その1- ArcGIS GeoBIM のスケジュール機能の概要
プロジェクト管理において、プロジェクトで発生する作業のことを「アクティビティ」と呼ぶことがありますが、ArcGIS GeoBIM では「スケジュール アクティビティ」として管理し、時系列で表示ができます。スケジュール アクティビティを GIS フィーチャおよび BIM データに接続することで、プロジェクトや問題の発生場所だけでなく、発生時期も把握することができます。ArcGIS GeoBIM では、スケジュール期間、GIS および BIM のプロジェクト データをすべて 1 か所で表示することができ、スケジュール データを活用し、複数の GIS フィーチャにリンクし、すべてをプロジェクトの BIM ドキュメントと相互参照します。ArcGIS GeoBIM は、GIS および BIM データの空間的および時間的コンテキストを表示し、プロジェクトやアセット データを関係者と共有する方法に新たな機会をもたらします。
スケジュール 概要
ここで紹介する操作を行うには、以下のライセンスが必要です。
・ArcGIS GeoBIM (GeoBIM エクステンションと Creator ユーザー タイプが必要です)
・ArcGIS Online (住所または緯度経度座標を含むスケジュール データのインポート用 (「Generating ArcGIS GeoBIM Schedule Polygons Using ArcGIS Pro」を参照)
・ArcGIS Pro (GIS フィーチャを含むスケジュール データをインポートする場合)
また、以下のデータ ソースも必要です。
・ArcGIS GeoBIM プロジェクト
ArcGIS GeoBIM プロジェクトでは、スケジュール データを利用します。
ArcGIS GeoBIM プロジェクトを編集する権限が必要です。
・スケジュール データ
ArcGIS Pro を使用して任意のソースからインポートされたスケジュール データ。(「Generating ArcGIS GeoBIM Schedule Polygons Using ArcGIS Pro」を参照)
・ArcGIS Online の Web マップまたは Web シーン
マップまたはシーンの 1 つ以上のフィーチャ レイヤーは、フィールドの結合を介してスケジュール データと関連している必要があります。 (詳細は以下の GIS データを参照してください)
・ArcGIS GeoBIM アプリ
ArcGIS GeoBIM アプリは、スケジュール データを活用する同じプロジェクト内に存在する必要があります。
ArcGIS GeoBIM アプリのソース マップまたはシーンは、(上記の) スケジュール データに関連するものと同じものである必要があります。
スケジュール アクティビティ
すべてのスケジュール アクティビティは、GeoBIM プロジェクト サービス内のスケジュール プロジェクト レイヤーに保存されます。スケジュール プロジェクト レイヤーには、以下のフィールドがあります。
Display Name | Field Name | Type |
OBJECTID | OBJECTID | ObjectID |
GlobalID | GlobalID | GlobalID |
Id | Id | String |
Name | Name | String |
Status | Status | String |
Task Type | TaskType | String |
Parent Project | ParentProject | String |
Planned Start Date | PlannedStartDate | Date |
Planned End Date | PlannedEndDate | Date |
Actual Start Date | ActualStartDate | Date |
Actual End Date | ActualEndDate | Date |
Total Cost | TotalCost | Double |
Material Cost | MaterialCost | Double |
Labor Cost | LaborCost | Double |
Equipment Cost | EquipmentCost | Double |
Subcontractor Cost | SubcontractorCost | Double |
Comments | Comments | String |
Last Modified | LastModified | Date |
Creation Date | CreationDate | Date |
Creator | Creator | String |
Edit Date | EditDate | Date |
Editor | Editor | String |
このプロジェクト レイヤーは空間的および時間的な性質を持ち、1 つのポリゴン フィーチャは、1 つのスケジュール アクティビティを表します。表示したいアクティビティの情報はこの一覧にある情報にあらかじめフィールドや属性値を整理しておくことが必要です。
スケジュール レイヤー内のポリゴンの形状は、緯度経度や住所を使った作業現場の位置などユーザーが定義することが可能で、また以下に定義するように凸包ポリゴンを使用するデフォルト オプションを選択することもできます。ArcGIS GeoBIM では、スケジュール データに対して任意のポリゴン形状を使用できます。
GIS データ
アクティビティは、多くの場合、空間的な特徴と関連しています。スケジュールは、BIM プロジェクトと時間的に関連しており、プロジェクト自体が空間環境内に位置しています。ArcGIS GeoBIM では、アクティビティを多対多の関係で GIS フィーチャにリンクすることで、これらの関連付けをモデル化できます。1 つのアクティビティは、アクティビティに含まれる作業範囲に応じて、マップまたはシーン内の複数のレイヤーと、レイヤーを持つ複数のフィーチャにリンクされる場合があります。同様に、シーン内のフィーチャは、それぞれがプロジェクトの異なる時間的側面 (計画、建設、検査など) をカバーする複数のアクティビティに関連付けられる場合があります。
これらの関連付けはすべて ArcGIS GeoBIM では結合ルールを使用してモデル化されています。結合ルールは、スケジュール レイヤーのフィールドを、ユーザーが提供する GIS のマップまたはシーン レイヤーのフィーチャ フィールドに関連付ける、ユーザー定義のルールです。複数の結合ルールを作成することで、1 つのアクティビティを複数の GIS マップまたはシーン レイヤーにリンクすることができます。以下に、いくつかの結合ルールの例を示します。
GeoBIM プロジェクトのスケジュール フィーチャ ルールも、結合ルールの一例です。これらは、スケジュール レイヤーのアクティビティを GeoBIM アプリ内のユーザー定義の GIS フィーチャに接続します。
必要であれば、ユーザー定義の結合ルールを使用して、スケジュール プロジェクト レイヤーの凸包ポリゴンを作成することもできます (下記参照)。
スケジュールにおける凸包ポリゴン
ユーザー定義の結合ルールを使用して、スケジュール レイヤーのポリゴンを作成することができます。この場合、ポリゴンは通常、そのアクティビティにリンクしているマップまたはシーンのすべてのフィーチャを囲む凸包として定義されます。これらの凸包は、レイヤー間の結合ルールの属性フィールドを決定すると、インポート プロセスで自動的に作成できます(「Generating ArcGIS GeoBIM Schedule Polygons Using ArcGIS Pro
」を参照)。
例として、スケジュール レイヤーに 2 つの結合ルールを定義したユーザーを考えてみましょう。このルールは、送電線プロジェクトのタワー (ポイント) とスパン (ライン) を描いた 2 つのユーザー定義 GIS レイヤーに、スケジュール レイヤーをリンクします。ArcGIS Pro でスケジュール データをインポートすると、スケジュール レイヤーの各アクティビティに凸包ポリゴンが作成され、そのアクティビティにリンクされているすべてのタワーとスパンが包含されます。インポート後、タワー、スパン、スケジュールを地図上に表示すると、1 つのアクティビティに対するポリゴンは以下の画像のようになります。
ここでは 18 本のタワーと 1 本のスパンが、1 つのアクティビティの空間的範囲を表す凸ポリゴン (青色) に囲まれています。もしこれらのタワーやスパンが複数の予定されたイベントに関与しているのであれば、この領域に複数のアクティビティ ポリゴンが重なっていることが予想されます。
リンク ルール
スケジュール プロジェクト レイヤーとは別に、ユーザー定義の結合ルールを使用して、GeoBIM プロジェクト内のリンク ルール テーブルを作成します。リンク ルールの一種は、スケジュール フィーチャ ルールと呼ばれ、スケジュール レイヤーの特定のアクティビティが別のマップまたはシーン レイヤーのフィーチャにどのように関連するかを記述するために使用されます。例えば、次のようなスケジュール フィーチャ ルールがあります。
{
“scheduleKey”:”Id”,
“featureKey”:”CONSTRUCTION_GROUP”,
“resourceId”:0,
“layerId”:”123″,
“layerUrl”:”https://example.com/My/Feature/Layer/”,
“layerName”:”Spans”
}
アクティビティの Id フィールドとスパン フィーチャ レイヤーの CONSTRUCTION_GROUP フィールドを、表示されている ID と URL で結合します。 GeoBIM プロジェクトでは、多くのスケジュール フィーチャ ルールを持つことができ、 これらはすべてユーザーが作成、管理します(「Linking Schedule Data to GIS Features」を参照)。
BIM ドキュメント
スケジュール プロジェクト レイヤーを作成し、関連するリンク ルールを定義すると、ArcGIS GeoBIM アプリを使用してアクティビティに関連するすべての空間フィーチャを調べることができます。このアプリの [アクティビティに関連するフィーチャの表示] 機能では、スケジュール フィーチャ ルールを使用して、アクティビティに関連するすべてのフィーチャを一度に選択します。そこからリンク エクスプローラーを使用して関連する各フィーチャを順次確認し、BIM ドキュメント ビューアーを使用してフィーチャの BIM ドキュメントを表示することができます (BIM ドキュメント ビューアーは、リンク ルール テーブルに格納されているフィーチャ リンク ルールと BIM ドキュメント ルールを使用して、関連ドキュメントを検索します)。[アクティビティに関連するフィーチャの表示] ワークフローと ArcGIS GeoBIM スケジュール データとの関連性は、以下のとおりです。
まとめ
ArcGIS GeoBIM は、スケジュール アクティビティ、GIS、BIM プロジェクト データを 1 つの場所にまとめることを可能にします。GeoBIM は、ArcGIS Pro で作成したスケジュール データを活用し、カスタム リンク ルールによってスケジュール アクティビティをユーザー定義の GIS フィーチャ マップやシーンにリンクし、関連する GIS フィーチャを通じて、ユーザーに関連する BIM ドキュメントにリンクさせることができます。ArcGIS GeoBIM を使用すると、さまざまなソースからアセットやプロジェクト データを 1 か所に集めて関係者と共有することができます。
この記事は、Introduction to Schedules in ArcGIS GeoBIM を ESRIジャパンが翻訳および加筆したものです。 GeoBIM の応用的な活用法をご紹介しましたが、基礎的な利用法は ArcGIS GeoBIM ビギナーズ ガイドや ArcGIS GeoBIM プロジェクトの作成をご参照ください。