ArcGIS Business Analyst Web and Mobile Apps (2024 年 11 月アップデート) の新機能

アイキャッチ画像 (ArcGIS Business Analyst)

 商圏分析・エリアマーケティングに特化したクラウド型 GIS ソリューション ArcGIS Business Analyst Web and Mobile Apps (以下、BA Web)が 2024 年 11 月 12 日 (アメリカ時間) (2024 年 11 月 13 日 (日本時間)) にバージョンアップしました。本記事では、本バージョンの新機能を紹介します。

新機能・機能追加

ベンチマーク比較機能

 比較レポートの後継機能として、ベンチマーク比較機能を追加しました。複数の商圏や標準区画内の統計データを集計し、結果に応じたマップ上での色分けやテーブル形式での表示、チャートでの対話的な比較が可能です。本機能は、BA Web Standard ライセンスでも利用可能です。

 本記事では、ベンチマーク比較機能を使って、沿線の人口が増加傾向にある「つくばエクスプレス」を例に、各駅周辺の人口統計的な特徴を比較してみます。

図 1 つくばエクスプレス路線図と 2015-2020 人口増減率 (%)

図 1 つくばエクスプレス路線図と 2015-2020 人口増減率 (%)

分析を開始するにあたって、まずは各駅から 1㎞ の円商圏を作成します。作成した商圏をベンチマーク比較機能で利用することで、簡単に人口統計を集計し、集計結果を比較できます。ここでは、人口総数・人口増加率・15 歳未満人口を集計し、将来の利用者増減傾向を分析してみます。集計結果を確認すると、たとえば、柏・流山エリアは人口増加率が特に高くなっているようです。

図 2 集計結果:テーブル

また、集計結果をバブルチャートで見てみましょう。たとえば、X 軸に人口増加率、Y 軸に 15 歳未満人口の割合、ドットサイズに人口総数を設定すると以下のように表示されます。

図 3 集計結果:バブルチャート

図 3 集計結果:バブルチャート

チャートを見ると人口増加率と 15 歳未満人口の割合に正の相関があることが分かります。人口総数をバブルの大きさで表しているため、人口増加率・15 歳未満人口の割合が共に大きい駅は、比較的人口総数が少なく、今後も人口増加の可能性があることが分かります。このようにベンチマーク比較機能を使用することで、各商圏内の統計データの集計、傾向等の分析が行えます。

目標物検索の強化

 キーワードやカテゴリ名などの複数条件を事前に設定したうえで検索できるようになりました。さらに、検索範囲をマップ上で変更した場合、マップ上での再検索が可能になりました。他にも、目標物の種類に応じて適用される「場所」スタイルの追加などを行いました。

スマート マップ サーチ機能の強化

 スマート マップ サーチ とは、マップ上で複数の条件を指定し、条件と一致するエリアを表示する機能です。本バージョンでは、条件との一致・不一致エリアのマップ上のスタイル (塗りつぶし、アウトライン) を変更できるようになりました。

その他

  • 結果パネルのテーブルで、1 ページあたりの表示行数を変更できるようになりました。あらかじめ設定された行数だけでなく、表示するページ数をカスタムできるようになり、行数が多いデータをスクロールせずに確認できるようになりました。
  • [マップ] タブ 内で使用できる全ての機能にリソース メニューを追加し、ヘルプ ドキュメントやビデオ、ガイド ツアーなどユーザーの操作に役立つリソースを参照しやすくなりました。
  • 組織内全てのメンバーとのプロジェクト共有防止を管理者側で設定できるよう強化しました。
  • Business Analyst Assistant (ベータ版) のガイド対象に、スマート マップ サーチとサイト作成のワークフローを追加しました。

データの新規追加・更新

 BA Web では、オンラインで提供する、世界 170 以上の国と地域をカバーするグローバルな人口統計データを利用できます。ここでは統計データの更新情報を提供します。本データは、ArcGIS Online にサインインすることで、各種 ArcGIS 製品で利用できます。

人口統計データ

  • カナダ
    • 人口や収入、世帯数、移民等に関する Environics Analytics 製の Advanced データを更新
  • インド
    • 人口等に関する Esri India 製の Advanced データを更新
  • 南アメリカ・オセアニア
    • Michael Bauer Research 社製の南アメリカ 、オセアニア 18 の国・地域 のデータを 2024 年に更新
  • オランダ
    • オランダの 4orange 製データ提供を終了
    • 今後は Michael Bauer Research 製データを利用ください
  • アメリカ
    • 学区の境界データを追加

ビジネス

  • アメリカ
    • 商圏内の企業数、総売上高、総従業員数や、業種ごとの企業数等に関する Data Axle 製の Business Summary データを 2024 年 7 月版に更新

交通量

  • アメリカ
    • Kalibrate 製の USA Traffic data を 2024 年 Q3 版に更新

目標物 (POI)

  • アメリカ、カナダ
    • Data Axle 製 のデータを 2024 年 6 月版に更新
    • SafeGraph 製のデータを 2024 年 8 月版に更新
  • プエルトリコ
    • SafeGraph 製のデータを 2024 年 8 月版に更新
  • グローバル
    • Foursquare 製のデータを 2024 年 8 月版に更新

ヨーロッパ (ベータ版) データの新規追加

 ヨーロッパの計 39 か国の越境データを新たに追加し、国境を越えた地図の作成、レポートの出力および分析が可能になりました。人口、年齢別人口、世帯数、購買力指数、消費支出に関する 計 65 変数を収録しております。 ※ベータ版であるため、境界線や収録データは変更する可能性があります。

図 4 Major Subdivisions 2023 世帯数総数

インフォグラフィックス テンプレートの追加

グローバルやアメリカ、カナダ、インド (Esri India)、ヨーロッパ (ベータ版)、アイルランドで新たにインフォグラフィックス テンプレートを追加しました。

ArcGIS Business Analyst Mobile App

アメリカ国内における学区の境界データ (初等教育学区、中等教育学区、統一学区) ごとにインフォグラフィックス レポートやクラシック レポートを出力できるようになりました。

ArcGIS Experience Builder; Business Analyst ウィジェットの機能強化

プリセット モード、ワークフロー モードともに、運転時間作成時に移動モードを選択できるようになりました。

※交通量データにつきましては、一部の国・地域で利用できます。詳細はネットワーク解析の有効範囲をご確認ください。

図 5 移動モード

おわりに

 今回のバージョンアップでは、各商圏、区画内の統計データを簡単に比較できるベンチマーク比較機能を追加しました。また、各国の統計データ、目標物 (POI) データの更新を実施しております。ぜひ最新バージョンの BA Web and Mobile Apps をエリア マーケティングや各種業務にご活用ください。

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