NetCDF データなどの多次元の時空間情報を 3 次元のボリュームのあるボクセルとしてビジュアライゼーションする「ボクセル レイヤー」は、ArcGIS Pro 2.6 で登場しました。
さらに ArcGIS Pro 2.8 では、このボクセル レイヤーが利用できるエディションが Advanced ライセンスから Basic ライセンスへ変更となりました。
ボクセル レイヤーは、NetCDF ファイルに保存されているデータに基づいて可視化することが可能です。ArcGIS Proでは、NetCDFファイルは、時空間キューブの作成や、Geostatistical Analyst エクステンションのツールなどで作成できます。
Geostatistical Analyst エクステンションの機能を利用した基本的な作成方法は、連続的な変数 (温度など) を表す属性を持つポイントを取得し、Empirical Bayesian Kriging 3D を使用して 3D クリギングを実行し、[GA Layer 3D ToNetCDF] ツールで出力された GA レイヤーを NetCDF ファイルに変換します。この手順で作成された NetCDF ファイルは、ArcGIS Pro のシーンに多次元ボクセル レイヤーとして追加できます。
Empirical Bayesian Kriging 3D における 3D 内挿とすべてのパラメーターの基礎ついては、以下のレッスンで学習することができます。
しかし、ポイントの属性が、温度などの連続変数ではなく、個別のカテゴリ (たとえば、土壌タイプ) を表す場合はどうでしょうか?Empirical Bayesian Kriging 3D では、入力データが内挿の連続属性を持つことを想定していますが、最近隣内挿を実行するように構成することもできます。最近隣内挿では、新しい場所 (サンプル ポイントがない場所) の値に、3D 空間で最も近い入力ポイントの値が割り当てられます。これにより、ポイントの個別のカテゴリを 3D の完全なボクセル キューブとして視覚化して探索できます。
このブログ記事では、XYZ の座標値を持つボーリング調査 (ダミー データ) の 3D ポイント データを内挿し、ボクセル レイヤーとして表示した例をご紹介します。
なお、3D ポイント データには、この地域の土壌タイプ (層) のサブセット (粘土、砂等) の情報が含まれています。
データの準備
- XYZ 座標を含むボーリング調査のテキスト データの場合は、[XY テーブル → ポイント] ジオプロセシング ツールでポイント データに変換します。
- ポイント データが地理座標系 (緯度経度) の場合は、[投影変換] ジオプロセシング ツールで任意の投影座標系に変換します。
Empirical Bayesian Kriging 3D ツールにおいて、内挿を行うには、土壌タイプを表す個別値のフィールドは数値型である必要があります。テキスト型などの場合は、[フィールドの再分類] ジオプロセシングツールを使って、フィールド型を数値に変換します。
内挿の実行
[Empirical Bayesian Kriging 3D] ジオプロセシング ツールにおいて、最近隣内挿法を実行するように設定を構成します (いくつかのパラメーターの設定が必要ですが、ほとんどのパラメーターは、不必要なクリギング計算をできるだけ避けるためのものです)。
前の手順で作成した数値フィールドを使用して、次のパラメーターを使用して [Empirical Bayesian Kriging 3D] ジオプロセシング ツールを実行します (他のすべてのオプションのパラメーターはデフォルト値のままで実行可能です)。
Input features:内挿する土壌タイプのポイント データ
Value field:土壌タイプを表す数値フィールド
Output geostatistical layer:任意の出力レイヤー名
Advanced Model Parameters
Semivariogram model type:Linear
Subset size:20
Number of simulated semivariograms:30
Elevation inflation factor:1 (または入力レイヤーの高さ方向の強調と同じ値)
Search Neighborhood Parameters
Search neighborhood
Max neighbors:1
Min neighbors:1
Sector type:1 Sector (Sphere)
NetCDF ファイルへの出力
[GA Layer 3D To NetCDF] ジオプロセシング ツールにおいて、前の手順で出力した Geostatistical レイヤーを指定し、NetCDF ファイルへ変換します。
パラメーターはデフォルト設定のままで実行可能ですが、必要に応じて、変更します。
NetCDF ファイルをボクセル レイヤーとして表示
[マップ] タブ → [データの追加 ▼] → [多次元ボクセル レイヤー] をクリックします。
[ボクセル レイヤーの追加] ダイアログにおいて、入力データ ソースに前の手順で作成した NetCDF ファイルを選択し、[データ タイプ] に [不連続] を選択します。
追加されたボクセル レイヤーを [コンテンツ] ウィンドウで選択し、[ボクセル レイヤー] タブ → [シンボル] をクリックし、シンボル設定を行います。
[データ] タブにおいて、[スライスおよびセクション] をクリックし、断面図を表示することも可能です。
既知の制限について
- 最近隣内挿 (Nearestneighbor) は、内挿補間というよりも、表示方法の選択肢の 1 つとして考えるべきかもしれません。新しい場所で連続した値を数学的に推定する他の内挿補間方法とは異なり、最近隣内挿補間は単純な割り当てアルゴリズムです。
- ビジュアライゼーションの品質は、元のポイント データに大きく依存します。3D 領域全体にサンプルが均等に分布していることがベストです。
- ここで紹介した方法は、あくまで基本的なビジュアライゼーションであり、層状となっていない地層や干渉性の高い地層では正しく動作しない可能性があります。
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