【WhereNext】世界最大の家具メーカーが語る小売店舗計画の科学

1 月にニューヨークで開催された全米小売業協会(NRF)の「ビッグショー」では、ある統計データが強く印象に残りました。小売購入の約 83% は、依然として実店舗で行われているという事実です。

ワンクリック決済やエージェント型コマースが普及した現代においても、小売業者、金融会社、不動産開発業者を含む多くの企業は、不変のルールに基づいて事業を展開しています。それは、ビジネスが繁栄する場所を見極めるためには、まず顧客がどこにいるのかを把握しなければならない、ということです。

こうした背景があるからこそ、小売イノベーションの事例が紹介された NRF のパネルディスカッションは、大きな注目を集めたのかもしれません。世界最大級の家具メーカー兼小売業者であるアシュリー・ファーニチャーは、マッピングと分析を活用し、北米全域に広がる約 1,000 店舗のネットワークをどのように拡大し、顧客とのつながりを維持しているのかを紹介しました。

地図が明らかにする、市場の真の姿

このパネルディスカッションの動画抜粋では、アシュリー社のビジネスインテリジェンス・マネージャーであるジョン・ブロック氏と、GIS 開発者のアリー・スコット氏が登壇しています。両氏は、地理情報システム(GIS)技術が、店舗の立地決定にとどまらず、店舗の視認性や在庫の最適化に至るまで、どのように意思決定を支えているのかを詳しく解説しています。

多くの小売業者は、今でも地図上に単純な円を描き、その内部を商圏として捉えています。一方でブロック氏とスコット氏は、GIS を活用し、道路の種類や交通状況、その他の地理的要因を考慮して、顧客の移動時間を分析しています。その結果として得られる商圏は、ギザギザとした有機的な形状となり、より現実に即した、正確なものになります。

これらの地図を用いることで、アシュリーの不動産チームは、複数の店舗が互いの顧客を奪い合う可能性がないかを確認できます。また、魅力的な地域が重なり合う場所を特定することで、複数の主要な顧客層に対応できる立地を、ピンポイントで見極めることが可能になります。

ロケーション分析に基づくこうした市場理解は、店舗の商品構成にも応用できます。顧客ニーズにより的確に応えるため、ブロック氏とスコット氏は、地域ごとの商品の売れ行きデータを分析し、その結果を店舗マネージャーと共有することで、商品構成を適切に調整できる体制を構築しようとしています。

店舗の視認性に関する科学

市場計画とは、単に適切な立地を選定することだけを意味するものではありません。それは同時に、顧客の利便性を高めるために、その立地をいかに最適化するかを考える機会でもあります。

経済学の研究では、視認性の高い店舗ほど多くの顧客を引き付けることが示されています。実際、適切な店舗立地は、オンライン販売と実店舗販売が相互に好影響を及ぼす「ハロー効果」を生み出す可能性があります。

アシュリーのチームは、GIS(地理情報システム)とデータサイエンスを活用し、店舗の視認性と売上実績との関係性を分析しています。

ブランドの物理的な存在感を最大化するため、スコット氏とブロック氏は、位置情報に基づく指標を用いて、ドライバーや歩行者から店舗がどの程度見えやすいかを評価しています。その際には、通過する交通の速度やドライバーの数、地域の人口統計、視認可能な範囲、さらには左折やUターンといった道路特性など、多様な要因が考慮されています。

加えて、GIS を用いてファサードの高さや敷地面積の異なる選択肢をシミュレーションし、店舗が 2 階建てか 3 階建てか、街角に立地するのか、それともショッピングモール内に入るのかによって、業績がどのように変化するのかを、3D モデルで可視化しています。

「私たちの建物そのものがマーケティングツールなのです」と、スコット氏は説明しています。

高度な分析を背景に、小さな決断の積み重ねが大きな成果につながる

小規模な銀行からグローバルな商業用不動産会社に至るまで、さまざまな企業が、立地に対する理解を基に市場計画の意思決定を行っています。たとえ近隣の店舗を視察するといった一見シンプルな行動であっても、その背景には立地への理解が欠かせません。

アシュリーのような業界をリードする企業は、この理解をさらに一歩進めています。同社はロケーション分析を通じて、どのような顧客が店舗を訪れ、何を購入し、そしてどのようにすれば最も効果的にリーチできるのかといった重要な問いに対し、具体的な答えを導き出しています。