破壊的な気象現象に直面し、一部の企業は事業が中断しないような場所を探したいと「気候の隠れ家」を求めています。しかし、そのような気候的に安定しており、安全な場所は本当に存在するのでしょうか?
ミシガン州経済開発公社(MEDC)は気候的に安全な場所はあると考えており、アメリカ中西部がそれだと考えています。企業経営者の多くも同様に考えているようです。MIT Technology Review InsightsとMEDCが最近実施した調査によると、4分の3の企業が天候リスクによる移転を検討したことがあり、また半数近くが中西部を全米で最も脆弱性の低い地域だと考えていることが明らかになりました。
小売業、金融サービス業、製造業など14業種にわたる300人の経営幹部が調査対象となりましたが、全員が物的損害、業務停止時間、保険料の増加、サプライチェーンの混乱など、天候による影響を挙げました。
こうしたリスクにもかかわらず、今後5年以内に事業移転を計画している企業はわずか6%でした。一方で4分の1近くはすでに移転しています。企業移転の候補地を評価する際、71%の経営幹部は天候計画リソースの有無を最優先の基準としています。
企業リーダーの間で支持を集めているリソースのひとつが科学的なリスク予測に基づいたビジネス・インテリジェンス・ツールである地理情報システム(GIS)です。
「気候の隠れ家」を科学的に検証する
専門家の中には、どの地域も気候リスクがあるとする者もいますが、経営者は慎重に検討することで、十分な情報に基づいた事業拡大や移転の意思決定を行うことができます。
多くの経営者は、GISやGISベースの予測リソースであるClimate Mapping for Resilience and Adaptation(以下CMRA)のようなものを活用しています。CMRAは、米国のあらゆる地域、都市、近隣における干ばつ、山火事、洪水の可能性について、科学的根拠に基づく予測をします。 中西部が「気候の隠れ家」になっているのではないかと考える経営幹部は、このようなロケーション・インテリジェンスを使って、その仮定の事実確認をすることができます。
150億ユーロ以上の資産を持つオランダのある投資会社は、GISを活用した予測を使って投資決定を下しています。デジタル地図を使って、経営者は不動産や地域が洪水、熱ストレス、山火事、その他の環境要因によってどのような影響を受けるかを確認することができるのです。 同社はまた、リスク・マップから得た知見をビル運営者との協議に活用しています。災害によるどのような影響がどのような場所で発生する可能性が高いかを知ることで、事業者は、壊滅的な被害をもたらす可能性のある気象現象に対するレジリエンスを構築することができます。
今日と明日のリスクのマッピング
経営幹部は、事業運営上の重要な場所における現在の危険を分析する際にも地図を使用しています。世界最大のホテル運営会社の1社は、GISベースの評価を使用して、施設に対する気象リスクやその他の脅威を分析しています。これらの洞察や分析を用いて、彼らは毎日、世界中の所有するホテルの運営上の調整を行っています。
米国では毎年1500億ドル近い損害が気象現象によってもたらされており、経営幹部が自社のビジネスを損失から守るための場所を探しているのは当然のことです。真の気候的に安全な場所は存在しないかもしれませんが、GISマップと分析は、どの場所がリスクが少ないかを経営幹部が判断するのに役立ちます。事業継続性を考える際に、ロケーション・インテリジェンスは、真の事業レジリエンスをもたらす戦略的調整の指針となります。