もう怖くない! ArcGIS Online におけるクレジット~組織全体での効率的な活用法~

ArcGIS Online における「クレジット」とは ArcGIS Online 全体で使用される通貨であり、ArcGIS Pro の一部の機能でも必要です。このクレジットは、ジオコーディング等の解析ツールを使用したり、ArcGIS Online 上にデータを保存したりすると、使用した分に応じて消費される仕組みです。使用した分だけ消費されるので、無駄なコストを抑えて、必要な機能を効率的に活用できます。

ただ「クレジットの消費量が分からず、怖い」、「間違って消費したらどうしよう」といった不安をお持ちの方もいらっしゃるのではないでしょうか。

そこで今回はクレジットの消費について、組織の「管理者」に向けたクレジット管理のコツと「メンバー」に向けた消費を抑えるコツをご紹介したいと思います。

組織の管理者としてクレジットを管理するコツ

クレジット使用制限ツールの有効化

[組織] ページ → [設定] → [クレジット] で [クレジット使用制限ツールを有効化] のトグルをオンにすることで、組織内のメンバーに対して、利用可能なクレジット数を割り当てることができます。
また [各ユーザーの利用可能なクレジットを設定ページに表示] のトグルをオンにすることでユーザー自身が、プロフィール ページで利用可能なクレジット数を確認することができます。

これによって、ユーザーがクレジットを使用制限内で柔軟に使用することができる上に、自分のクレジット数を確認できることで、クレジット消費を意識させることができます。さらに大量のクレジットを消費する解析等を防止できるので、偶発的なクレジット消費を回避できます。ただし、一度大量のジオコーディングやタイルの生成を実行した場合、処理途中で割り当てられたクレジットをすべて消費したとしても処理は中断されませんのでご注意ください。

メンバー ロールの作成

管理者は、偶発的なクレジット消費を防ぐために、特定のツールの権限を持たないメンバー ロールを作成し、メンバーに割り当てることができます。メンバー ロールは [組織] → [設定] → [メンバー ロール] で [ロールの作成] ボタンから作成できます。

作成したロールの […] → [編集] → [プレミアム コンテンツ] セクションにおいて、住所からポイントを作成できる「ジオコーディング」やマップに可視化したポイントを集約したりする「空間解析」等の権限を管理することができます。

また [コンテンツ] セクションで [ホスト フィーチャ レイヤーの公開] の機能をオフにすると、フィーチャ レイヤーの作成機能を制限でき、フィーチャ ストレージに関するクレジットの消費を抑えることにつながります。

組織のクレジット使用状況を監視

管理者は [組織] → [概要] または [ステータス] タブから組織内のメンバーのクレジット使用状況を監視できます。

  • 組織のクレジット使用状況の概要を表示 ([概要] タブ)
  • 時系列によるクレジットの使用状況とタイプ別の使用状況をダッシュボードで表示 ([ステータス] タブ)
  • フィーチャ ストレージ レポートにアクセスすることで、[ステータス] タブのより詳細なクレジット使用状況を表示
  • クレジット使用状況をレポートとして csv 形式でエクスポート ([ステータス] タブ)

また管理者は、「メンバーが割り当てられたクレジットをすべて消費したとき」や「組織がクレジットの 75% 以上を消費したとき」および「組織がすべてのクレジットを消費したとき」に電子メール通知を受け取ります。追加のクレジットは 1,000 クレジット (1 ブロック) または 5,000 クレジット (5 ブロック) 単位でESRIジャパン ショップから購入することができます。追加購入したクレジットの有効期限は、発行日から 2 年間です。

組織のメンバーとしてクレジット賢く使うコツ

自身で利用可能なクレジット数を確認

管理者がクレジットを割り当てている場合、ユーザーはサイン イン後の右上のアイコンから [設定] → [クレジット] タブで割り当てられているクレジット数と残りのクレジット数を確認できます。

解析実行前に消費クレジットを確認

Map Viewer で解析ツールを実行する前に [クレジットの推定] をクリックすることで、解析ツールの使用で消費されるクレジット数を確認できます。

デスクトップ型 GIS である ArcGIS Pro のいくつかのジオプロセシング ツールにおいても実行時に ArcGIS Online のクレジットを消費します。ツールを開くと上部に「クレジットを推定します」というメッセージが表示されるので、クリックして推定値を表示します。

また、2023 年 4 月にリリース予定の ArcGIS Pro 3.1 からは、クレジットを使用する解析の実行前にクレジットの推定を行う必要があります。ArcGIS Pro におけるクレジット消費については「クレジットを使用するジオプロセシング ツール」をご参照ください。

コンテンツで保有するデータの整理整頓

コンテンツに保有するデータのストレージで消費されるクレジットは、ユーザーではなく組織として計算されて、時間単位での消費となります。
保存したアイテムの [アイテム詳細] ページを開き [Feature Layer (ホスト)] と表示されているタイプのデータは、保存している期間中は下記のルールでクレジットを消費します。

  • 消費ルール: 100 MB のデータを保存する場合、1 か月あたり 24 クレジットを消費

無駄なクレジットを消費しないためにも、定期的に不要なデータは削除することを推奨します。複雑な形状の境界データやフィールド数が多いデータはサイズが大きくなる傾向にあります。市区町村界などの境界データなどは、無償で ArcGIS Living Atlas of the World にて提供しておりますので、ぜひご活用ください。

クレジットを消費する機能を把握

クレジットを消費する代表的な機能とその消費量をご紹介します。

  • フィーチャ ストレージ (ホスト フィーチャ レイヤーの保存) : 100 MB のデータを保存する場合、1 か月あたり 24 クレジット (1 時間単位で計算)
  • 画像ストレージ (ホスト イメージ レイヤーの保存) : 1 GB の保存で月 1.2 クレジット (1 時間単位で計算)
  • ジオコーディング: ジオコード 1,000 件につき 40 クレジット

そのほかの詳細については機能別のクレジットをご参照ください。

クレジットに関するよくあるご質問

ジオコーディングでクレジットが消費されるのはいつですか?

World Geocoding Service を使用する場合でも、ジオサーチ (位置検索) を行うだけではクレジットを消費しません。クレジットは、住所の載った csv 形式などのファイルを Web マップにドラッグ アンド ドロップしてポイントとしてジオコーディングする場合やジオコーディングされたポイントを保存する場合に消費されます。詳細は、ジオコーディングとジオサーチをご参照ください。

現地調査アプリはクレジットを消費しますか?

現場で収集したデータはフィーチャ レイヤーに追加されます。追加したデータがフィーチャ レイヤーとして保存されることでクレジットが消費されます。消費量は、本ブログで紹介している「クレジット消費する機能を把握」に従って変動します。

メディア ファイルを ArcGIS Online に保存すると、多くのクレジットが消費されますか?

ArcGIS Online では 写真、PDF、ビデオをアイテムとして、またはフィーチャの添付ファイルとして保存できます。どちらの場合も、メディア ファイルはファイル ストレージとなり、フィーチャ ストレージで保存するよりもクレジットの消費を抑えることができます。

住所が記入してある csv 形式のファイルをジオコーディングした後に、数件の住所を加えた csv 形式のファイルを再度ジオコーディングした場合、ジオコーディング済みの住所に対してクレジットは消費されますか?

はい、消費されます。すべての住所を再度読み込み、ジオコーディングするためです。ジオコーディングの重複を避けつつ、データを更新するには「ArcGIS リソース集: データをファイルから更新したい – データをレイヤーに追加」をご参照ください。

クレジットを消費する機能を実行する時に、十分なクレジットを保有していない場合はどうなりますか?

十分なクレジットを保有していないにも関わらず、処理を実行しようとした場合、エラー メッセージが表示されます。この時、処理は実行されず、クレジットも消費しません。

なお、REST API を使用する場合は、クレジットを消費し切るまで処理を実行します。残クレジットがゼロになったときに、処理は停止します。そのため REST API を使用する際は十分なクレジットの保有を確認するか、アプリにクレジット使用確認機能を追加して、部分的なトランザクションによる無駄なクレジット消費を回避できるようにすることをおすすめします。

おわりに

今回は便利なクレジットを無駄にすることなく、ご活用いただくコツをご紹介しました。ArcGIS Online のサブスクリプションに付属するクレジットの有効期限は 1 年間で、契約を更新された場合でも持ち越しはできません。ですからクレジット消費を恐れて使わずに消えてしまうのは非常にもったいないです。どうか効率よく、賢くお使いください!

また 2023 年 3 月 28 日 (火) に「もう怖くない!ArcGIS Onlineにおけるクレジット~組織全体での効率的な活用法~」ウェビナーの開催を予定しております。この機会に是非ご参加ください。

さらにクレジットを節約する操作のコツを下記ブログにて紹介しています。こちらも是非お読みください。

本記事が皆様のクレジットへの理解を深め、ご活用いただくきっかけになれば幸いです。

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