ArcGIS Maps SDK for JavaScript の最新バージョン 4.30 をリリースしました。
以下では、ArcGIS Maps SDK for JavaScript バージョン 4.30 の主な新機能・機能拡張をご紹介します。
目次
- 1 バージョン 4.30
- 1.1 コンポーネントを使って Web アプリケーションを構築
- 1.2 フィーチャ テーブルの関連レコードとカスタム カラム
- 1.3 インタラクティブな 3D 可視領域の解析
- 1.4 3D シーンでのベクター タイル レイヤーのラベルの方向
- 1.5 3D での時間のサポート
- 1.6 3D モデルの利用
- 1.7 パフォーマンスの向上
- 1.8 カタログ レイヤー
- 1.9 フルモーション ジオリファレンス ビデオのサポート (ベータ版)
- 1.10 フィーチャ サイズの参照サイズの設定
- 1.11 ラベルの配置とポップアップ
- 1.12 時間範囲に基づくレイヤーの可視性
- 1.13 3D での方向付き画像
- 1.14 ナビゲーションのアニメーション
- 1.15 ArcGIS Online でホストされるカスタム印刷レイアウト(ベータ版)
- 1.16 Expand ウィジェットのモバイル端末での操作性の向上
- 1.17 計測とスナップ
- 1.18 編集操作の更新
- 1.19 より多くの 2D ベクトル シンボル
- 1.20 もっと詳しく
- 2 関連リンク
バージョン 4.30
コンポーネントを使って Web アプリケーションを構築
マップとコーディング コンポーネントからベータ版が外され正式版としてリリースされました。これらのコンポーネントはアプリのユーザー エクスペリエンスを構築するために推奨される方法です。
昨年 10 月に最小限のコードで Web アプリケーションを構築するためのマップ コンポーネント、コーディング コンポーネント、そして 2 月にはチャート コンポーネントで構成されるビルド済みの UI コンポーネントのベータ版を発表しました。コンポーネントは、ArcGIS Maps SDK for JavaScript のコア API を <arcgis-map></arcgis-map> のような再利用可能なカスタム HTML 要素に拡張する標準ベースの Web コンポーネントです。
新規および更新されたリソースを使用して、コンポーネントを使用したアプリケーションの構築方法を学び始めましょう。
フィーチャ テーブルの関連レコードとカスタム カラム
関連レコードのサポート、カスタム カラムの導入、選択とハイライトの操作性の向上、パフォーマンスの高速化、レスポンシブ デザインの改善など、フィーチャ テーブルにとって大きなリリースとなりました。
関連レコード
relatedRecordsEnabled を true に設定することで、関連レコードの表示と編集 (編集可能なもの) が有効になります。
カスタム カラム
フィーチャ テーブルに表示するカラムの内容を完全にカスタマイズできるようになりました。カラムはレイヤーの属性に基づいて作成することも、レイヤーの属性から独立して、テーブルに含めたいコンテンツを含む仮想的なカスタム カラムとして作成することもできます。例えば、カスタム コンポーネントを統合したり、Arcade を使用して値を計算したり、特定のユース ケースに基づいてコンテンツをフォーマットしたりすることができます。カスタム属性は、文字列、数値、または HTML 要素(Calcite コンポーネント)を返す formatFunction をカラムに定義することで実現できます。
また、テーブルのヘッダーに表示されるタイトルと説明を設定することもできます。
選択とハイライト
このリリースでは、選択、フィーチャのハイライト、テーブルとマップの連携というコンセプトに基づいて設計されています。
パフォーマンスの向上
カラムは遅延読み込みが行われます。つまり、多くの属性を持つレイヤーを扱う場合、アプリケーションのパフォーマンスを維持するために、テーブルが水平方向にスクロールされるときにカラムが読み込まれます。
レスポンシブ デザイン
フィーチャ テーブルは、Calcite コンポーネントを使用するように内部的な更新が行われ、より良いアクセシビリティとレスポンシブ デザインが可能になりました。autoWidth、flexGrow、width など新しく追加されたプロパティにより、カラムのサイズと応答性をより制御できるようになりました。
インタラクティブな 3D 可視領域の解析
新しく追加されたインタラクティブな可視領域解析ツールを使用して、不動産物件から見えるエリアや重要なランドマークの視認性を評価できます。インタラクティブまたはプログラムでオブザーバーを配置し、視野角を調整して、クライアント側の視界やドームを作成できます。
3D シーンでのベクター タイル レイヤーのラベルの方向
ベクター タイル レイヤーのラベルとシンボルは、シーン ビューのカメラの向きに応じて回転し、シンボルの認識とテキストの読みやすさを向上させます。直線的なオブジェクト(道路や河川など)のラベルやシンボルは、カメラの向きに応じて反転され、そのほかのオブジェクトはカメラの向きが変わってもビュー内で垂直を保つように回転されます。
3D での時間のサポート
シーン ビューでタイム スライダーを使用して、時間の経過に伴う進捗を視覚化します。3D オブジェクト、ポイント、ボクセルのシーン レイヤーが時間を認識するようになり、view.timeExtent に従ってフィルタリングされます。
3D モデルの利用
3D モデルのアップロードのベータ版が終了
シーン レイヤーの編集による 3D コンテンツのアップロードと共有は、バージョン 4.27 でベータ版として初めて導入されました。それ以来、パフォーマンスを改善し、ローカルおよびグローバルな投影をサポートし、メッシュ ジオメトリ API をまとめました。様々なフォーマットから 3D モデルをアップロードし、Editor ウィジェットを使用して配置する機能は ArcGIS Maps SDK for JavaScript と Scene Viewer のベータ版が終了し、正式版となりました。
3D メッシュを glTF にエクスポート
シーン レイヤーからメッシュ ジオメトリを検索し、3D モデルを glTF にエクスポートし、エクスポートしたメッシュを専門的な 3D モデリング ソフトウェアで使用することができます。これにより、特に都市計画や不動産業界において、高度なモデリングを伴う共同的なワークフローが可能になります。
パフォーマンスの向上
より早く、よりスムーズなレイヤー リスト
バージョン 4.30 ではレイヤー リストのレンダリングがバージョン 4.29 に比べて最大 2.5 倍高速になりました。また、多くのレイヤーを含むレイヤー リストを使用するアプリで、より高いフレーム / 秒(fps)を確認しています。165 のレイヤーを含むテスト アプリでは、専用のテスト環境において、パンおよびズーム時のフレーム レートがバージョン 4.29 の約 24 fps からバージョン 4.30 では約 45 fps に向上しました。
FeatureLayer のパフォーマンスの向上
マップ ビューのロケーション間のアニメーション処理を最適化しました。現在では、アニメーションの目的地のビュー ポイントにあるフィーチャ タイルのみがフェッチされ、リクエスト数が大幅に削減されています。例えば、カリフォルニア州とオレゴン州のブックマーク間を移動する場合、バージョン 4.30 では、バージョン 4.29 と比較して 50% 以上リクエスト数が減少しています。この機能強化により、効率が向上し、全体的なユーザー エクスペリエンスが向上しました。
カタログ レイヤー
新しく追加されたカタログ レイヤーは、2D と 3D のレイヤーのコレクションを視覚化、検索、フィルタリングすることができます。一見するとグループ レイヤーのように見えますが、地図上の各ポリゴン フィーチャがカタログ レイヤーのフットプリントを表すフィーチャ サービスによって支えられています。さらに、カタログからレイヤーのコンテンツを直接プレビューすることも可能です。カタログのコンテンツはフィーチャ サービスによってバックアップされているため、カタログは新しいレイヤーで定期的に更新され、動的に最新のレイヤー コレクションを維持することができます。フットプリントのメタ データを使用すると、属性、ジオメトリ、時間など、フィーチャ レイヤーに適用できるあらゆるものに基づいてフィルターを適用できます。
カタログ レイヤーはマップまたはシーンのコンテンツにレイヤーの大規模なコレクションが含まれている場合、組織が新しいデータを迅速に作成する場合、またはテーマ別に整理されたデータを共有する場合に最適です。
新しく追加されたカタログ レイヤー リストは、カタログ レイヤーを表示し、対話的に操作する方法を提供し、レイヤー リストと統合します。
フルモーション ジオリファレンス ビデオのサポート (ベータ版)
新しく追加されたビデオ レイヤーは、ビデオ サーバーからの録画済みまたはライブ ストリーミングのビデオ フィードを表示します。ビデオ レイヤーを使用する開発者は、地図上にジオリファレンスされたビデオを表示し、新しく追加されたビデオ プレイヤーで再生を制御できます。ビデオ プレイヤーでは、コントロール操作、時間および継続時間の表示、グラフィックスの色のカスタマイズなどが可能です。どちらも今回のリリースではベータ版です。
フィーチャ サイズの参照サイズの設定
スマート マッピングに、参照サイズに対してデータ値に比例した大きさのドットを表示する参照サイズ テーマを追加しました。これは、特にジオメトリが重ならないグリッド化されたデータセットに対して、密度を効果的に視覚化することができます。参照サイズを色と組み合わせて使用すると、複数の変数の種類や密度を表示できます。
Map Viewer で参照サイズのシンボルを作成し、それを Web マップに保存してからアプリケーションで読み込むことも、スマート マッピングのサイズ レンダラー作成メソッドを使用してコードで直接生成することもできます。
ラベルの配置とポップアップ
ポリライン ラベルの配置オプションの追加
ポリラインに沿ったラベルは、ラインの上または下に揃えることができます。将来のリリースでは、さらにオプションが追加される予定です。
ラベルのクリックでポップアップを表示する
フィーチャのラベルをクリックしてポップアップを表示することができるようになりました。ポップアップは、フィーチャまたはラベルがクリックされた位置に対応した場所に表示されます。
時間範囲に基づくレイヤーの可視性
新しく追加された visibilityTimeExtent プロパティを使用することで、すべてのレイヤー タイプで、設定された時間範囲に基づいてレイヤーの可視性を制御できます。これは、タイル レイヤー、統合メッシュ、グラフィックス レイヤーなど、時間情報を含まないレイヤーを扱う場合に特に便利です。
例えば、特定の期間の画像に一定の時間範囲を設定することで、ユーザーは時間的な背景を知ることができ、特定の時間枠や事象を中心とした、的を絞った分析が可能になります。下の例では、可視性の時間範囲を持つ複数のグラフィックス レイヤーにより、ユーザーは、タイム スライダーのハンドルの位置に応じて変化する山火事周辺に関するテキスト情報のグラフィックを確認することができます。
3D での方向付き画像
方向付き画像レイヤーは Z 値付きで公開することができ、3D シーンでそれらを視覚化し、操作することができます。方向付き画像ビューアーで画像の視点を調整すると、画像範囲の 3D ジオメトリが地図上に可視化されます。
ナビゲーションのアニメーション
MapView.goTo() メソッドのアニメーション動作が大幅に改善されました。新しく追加されたアニメーション スタイルでは、2 つの場所間のより地理的な状況を伝える弧のような動きが作成されます。さらに、固定した時間をアニメーション時間として使用するのではなく、出発地と目的地間の距離に基づいてナビゲーション アニメーションの理想的な時間を動的に計算する設定がデフォルトとなりました。持続時間やその他のアニメーション設定は、開発者が上書きして変更できます。
この新しい動作はブックマークと検索、ロケーション間の移動、ロケーション間の移動を伴うその他のワークフローにも適用されます。
補足
アニメーションによっては前庭運動障害を持つ人に不快感を与える可能性があるため、アニメーションはすべての人に適しているとは限りません。ArcGIS Maps SDK for JavaScript の 2D MapView ナビゲーションのアニメーションを無効にするには、デバイスまたはブラウザーの設定で prefers-reduced-motion オプションを設定してください。様々な動きを持つアプリケーションを構築する際に、より多様なユーザーをサポートする方法については、アクセシビリティ ガイドをご覧ください。
ArcGIS Online でホストされるカスタム印刷レイアウト(ベータ版)
ArcGIS Online でホストされているカスタム印刷テンプレートを使用する機能など、Print ウィジェット / コンポーネントが大幅に強化されました。印刷には、印刷出力の境界をプレビューできる [印刷範囲を表示] する機能も新たに追加されました。
Expand ウィジェットのモバイル端末での操作性の向上
Expand ウィジェットは内部的に Calcite コンポーネントを使用するように更新され、モバイル デバイスの操作性が向上しました。デフォルトでは Expand はブラウザーのサイズに基づいて “floating” と “drawer” のレイアウトをレスポンシブに切り替えます。新しく追加された placement プロパティは、ウィジェットが展開されたときのポップ オーバーの配置を制御できます。
計測とスナップ
2D の面積と距離の計測がスナップに対応し、デフォルトで有効になりました。CTRL キーを押すことで、一時的にスナップを無効にすることができます。なお、3D の計測ではすでにサポートされています。
編集操作の更新
座標入力とツールチップの改善
ツールチップに座標の情報を入力またはコピー アンド ペーストすることで、フィーチャを正確に編集できます。この新しく追加された入力方法では、ポイント ジオメトリやライン、ポリゴンの頂点を作成および更新する際に使用できます。座標入力はメッシュ ジオメトリをアップロードまたは編集する際に、建物の正確なジオリファレンスも可能にします。
サブタイプのサポート
編集およびフィーチャ フォーム ウィジェットでサブタイプを含むフィーチャ レイヤーの編集が可能になりました。
フィーチャ フォームのカスタム テキスト書式
フィーチャ フォームにテキスト要素を表示する機能が追加され、フォームにカスタムの読み取り専用のコンテンツを追加できるようになりました。
より多くの 2D ベクトル シンボル
Esri Web Style Symbols (2D) ガイドに、3,000 以上の 2D ベクトル シンボルが追加されました。これらのシンボルには、政府機関、景観、建物、矢印などのシンボルや、ArcGIS Online および ArcGIS Pro のシンボル UI ですでに利用可能なシンボルが含まれています。選択したシンボルのスタイル名とシンボル名を参照することで、アプリでこれらのシンボルを使用できます。
もっと詳しく
このブログはバージョン 4.30 でリリースされた機能のほんの一部を紹介しています。この他にも凡例でのフィルターのサポート、ルート レイヤーのポップアップ テンプレートの定義、3D でのインタラクティブなメディア レイヤーの配置など、様々な機能が追加されています。詳しくは、リリース ノートと最新のサンプルをご覧ください。
関連リンク
- 米国 Esri 社 ArcGIS Blog
- ESRIジャパン Web サイト
- 米国 Esri 社 Web サイト