以前のブログ「ArcGIS Pro で定義クエリを使ってみよう」では、定義クエリーの基本をご紹介しました。今回は 6 月にリリースされた ArcGIS Pro 3.5 の定義クエリーの主な機能改善を 3 つご紹介します。
目次
定義クエリーとは
定義クエリーとは、フィーチャ レイヤーまたはスタンドアロン テーブルに対してクエリー (式) を定義し、フィルターをかけることで、マップ上の表示データを見やすくしたり、解析をしやすくしたりすることができる基本のデータ管理機能です。Basic ライセンス レベルで使用でき、表示フィルターと異なり、表示上だけでなく、データに対しての制御が可能です。
ArcGIS Pro 3.5 での機能改善
定義クエリーの UI 設定 (レイヤー プロパティ)
定義クエリーを設定するには、レイヤー プロパティから直接手動で設定する方法とジオプロセシング ツールを使用する方法の 2 種類があります。ArcGIS Pro 3.5 では、下図の通りレイヤー プロパティから設定する方法の UI が変更され、対話的に構築する「SQL デザイナー モード」と SQL 構文を記述する「SQL エディター モード」という名称になりました。機能自体の変更はありません。
オプションでのデフォルト クエリービルダーのモード設定
オプションの設定に、デフォルトのクエリー ビルダーの設定が登場しました。この設定を行うと、ArcGIS Pro のすべてのプロジェクトに適用され、毎回レイヤー プロパティのドロップダウンリストを表示して開かなくても、[新しい定義クエリー] ボタンをクリックするだけで指定したモードでクエリーを作成できます。また、この設定は定義クエリーの設定だけでなく、属性検索やクエリー テーブルの作成ジオプロセシング ツールなど他のクエリー設定機能でも適用されます。
空間項目の追加
ArcGIS Pro 3.5 では、新たに「空間項目の追加」機能が追加されました。レイヤーまたは空間範囲のジオメトリーを使用して、空間的な制限を設けることができます。
下記にフィーチャ レイヤーを使用した例を 1 つご紹介します。
- 下図では、神奈川県の自転車盗難ポイント、神奈川県の市区町村ポリゴンをマップに追加しています。自転車盗難ポイントの属性テーブルには施錠していたかどうかを表す属性 (施錠した・施錠せず) があり、マップ上ではそれぞれ黄色とピンク色で色分けされています。
自動車盗データ:「神奈川県警察オープンデータサイト」(神奈川県警察)を加工して作成https://www.police.pref.kanagawa.jp/tokei/hanzai_tokei/mesd0145.html
- 横浜市にズームし、今回注目する横浜市保土ヶ谷区のポリゴンを選択します。
- [コンテンツ] ウィンドウ →「自転車盗難ポイント」レイヤーを右クリック → [プロパティ] をクリックします。
- [レイヤー プロパティ] ダイアログ → [定義クエリー] をクリックし、[項目の追加] ドロップダウン リストから、[空間項目の追加] をクリックします。今回は、神奈川県市区町村ポリゴンを空間項目として追加します。※ここではデザイナー モードを使用しています。
- [空間項目ジオメトリー] ダイアログで [レイヤーの選択] になっていることを確認し、[次のジオメトリーを使用] で「神奈川県_市区町村」を選択します。
この時、「神奈川県_市区町村」の行にカーソルを合わせると、右側に 3 つのアイコンが表示されます。それぞれのアイコンをクリックすると、右側に「選択されたジオメトリー」にプレビューが表示されます。
- すべてのフィーチャ: フィーチャ全体を空間項目ジオメトリーとして適用します。
- 選択フィーチャ: 予めポリゴンを選択していた場合、選択されたフィーチャのみを空間ジオメトリーとして適用します。
- 現在ビュー内にあるフィーチャ: 現在マップ範囲に表示されているすべてのポリゴン形状を空間ジオメトリーとして適用します。
今回は、ステップ2 で「横浜市保土ヶ谷区」のポリゴンを選択しているので、「選択フィーチャ」をクリックし、[OK] をクリックします。
カスタム範囲の選択
[空間項目ジオメトリー] ダイアログで [カスタム範囲の選択] に切り替えると、すべてのレイヤーのデータの範囲や、選択範囲の値を指定して定義することができます。
- [レイヤー プロパティ] ダイアログで空間項目が設定されていることを確認し、[OK] をクリックします。
- 空間項目で定義した範囲のみの自転車盗難ポイントの施錠した (黄色)、施錠せず (ピンク) が表示されます。
空間項目の制限事項
・定義クエリーに追加できる空間項目は、1 クエリーに対して 1 つのみです。
・空間項目は、フィーチャ レイヤーではサポートされますが、他の特定のレイヤー タイプではサポートされません。
・クエリーに空間項目が含まれている場合、ArcGIS Online または ArcGIS Enterprise への Web レイヤー/Web マップの共有はできません。
また、空間項目と通常の項目のクエリーは組み合わせて使用することも可能です。
- 上記の空間項目に、[レイヤー プロパティ] ダイアログで通常の項目を追加し、「施錠関係」フィールド = 「施錠した」というクエリーを定義し、[OK] をクリックします。
- 横浜市保土ヶ谷区のポリゴンの範囲で施錠ありでの盗難されたポイント (黄色) のみが表示されます。
さいごに
ArcGIS Pro 3.5 では、定義クエリーに空間項目機能が追加されたことにより、属性条件による制限だけでなく空間条件による制限も可能になりました。定義クエリーの設定後は、指定した範囲のデータでそのまま解析などに利用することができます。また、UI の機能名の変更やオプションでのデフォルト設定によって、さらに定義クエリーをわかりやすく、効率的に設定できるようになりました。ぜひ ArcGIS Pro 3.5 で定義クエリー機能をご活用ください。