2022 年 1 月 17 日に、リアルタイム防災気象情報を提供する ESRIジャパン データコンテンツ Online Suite 気象オンラインサービス (ゲヒルン版) に推計震度分布図を追加しました。本記事では、普段、ニュース等で目にすることの多い、市町村別の震度分布に比べて推計震度分布図を用いることで、どの-ようなメリットがあるかをご紹介します。
推計震度分布図とは?
震度計で観測された震度をもとに、地表付近の地盤の増幅度 (地表付近における揺れの増幅を示す指標) を使用して、1km メッシュ単位で震度を推計し、面的に表現したものです。原則、震度 5 弱以上を観測した地震について、震度 4 以上の分布が気象庁から提供されます。気象オンラインサービス (ゲヒルン版) では、ゲヒルン株式会社から提供を受け次第、リアルタイムに ArcGIS 上で利用可能なフィーチャ サービスとして提供します。
観測震度との違い
気象庁が発表する震度は、気象庁や地方公共団体および国立研究開発法人防災科学技術研究所が全国各地に設置した震度観測点で観測したものです。また、ニュース等で目にすることの多い、市町村震度は市町村内の震度観測点のうち最大震度を表しているため、同じ市町村内でも震源からの距離や地盤に関する条件の違いで、観測される震度が異なる場合があります。
具体例として、2021 年 10 月 7 日に千葉県北西部を震源として、関東地方で最大震度 5 強を観測した地震を見てみましょう。市町村別の震度分布では、埼玉県宮代町や川口市・東京都足立区などが震度 5 強となっており、市町村全域が震度 5 強になったような印象を受けると思います。しかし、観測地点ごとに震度を確認すると、同じ市町村内でも震度 4 の地点が存在するなど、震度観測点ごとに震度が異なることが分かります。
また、宮代町笠原では震度 5 強を観測していますが、直線距離で約 1.2km しか離れていない杉戸町清池では、震度 4 であり、隣接した震度観測点でも観測される震度が大きく異なる場合があることが分かります。この違いはなぜ発生するのでしょうか?
ArcGIS Living Atlas of the World に登録されている「主題図 土地条件図 数値地図25000(土地条件)(地理院タイル)」をもとに土地条件を重ね合わせてみると、その一因が明らかになります。
宮代町笠原の震度観測点は「盛土地・埋立地」の土地条件に位置している一方、杉戸町清池では「自然堤防」上に位置しています。一般的に、自然堤防は洪水時に運ばれた砂等が堆積してできる微高地であるため、埋立地などの軟弱地盤に比べて比較的安定した地盤となります。この地震は、震源の深さが約 80km と比較的深かったこともあり、地盤の揺れやすさの違いが顕著に表れた例と推測されます。
主題図の凡例はこちら
推計震度分布図では、気象庁が上記のような地盤による違いを「地盤の増幅度 (地表付近における揺れの増幅を示す指標)」として組み込み 1km メッシュ単位で震度分布を推計しています。このデータを活用することで、被害状況をより確からしい震度分布をもとに把握し、災害発生時の初動対応を迅速化することができます。推計震度分布図をご利用の際は、「利用に際しての留意事項」もご確認ください。
ArcGIS × 推計震度分布図の活用例
自社拠点・自社顧客との重ね合わせ
本サービスでは、推計震度分布図をポリゴンのフィーチャ レイヤーとして提供するため、自社拠点や自社顧客と重ね合わせるだけでなく、空間的に検索・抽出することができます。たとえば、震度 5 弱以上の揺れに見舞われたと推定されるエリアと重なる拠点や顧客を抽出し、発災後に被害や影響の確認が必要な対象を迅速にリストアップすることができます。
推計震度別の人口統計を確認
ArcGIS Online には、国勢調査データやインフォグラフィックスと呼ばれる商圏レポートが標準で搭載されています。地震発生後に大きな揺れに見舞われたエリアをクリックすることで、迅速にそのエリアの人口総数や年代別人口などを把握することができるため、発災後の初動対応に活用されることが期待できます。
今後も ESRIジャパン データコンテンツ Online Suite にさまざまなデータを拡充してまいりますので、どうぞご期待ください。