【WhereNext】EV の航続距離における課題を解決するための新たな取り組み

2023 年 1 月、米国のバイデン政権は、2030 年までに全米に 50 万台の電気自動車 (EV) 充電器を設置するという目標に向けた取り組みを加速するための新たな補助金を発表しました。この投資ラウンドにおいて 6 億 2300 万ドルが投じられ、2021 年の超党派によるインフラ投資・雇用法の一環として、プエルトリコを含む 22 州の 47 の EV インフラ プロジェクトを支援します。

多くの補助金は低所得地域や地方地域などの充電アクセスに不利な地域のギャップを埋めるために使用されます。補助金の対象地には、古くからの輸送経路、駅、歴史的黒人大学、部族の土地、図書館が含まれます。

地域社会のリーダーとして EV インフラストラクチャを専門とする企業と連携する際には、充電ステーションのデータを追跡・分析して協力を促進し、運用とメンテナンス状況を監視するためのシステムが必要です。このような EV 事業を推進する人々にとって、地理情報システム (GIS) が目的を達成するために有効な選択肢となっています。

EV ステーションのサイト選定プロセスではスマート マップが人口統計データと交通パターンの関係性を捉え、ステーションの採用効果が高い場所を抽出します。GIS ダッシュボードは地域コミュニティの組織、EV ステーションの事業者、政府の関係者に共通の情報源を提供し、認可プロセスを迅速化して遅延によるコストの増加を抑制します。充電器が稼働すると Web からアクセスできるマップを活用して、近くの EV ステーションへのドライバーの誘導やステーションの使用傾向の可視化、メンテナンス業務の管理を行うことができます。

図書館での充電: 新しい EV インフラストラクチャ

補助金プログラムによって資金提供されるプロジェクトの一つに、カリフォルニア州コントラコスタ郡にある 15 の図書館を支援する 1500 万ドルのイニシアチブがあります。地域のコミュニティ センターとして機能する図書館は充電ステーションを公平に配置するための理想的な場所の一つです。しかし EV 施設を設置する際には他にも様々な要素を考慮する必要があります。GIS はそのような検討を行い最終的な決定を導くために活用することができます。

図書館の位置はあらかじめ決まっていますが、プランナーは充電ステーションを配置する際に地理的な要素を検討する必要があります。例えば、駐車場から電源までの距離が長い場合、施工費用が増加し、また充電ステーションを接続するために必要な電線などの設備の種類にも影響を与える可能性があります。GIS を活用することで、施工前にこのような位置関係に基づくコストや設計要因を請負業者が評価できるように支援することができます。

計画が進むにつれて、プロジェクト リーダーはダッシュボードを活用して地元の電力事業者と対話し、地域の電力供給網が必要な充電容量を確保できることを確認することができます。そのような情報は、どのレベルの充電設備が設置されるべきかを決定するためにも役立つかもしれません。スマート マップはその他にも、環境規制、部族法、公正な賃金基準がプロジェクトにおいて守られていることを確認するための視覚的なリソースを提供し、コンプライアンスのプロセスを合理化することができます。

最終的に充電ステーションの設置が完了すると、プロジェクトの管理者は GIS を活用して電力やガスの事業者が自分たちの設備を管理するように、充電ステーションを監視しメンテナンスすることができます。また GIS の分析によっては地域の需要傾向が明らかになり、追加の充電設備の設置が必要となる可能性に気が付くことができるかもしれません。

EV ライフサイクルのすべてのフェーズで重要となる位置情報

補助金の対象となった別の EV インフラストラクチャ プロジェクトであるシアトルとタコマの港での電気トラック充電においても位置情報 (ロケーション インテリジェンス) が活用されました。計画段階では、GIS はトラックの位置情報データに基づいて、必要な充電ステーションの位置と数を示すことができます。またスマート マップは、トラック会社、建設業者、および港の管理者の円滑なコミュニケーションのために必要な情報を提供することができます。そして運用フェーズにおいても、例えば昨今の熱波による電力網への影響を考慮した包括的な運用のための管理機能として GIS を活用することができます。

補助金の交付により米国の EV 充電ステーションの基盤構築は大きな一歩を踏み出しました。補助金を活用し実装を担うプロジェクト リーダーに、GIS 技術はプロジェクトのライフサイクル全般にわたってプロジェクトの成功に欠かせない洞察を与えることができます。

この記事は WhereNext のグローバル版に掲載されたものです。
原文: New Grants Aim to Tame Range Anxiety for EV Owners