道路データを完全網羅!道路の情報が欲しいときはいったい何のデータを使うべきなのか

道路の情報、と一口に言っても高速道路や国道などの「道路種別」が欲しい場合や、どのくらいの車両が通れるのかの「幅員情報」が欲しい場合があったり、「ルート検索」に使ったり、道路データの用途はさまざまある。道路の形状が欲しいという場合も、その形状というのは道路の中心線なのか道路の外縁(道路縁)なのか、線形状でほしいのか面形状でほしいのか、それによって適切なデータは異なる。

広く使われるデータだけあって、道路はいろいろな形でデータ整備がされており、どう使いたいのか目的がはっきりしないと、何のデータを使えばよいのかうまくマッチングしない。そこで、GIS で使える道路のベクトルデータにはどんなものがあるのかまとめてみた。

GIS データストアで道路のベクトルデータを探す

GIS データの総合カタログサイト的な位置づけに、GISデータストア(ESRIジャパン株式会社)がある。

このサイトの製品情報ツリーを使うと、道路種別・形状カテゴリを使って道路の形状を持った GIS データ製品を絞り込むことができる。

サイドツリーにはカテゴリ内での分類が並ぶ。道路形状は道路網内の分類になる。

道路形状のリストには、前述の道路網に加えて『スターターパック 公共地図』(通称公共地図)『ArcGIS Geo Suite 都市地図』『高精度3D空間情報』『PAREA-Traffic 交通センサス』などといった製品が並ぶ。

リストの中には『ArcGIS Geo Suite 道路網』(以下、道路網と記載)という製品が見つかる。製品名からすると道路のことは何でもお任せ・・・というように見える。たしかに、道路網には日本国内の車両が通行できるすべての道路が収録されており、道路種別や幅員情報まで完備されている。
しかし、道路の種別がわかるデータが欲しい、と問い合わせをすると道路網以外の製品を勧められる場合もある。いったいなぜなのか。

道路データを完全網羅:道路の情報が欲しいときはいったい何のデータを使うべきなのか

GIS データストアに掲載されている道路情報を持った製品の情報を表にまとめた。道路の種別や幅員といった代表的な属性に加え、どういった形状でデータを収録しているのか、の表である。

製品形状道路種別道路幅員細街路
道路網 *1中心線幅員階級で表現
公共地図中心線幅員階級で表現
広域地図中心線××
詳細地図中心線/面形状*2×*3
都市地図中心線/面形状*2幅員階級で表現 *3
高精度3D空間情報中心線/道路縁(外枠形状)GIS 上の計測幅を収録△(政令市のみ収録)
GEOSPACE電子地図面形状××(基本道路のみ収録)
PAREA-Traffic交通センサス中心線交通センサスの幅員値を収録×(基本道路を収録)
道路交通履歴統計交差点間を結ぶ線××
(参考)基盤地図情報道路縁(外枠形状)××

*1 車種別規制付き道路網、履歴交通量付き道路網についても特徴は同じ
*2 面形状が持つ属性は種別のみ
*3 面形状は地域によっては収録されていません。

ArcGIS で利用できる道路網は、「ネットワーク解析」という機能性を持つデータであるため、単なるベクトル以上の価値を持つ。ルート解析や到達圏(商圏)作成をするために用いられる線(ライン)形状のデータで、例えば高速道路のデータが欲しい、単純に幅員 13m 以上の道路がどれくらいあるのか知りたい・・・といった目的だと少しオーバースペックかもしれない(もちろん道路網でも利用用途は満たせる)。
それに対して、公共地図(スターターパック収録)のような地図製品はネットワーク解析機能は有しないため、価格は低く、もっとも手軽に道路を GIS データとして扱える。ネットワーク解析をしない場合、公共地図の道路データを使えばオーソドックスな目的であれば達成できるだろう。「スターターパック」という名前が示す通り、道路のことで知りたいことがあればまずはこの公共地図からあたるべきだ。

公共地図(スターターパック)
国交省をはじめとした公的機関が公開している情報を集約して作成した地図。地理院地図で表示される道路と同じデータソース。公共地図には建物は大きさで間引いて収録しているが、道路は細街路まですべて収録されている。

多くの道路データは道路種別を持っているが、幅員の情報はほとんどが「幅員階級」

GIS データストアが示すように世の中にはいろいろな道路データがあるけれど、元をたどっていくと一つのデータにたどり着く。それは国土地理院の 1/25,000 地形図。現在カーナビなどのルート案内用データ(つまり道路網など)の基になっている DRM(デジタル道路地図)データベースも、最初 1/25,000 地形図を基に作成され、その後全国の道路管理者の資料(および基盤地図情報)を用いて毎年データの更新が行われている(出典:一般財団法人日本デジタル道路地図協会)。

地図データを作成している各社も、どこかの段階で国土地理院の地形図を使って地図を作成し、その後 DRM と同じように独自の更新を加えて地図を更新し、今日に至る。そのため道路網シリーズや公共地図(国土地理院ベース)の地図データは共通の幅員階級で道路を表している。

 幅員 13.0m 以上
 幅員 5.5m 以上 13.0m 未満
 幅員 3.0m 以上 5.5m 未満
 幅員 3.0m 未満

この階級は 1/25,000 地形図をベースにしているので、あくまでも地図上での連続性を考慮した階級区分であって、最低幅でも最高幅でもなく、実測された道路の幅でもない。

今日の国土地理院のデータは 13m 以上の道路をさらに 13m以上19.5m未満、19m以上の道路で区分けしている(画像は公共地図に収録の道路データ)。

道路の形状をどのように持つかは地図データ整備会社の腕の見せ所

地図、とりわけ GIS において道路をどのように表現するか、その表現のためにどういった形でデータを保持するか、地図データを整備する企業は各社腕を振るっている。広域で見るときは道路中心線を使った線形状で表現し、拡大して詳細図を見るときは道路の車線だけでなく歩道や隅切りの有無まで表現する面形状で表したい。面形状は精細だが、当然データ量としては重く描画が遅くなり、線形状よりは扱いにくくなる。道路を線で持つのか、面で持つのか、地図が目的とする縮尺によってどういったデータを収録しておくかはおのずと決まってくる。

道路を面的に表現できる都市地図の例(目標物の注記は非表示にしてある)

道路の種別を属性として持っているほか、背景ポリゴン(city_site)クラスを使うことで歩道や(分離帯の)植栽地、街区との境界を区別できる(属性の詳細は ArcGIS Geo Suite 都市地図データ基本仕様書)。なお、ArcGIS Geo Suite:詳細地図も同等の地図データを持っているが、両製品とも道路の実測の幅員は持っていない。

もし幅員階級ではない道路幅員が必要なら、高精度 3D 空間情報を利用するのがよい。この製品は道路の幅員形状のデータ(道路縁)を持っており、GIS 上でその道路の幅員を計測し、さらに道路縁から発生させた道路の中心線に、幅員を実測値にほぼ近い形で持たせている。この道路幅員は GIS ならではのデータと言える。精密な道路縁の形状を持っているが、こうしたデータは日本全国くまなく整備するのは難しい。そのため、現在政令市範囲のみの提供となっている。

もう一つ特徴的なデータとして、交通センサスとの連携が可能な『PAREA-Traffic 交通センサス』がある。道路データは元をたどっていくと DRM データに行き着く、と書いたが、残念ながら多くのデータは DRM との関連性(共通 ID による紐づけなど)を現在は持っていない。しかしこの PAREA-Traffic では交通センサスに加えて DRM コードによる DRM データとの紐づけが可能なデータである(ただし、交通センサスで調査されないような細街路は収録対象外)。

ほかにもカープローブデータから作成された『ArcGIS Stat Suite 道路交通履歴統計』も道路種別や道路形状を持っているが、形状については一定間隔の通行を軌跡として結んだ線になるので中心線を収録したデータよりも形状はやや粗め。これは通行台数や混雑度を示す平均車速を主題とするデータで、道路の精緻な形状を把握する目的のデータではないからである。住宅街の中は個人情報の観点からもデータを提供していない。

GIS における道路データ

基本的に道路データは道路種別と幅員「階級」の情報を持っていることがわかってきたと思う。それプラス「何を表現できるデータなのか」でそれぞれの製品の特徴が表れてくる。

公共地図や都市地図といった名前の製品はその名の通り「地図」を描画するための製品だが、そこには地図に表示されるあらゆる空間情報(地物)が収録されている。
道路網だけでなく、こうした地図製品も道路のデータを持っており、歩道や隅切り、中央分離帯の有無など、道路を絵的にとらえたい場合には地図製品を使ったアプローチが最も有効的だ。

幅員階級でなく、実測値に近い道路の幅や歩道の有無を数値情報(属性)として抽出し、加工につなげたいというような特殊なアプローチが必要な場合は、高精度 3D 空間情報を使うというのが最も近道だろう。かなり専門的で要求水準も高いと思われるが、期待に応えうるデータである。その分全国くまなく整備されているわけではない。

ネットワーク解析を行うなら道路網が必要である。道路網のシリーズとしては、ほかにも大型車の規制などの規制上情報を持った『ArcGIS Stat Suite 車種別規制付き道路網』、やプローブデータから得られた交通情報を使った解析ができる『ArcGIS Stat Suite 履歴交通量付き道路網』などより詳細な情報を使って解析ができる製品もある。

履歴交通量付き道路網
道路網が交通センサスによる静的な速度予測を使ってネットワーク解析を行うのに対して、履歴交通量付き道路網ではプローブデータから得られた交通情報を履歴情報として、時間帯や曜日ごとの混雑を加味したネットワーク解析が行える。形状や持っている道路属性は道路網と同じ。

ネットワーク解析が不要な場合でも、道路ごとの車種や重量、高さ、積載量などの制限情報は『車種別規制付き道路網』のみが持つ情報であり、これらの情報を扱いたい場合は『車種別規制付き道路網』の利用が欠かせない。

このように道路製品をピックアップして特徴を紹介してきたが、ほかにも GIS データストアには多くの製品を掲載している。トップ画面では 8 つのカテゴリーからデータを選択でき、画面上部の「タグ検索」リンクからはデータベンダーごとや製品シリーズごとの絞り込みができる。町丁目や国土地理境界コード、郵便番号でデータ処理したい時のデータなど活用シーンに合わせて検索をしてみてほしい。

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