今週末 (2/23, 24)、「アーバンデータチャレンジ (Urban Data Challenge: 以下、UDC) 2017 ファイナル」というイベントが開催されます。UDC は一般社団法人社会基盤情報流通推進協議会 (AIGID) が主体となり、地域課題の解決を目的に自治体が提供する公共データ (オープンデータ) を活用したイベントやコンテストなどを全国各拠点で実施する活動で、ESRIジャパンは昨年 11 月に室蘭市で開催された企業・団体対抗ハッカソン (UDC 北海道ブロックのイベント) に参加しました。
今回は、そこで作成した「むろらん地域課題解決ポータル」というポータル サイトを紹介します。
※画像をクリックするとポータル サイトが起動します
むろらん地域課題解決ポータルは、室蘭市が「むろらんオープンデータライブラリ」として公開しているオープンデータを利用し、子育て、選挙、防災など生活に密着する地域課題を解決するアプリを集めた市民向けポータル サイトです。データとアプリをセットにして公開することで、市民は簡単にオープンデータにアクセスして自分の住んでいる周りはどうなっているかを知ることができます。以下に、それぞれのアプリの概要を紹介します。
①AED 設置事業所
AED が設置されている場所を知っておくことは非常に重要です。このアプリは AED を設置している事業所の場所を知るだけでなく、万が一心臓に異常が発生した現場に遭遇した場合に自分が今いる場所の近くにある AED を検索することができます。
②まちの選挙情報
選挙の投票率が上がらないのはどこの自治体でも課題になっていると思います。室蘭市では投票区、投票所、ポスター掲示板の位置を公開し、選挙をより身近に感じてもらう取り組みをしています。このアプリを使用すると、近くにあるポスター掲示板と投票所の情報を検索することができます。
③冬の交通安全
室蘭市は坂が多く、雪が積もったときは自動車がスリップしたり坂道を登れなかったりします。そのために各所に「砂箱」という砂の入った箱を設置し、スリップ止めに役立てています。このアプリは砂箱の位置、交通死亡事故の発生場所を示しているだけでなく、道路に色付けをすることで傾斜が急な所 (赤で表示) がわかります。またアプリは 3D 表示できますので危険な場所がよくわかります。
④壊れた橋の報告
「もし橋の補修が必要そうな箇所を見つけたら…」。市民がこのアプリを通じて市に報告することができます。
※現在表示されている報告データはサンプルです。
⑤室蘭市バス時刻表
バス停の場所やバスルート、さらにはバスの時刻表がまとまっている Web サイトは意外に少ないです。室蘭市は GTFS (General Transit Feed Specification) という公共交通機関のオープンフォーマットでこれらの情報を提供しており、このアプリで可視化しました。
⑥暗い夜道に気をつけよう
暗い夜道は交通事故や犯罪など危険が伴います。このアプリは照明灯の場所を示し、暗い場所はあまり通らないように注意喚起をします。
※照明灯は半径 18m の円で示されていますが、実際に明かりの届く範囲は設置されている器具によって異なります。
⑦最寄りのゴミ袋販売店
ゴミの分別はどの自治体でも取り組んでおり、室蘭市のように指定のゴミ袋を用意している自治体もあります。このアプリはゴミ袋が販売されている場所を示しており、いざとなったときに近くの販売店に買いに行くことができます。
⑧最寄りの赤ちゃんの駅と保育園
「赤ちゃんの駅」とは自由におむつが替えられたり授乳ができたりする場所のことです。幼児を持つ夫婦にとってこの情報は欠かせません。このアプリは地図上でクリックした場所から一定の範囲内にある赤ちゃんの駅や保育園の場所を調べることができます。
⑨最寄りの避難所確認
ハザードマップは避難所や災害が起こり得る可能性のある場所を地図上に可視化したものです。ハザードマップとして作られたこのアプリを見ることで洪水や土砂災害が起きたときに自分が逃げるべきかどうか、逃げるとしたらどこに逃げるべきかを把握することができます。
⑩津波避難経路
東日本大震災の教訓として津波に対する備えが重要なことは言うまでもありません。このアプリは津波が発生したときに浸水する場所と深さ、および避難経路や避難場所を示し、津波発生時に取るべき行動を意識付けします。
今回のハッカソンで作成したこれらのアプリおよびポータル サイトの特長として、「プログラミングは一切行っていない」という点があります。クラウド GIS サービスの ArcGIS Online が提供するポータル管理機能やコンテンツ作成機能などにより、これだけ多くのアプリを短期間で作成することができました。「ひとまずオープンデータだけでも公開したい」という場合でも、ArcGIS Open Data というオープンデータ サイト構築ツールも ArcGIS Online に備わっています。
「公開しているオープンデータの価値を高めたい」「これからオープデータを始めたい」と考えている自治体の職員の方々はぜひ ArcGIS Online をご活用ください。
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