【WhereNext】地図を活用した新しい就職活動

雇用に必要なスキルや人材の需要は、経済状況や地域ごとの特徴など、さまざまな要因によって変化しています。最近のウォール・ストリート・ジャーナルの記事によれば、アメリカの一部のメーカーでは、高校卒業前の溶接工に対しても高額な給与を提示するケースが増えているそうです。

求職活動の新しい流れ

こうした中、求職者のための新しいツールも登場しています。溶接工だけでなく、エネルギー、インフラ、医療、バイオテクノロジーなど、さまざまな分野で人材が求められています(米国労働統計局より)。

これまで企業は、求人情報をオンラインで掲載し、応募者からの履歴書を待つという方法が一般的でした。しかし、南カリフォルニアのコミュニティカレッジでは、勤務地という重要な要素に着目し、地理情報を活用して企業と求職者を結びつける新しいアプローチを導入しています。

地理情報を活用した就職活動

勤務地は、給与や通勤時間、ワークライフバランス、キャリアの成長などに大きな影響を与えます。しかし、従来の求人検索では、都市名や郵便番号で探しても十分な情報が得られません。
もし、求職者が自分の生活圏や子どもの学校、好きな場所の近くで求人を探せたらどうでしょうか。業界や専門分野ごとに、求人がどのエリアに集中しているかを地図で確認できれば、より納得のいく選択ができるはずです。

カリフォルニア州オレンジ郡のCoast Community College District(CCCD)では、地理情報システム(GIS)を活用し、学生が卒業前から就職先の地理的な情報を把握できる仕組みを作っています。GISを使ったウェブサイトでは、学生が希望する業界の求人がどこにあるかを地図上で確認できます。CCCDの担当者は、これを「学生の進路の地理的有効化」と呼んでいます。

CCCDのキャリア教育・人材開発プログラムディレクターであるStephanie Feger氏は、「労働市場の情報を把握するのは求職者にとって難しいことです。もっと良い方法があるはずだと考え、情報を地図上に可視化することにしました」と語っています。

生活費や必要スキルも地図で見える

ベビーブーマー世代の大量退職により、若い世代には新たなチャンスが生まれています。同時に、AIなど新しいスキルの需要も高まっています。業界ごとの集積地を地図で可視化することで、求職者は自分のスキルに合った求人を見つけやすくなります。また、キャリアアップの可能性があるエリアも見えてきます。

スマートマップを使えば、求職者は生活費や業種・スキルごとの求人情報も一緒に確認できます。GIS技術は、求人の場所や給与水準、必要なスキルなどのデータを地図上に表示します。

企業側も、GISを使って自社の人材ニーズに合った場所を探しています。特定のライフスタイルや趣味が、ある職種に適している場合もあります。採用担当者は、必要なスキルや特性を持つ人材が多い地域をターゲットに採用活動を行うことができます。

例えば、テレヘルス分野の人材を探す場合、GISダッシュボードで特定地域の労働データを地図化することで、専門職だけでなく関連分野の医療従事者やその平均収入、離職率なども把握できます。

地理的な視点で、より良い意思決定を

地理的な視点で求人市場を把握することで、企業も求職者もより良い意思決定ができます。求職者は求人の場所だけでなく、学校やサービス、公園などの周辺環境も確認できます。
求職者は単に職務要件だけでなく、その仕事がもたらす生活の質も重視します。環境が気に入れば、長く働き続ける可能性が高まり、企業側も離職リスクやコストを抑えられます。

この記事は WhereNext のグローバル版に掲載されたものです。 原文: Job Hunting with a Map