みなさんは ArcGIS Online のサービス クレジット (以下、クレジット) をうまく消費・管理できていますか?
以前、「ArcGIS Online のサービス クレジットを賢く使う 4 つのコツ」でもご紹介したサービス クレジットですが、気づいたら大量消費しているなんてこともしばしばあると思います。
クレジットを大量消費してしまったけれど対策が分からない方もいらっしゃるかもしれません。そこで本記事では、クレジット消費を抑えるコツを、「マップ作成」の点から紹介していきます!
ArcGIS Online 上のデータ ストレージのクレジット消費ルール
ArcGIS Online のフィーチャ レイヤーのデータ ストレージは 100 MB のデータを保存で 1 か月当たり 24 クレジット消費します (参考: ArcGIS Online 製品ページ: クレジット)。つまり、データが大きければ大きいほどクレジット消費が多くなります。データ容量を減らすことがクレジット消費を抑えることにつながります。
■1. フィーチャの単純化
1 つ目のコツは、「フィーチャの単純化」です。突然ですがここでクイズです。以下の 2 つのフィーチャ レイヤーは大分県の同じ範囲を表示したものですが、データ容量が小さいのはどちらか分かりますか?
正解は、右側のフィーチャ レイヤーです。左右を見比べてみると、右側のフィーチャは頂点と線分が少なく描画されていることが分かります。このように、フィーチャの持つ情報量を少なくすることでデータ容量を小さくすることができます。大縮尺で見ると上記の画像のように粗が目立ちますが、小縮尺で見ると下記の画像のように、見た目に大きな差はなくなります。
では、どのようにフィーチャを単純化すればいいのかについて解説していきます。フィーチャを単純化するには、ArcGIS Pro のジオプロセシング ツールの [インテグレート]、[頂点の間引き]、[ポリゴンの単純化]、[ラインの単純化] ツールのいずれかを利用します。
[頂点の間引き]、[ポリゴンの単純化]、[ラインの単純化] ツールは Standard 以上のライセンスで利用可能です。
下記の例では、[ポリゴンの単純化] ツールを使ってフィーチャを単純化しています。手順は、まず [解析] タブから [ポリゴンの単純化] ツールを起動します。その後、[入力フィーチャ] に単純化したいポリゴンを選択し、任意の単純化許容値を入力することでフィーチャが単純化されます。
単純化されたフィーチャを ArcGIS Online に共有しました。では、上記の例でどのくらいデータ容量を小さくできたのか、ArcGIS Online のマイ コンテンツのアイテム詳細ページから見てみましょう。
元のフィーチャの形状にもよりますが、今回の例ではデータ容量がおよそ半分となりました。多くのフィーチャを保有している組織においては、この積み重ねが大きな差となります。
■2. ポリゴンをポイントに変更
2 つ目のコツも、データ容量を減らすことが目的です。
フィーチャには基本的な図形の形状として、ポイント、ライン、ポリゴンの 3 種類があります (参照: GIS 基礎解説: フィーチャとフィーチャクラス)。ポリゴンが最も複雑な形状をしており、ポイントが最も単純な形状です。そのため、必要に応じてポリゴン フィーチャをポイント フィーチャに変更することで、データ容量を小さくすることができます。
上記の例は左が大分県の場所を示したポリゴン フィーチャ、右が大分県の場所を示したポイント フィーチャです。場所という情報のみを示したい場合は、ポイントで十分であることが分かります。
ポリゴンをポイントに変更することで、マイ コンテンツのアイテム詳細ページから見てみると、大幅にデータ容量が小さくなったことが確認できます。
■3. 不要なフィールドの削除
不要なフィールドを削除することも、データ容量を減らすことにつながります。
国勢調査のデータなどは多くの指標を利用でき非常に便利ですが、特定のデータについて分析をする際に利用しないフィールドも多く含む場合があります。例として、熊本県の平成 27 年度の国勢調査のデータを見ると、フィールドが非常に多く、利用しないものが多く含まれています。下図のように、利用しないフィールドを削除することで、データ容量を小さくすることができます (参照: ArcGIS Online :フィールドの追加または削除、 フィールドの削除)。
フィールドを削除すると、そのフィールド内のデータを復元できなくなります。そのためフィールドを削除する場合は必ずバックアップを取ってから作業を行うなど、注意してください。
■4. 保有するフィーチャ レイヤーを最小限にする
冒頭でも述べた通り、ArcGIS Online ではフィーチャ レイヤーのデータ容量が大きければ大きいほど、データ ストレージで消費するクレジットが多くなります。
コツ 3 までは、1 つ 1 つのフィーチャ レイヤーの容量を小さくする方法について解説してきました。
しかし、フィーチャ レイヤーの数が多ければ多いほど、データの総量は多くなります。そこでコツ 4 では、ArcGIS Online で保有するフィーチャ レイヤーの数を減らす方法について解説します。
ArcGIS Pro で [マージ] ツールを使うことで複数のフィーチャクラスを結合し、結合したフィーチャクラスを ArcGIS Online に [Web レイヤーとして共有] します。この作業を行うことで、ArcGIS Online に共有するレイヤー数を減らすことができます。
■5. ArcGIS Online で主題ごとのマップ作成
コツ 5 では、共有したレイヤーを使用して、Map Viewer でそれぞれのフィールドごと (主題ごと) に複数のマップを作成する方法について解説していきます。
ArcGIS Pro で主題ごとにマップを作成して、それぞれを ArcGIS Online に [Web マップとして共有] をした場合、個々のマップでフィーチャ レイヤーが作成されます。すると、フィーチャ レイヤー数が多くなり、データ ストレージによるクレジット消費も増加してしまいます。
例を見ていきましょう。熊本県の人口統計のメッシュデータを持っていて、男性の人口分布と女性の人口分布という 2 つのマップを ArcGIS Online で扱いたい場合について考えていきます。ArcGIS Pro で「熊本県における男性の人口分布」、「熊本県における女性の人口分布」という 2 つのマップを作成し、ArcGIS Online に共有したと想定します。
この場合、ArcGIS Online の保有フィーチャ数はどうなっているでしょうか?実際に ArcGIS Online のマイ コンテンツから見てみましょう。
フィーチャ レイヤーが 2 つ保有されてしまっていることがお分かりいただけるでしょうか?
以上のように、ArcGIS Pro で主題ごとのマップを作成し、それを ArcGIS Online に共有した場合、保有するフィーチャ レイヤー数が増えてしまうという問題が生じます。
この問題に対処し、レイヤー数を減らすためには、同じジオメトリ タイプ、主題のデータを 1 つにまとめたものを [Web レイヤーとして共有] するという方法があります。同一マップに複数のレイヤーが存在し、個別にArcGIS Online に共有したい際は、[コンテンツ] ウィンドウで共有したいレイヤーを右クリック → [共有] → [Webレイヤーとして共有] を行います。
今回の例であれば、「男性の人口分布」、「女性の人口分布」のそれぞれをフィールドとして含むレイヤーを ArcGIS Online に共有することでフィーチャ レイヤー数を減らすことができます。
共有済みのフィーチャ レイヤーから、複数のマップを作成することができます。
手順は、Map Viewer でレイヤーを表示し、[シンボル] → [属性の選択] で目的のフィールドを選択します。任意のスタイルに変更した後、[マップの保存] でマップを保存します (参照: Map Viewer の基本操作)。
以上のように、1 つのレイヤーから目的に応じた複数のマップを作成することで、ArcGIS Online で保有するレイヤー数を少なくすることができます。
マップ作成の際にクレジット消費を抑える方法を解説しましたが、いかがだったでしょうか?クレジット消費を抑える方法を知ることで、ArcGIS Online のクレジットをより有意義に利用していただければ幸いです!
また、本記事の続編として「ArcGIS Online のサービス クレジット消費を抑えるために – ArcGIS Pro でのタイル作成および解析のコツ」についても後日公開させていただきますのでそちらもお楽しみにしてください。
ArcGIS 活用ウェビナー「ArcGIS のサービス クレジットの消費を抑えて操作を行うには?役立つテクニックやコンテンツをご紹介!」を10 月 1 日 (金) 15:00 – 16:00 に行います。
本ブログ記事で紹介した内容や、後編記事「ArcGIS Online のサービス クレジット消費を抑えるために – ArcGIS Pro でのタイル作成、解析のコツ」で紹介する内容、組織サイト運用のコツなどが盛り込まれた内容となっております。ウェビナーではデモを実演しながらクレジットを節約するコツをご紹介していくため、さらに分かりやすくなっていることと思います。
なお、事前質問も受け付けておりますので本記事をお読みになって分からなかった箇所や、サービス クレジットに関する疑問などもご質問下さい。
参加費は無料となっておりますので、ぜひお気軽にご参加ください。
詳細については「ArcGIS のサービス クレジットの消費を抑えて操作を行うには?役立つテクニックやコンテンツをご紹介!」をご参照ください。
■関連リンク
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・ ArcGIS Online のサービス クレジットを賢く使う 4 つのコツ