウェアのバージョン番号に互換性の意味を持たせるバージョン管理方法であるセマンティック バージョニングに移行することが発表されました。
本記事では、ArcGIS Maps SDK for JavaScript のセマンティック バージョニングへの移行について、米国 Esri 社が公開している「ArcGIS Maps SDK for JavaScript is Moving to Semantic Versioning」の記事を翻訳してご紹介します。
目次
セマンティック バージョニングの概要
ArcGIS Maps SDK for JavaScript のバージョン アップとリリース方法が大きく変わり、セマンティック バージョニングに移行します。この変更により、開発者はバージョン間のアップグレードが容易になり、リリースの影響を理解し、アップグレードを計画し、最新のツールと統合できるようになります。
セマンティック バージョニングとは
セマンティック バージョニングは以下のシンプルなフォーマットを使用します。
MAJOR.MINOR.PATCH
MAJOR(メジャー): 後方互換性のない変更や非推奨事項が含まれています。アップグレードにはコードの変更が必要となる可能性があります。
MINOR(マイナー): 後方互換性を保った機能追加や非推奨の変更が含まれています。アップグレードによって既存のコードに影響を及ぼすことはありません。
PATCH(パッチ): 後方互換性を保ったバグ修正およびセキュリティー対応のみが含まれています。新たな機能追加や非推奨の変更はありません。
従来のバージョン番号(例:4.33 や npm リリースにおける 4.33.12)は一見似ているように見えますが、これは単に SDK の新しいリリースを表しているだけです。従来のバージョニングでは、すべてのリリースには後方互換性のない変更が含まれています。一方、セマンティック バージョニングに従う場合、バージョン番号を見るだけでリリースの内容がすぐに分かります。
セマンティック バージョンに移行する理由
- 即時のリスク通知:バージョン番号を一目見るだけで、自動マージ可能か、作業のスケジュールが必要かの判断ができます。
- リスクの目安:メジャー バージョンでは、アップグレード前に移行ガイドの確認が必要です。
- より良い計画立案:影響の大きい変更は、予測可能なタイミングでまとめて行われます。
- 段階的な価値提供:マイナー バージョンへのアップグレードで、破壊的変更の心配なく機能強化を受け取れます。
- 安全な自動アップグレード:デフォルトのバージョン指定(例:^5.1.0)により、新しいマイナー バージョンが自動的に取り込まれます。
- 非推奨機能の猶予期間:次のメジャー リリースで API が削除される場合、明確な警告が表示されます。
- ツールとの整合性:npm、Yarn、Renovate、Dependabot、CI ポリシーなどがセマンティック バージョニングとシームレスに連携します。
- サポートと統合コストの削減:予期せぬ破損が減り、アップグレード ガイドが明確になり、セキュリティー修正も迅速になります。
リリース スケジュール
2025 年 9 月にリリースされた、バージョン 4.34 が 4.x シリーズの最後のリリースとなります。5.x への移行は、セマンティック バージョニングの導入によるものなので、大幅なコード修正を心配する必要はありません。
過去バージョンでウィジェットにて開発をしている場合は、5.x への移行時に Web コンポーネントでの開発に移行する必要があります。詳しくは「ArcGIS Maps SDK for JavaScript のコンポーネントへの完全な移行について」をご確認ください。
2026 年からのリリース計画では、年に 1 回のメジャー バージョンと 2 回のマイナー バージョンを予定しています。
- 2 月:メジャー バージョン アップ(4.35 から 5.0 へ)
- 6 月と 10 月:マイナー バージョン(5.1 および 5.2)
- 2027 年 2 月:次のメジャー バージョン(6.0)
サポート プラン
製品ライフサイクル ポリシーは、この新しいリリース戦略とともに以下のように進化します。
- 新しいリリースは、次のマイナー バージョンが公開されるまで一般利用可能状態となります。
- 拡張サポートは、最初のメジャー リリース(MAJOR.0)から3年間継続されます。
- バグ修正のパッチは、サポート対象のメジャー バージョンの最新マイナー バージョン(MAJOR.LATEST)に適用されます。
- ArcGIS Enterprise の 製品ライフサイクル ポリシーの最近の変更に合わせて、成熟サポート フェーズは廃止されます。
新しいサポート プランは、バージョン 4.34 を含む以前のリリースには影響しません。
Calcite Design System との連携
ここ数年、ArcGIS Maps SDK for JavaScript と ArcGIS Online は、互いに連携しながら開発され、同時にリリースされてきました。
ArcGIS Online は ArcGIS Maps SDK for JavaScript の新機能を活用したワークフローによって強化され、SDK は同時に ArcGIS Online の新機能にアクセスできるよう更新されます。両者は一体となって進化しています。
また、ArcGIS Online や ArcGIS Maps SDK for JavaScript、そして ArcGIS Maps SDK for JavaScript を使ってカスタム アプリを開発する多くの開発者は、Calcite Design System に大きく依存しています。
Calcite Design System は UI/UX を構成するレイアウトや UI 要素を提供しています。
この技術スタック全体でよりスムーズな統合を実現するために、今年 Calcite Design System のリリースを ArcGIS Maps SDK for JavaScript および ArcGIS Online と連携させました。
さらに、Calcite Design System はすでにセマンティック バージョニングに従っているため、今後は ArcGIS Maps SDK for JavaScript のメジャー リリースに合わせて Calcite Design System のメジャー リリースも行う予定です。
結論
セマンティック バージョニングは、より明確で安心感のある、そして制御しやすいバージョン管理を可能にします。
この目的は、破壊的変更がいつ発生するかを明確にし、アップグレード プロセスを効率化し、ArcGIS Maps SDK for JavaScript を使って開発するすべての人にとって、より一貫性のある体験を提供することです。
関連リンク
- ESRIジャパン Web サイト
ArcGIS Maps SDK for JavaScript
ArcGIS Developers 開発リソース集 - 米国 Esri 社 Web サイト
ArcGIS Maps SDK for JavaScript
ArcGIS Developers
Calcite Design System
