【WhereNext】地理的な事情がESGやデータ分析に与える影響とは

最近の PwC の調査によると、世界の製造業の経営者は、ESG への取り組みとデータ分析に関心があることが分かりました。

PwC は、「Manufacturing COO Pulse Survey」の作成にあたり、中国、ドイツ、日本、英国、米国の製造業幹部 600 人に、今後数年間でどのような課題、テクノロジー、目標が最優先事項であるかを調査しました。調査結果を地理的に見ると、あらゆる業種の経営幹部が地域差を克服するために取り組む姿勢がみられています。

どの企業も、より効率的なオペレーションを実現することは、より持続可能なオペレーションを実現することであると認識しています。しかし、CO2 削減という長期的な環境問題は、より直接的なレジリエンス (回復力) への取り組みに比べて後回しにされている。また、企業は、クラウドやアナリティクスなどのテクノロジーの重要性を訴えているが、 特定の国の経営幹部は、そのデジタル成熟度に応じて、これらの優先事項を強調したり、軽視したりしています。

グローバルな懸念と地域の優先事項

COVID-19 の余波を受け、製造業の経営者はあらゆる方面からプレッシャーをかけられています。世界経済の減速に伴い、原材料の供給不足に悩まされ、サプライチェーンの困難が、バランスシートを圧迫している。一方、自転車部品から医療機器に至るまで、消費者の関心が高く、特定の分野で需要増加に直面しています。

しかし、中国の電力危機や、ドイツでは児童労働を行うサプライヤーの使用を禁止する法律が施行されている今、サプライチェーンの現状を理解するためには、地理的なアプローチを細かく行う必要があります。

地理情報システム (GIS) で作成されるこのようなロケーション・インテリジェンスは、テクノロジー企業、ESG コンサルタント、サプライヤー、小売業者が、製造業の将来を理解するのに役立ちます。

ESG の優先事項の複雑な実態

製造業経営者は、自社の事業活動においてどの ESG 目標を測定しているかを尋ねたところ、圧倒的に「エネルギー効率」が最上位となり、その範囲は、日本の 84% からドイツの 77% と強い関心が伺えます。エネルギー効率の重視は、製造業のエンジニアリング・建設部門のエグゼクティブでさらに顕著でした。中国とイギリスでは、100% の経営者がエネルギー効率を重視していると回答しています。
経済や文化が大きく異なる国々のビジネスリーダーの間でこのような意見が一致したことは、現代の事業継続には持続可能なレジリエンスが必要であるという新たな課題が見えてきていました。

一方、中国、ドイツ、日本の産業用製造・設備部門の経営者は、サプライチェーンの CO2 排出量の重要性について、全体として最も低い評価を下しているようです。同様に、製造業の経営幹部は、温室効果ガス排出量よりもエネルギー効率の測定に重点を置いていました。これは、企業が収益を確保するために温室効果ガス排出量の削減を急がないというトリアージ的な考え方を反映しているのかもしれません。

ポストパンデミック時代におけるデジタル成熟度

テクノロジー面では、米国の製造業経営者は、中国 (39%) や日本 (37%) に比べてデータ分析に積極的な姿勢を示しています (50%)。一方、中国とドイツ (ともに 53%) では、クラウドコンピューティングの優先順位が米国 (39%) よりも高くなっています。

どの国で事業を展開しているかにかかわらず、競争上の優位性を獲得している企業は、重要な技術的実践に妥協していません。例えば、ある米国の保険会社は、4 つの A (アドバンスト・アナリティクス (Advanced Analytics)、クラウド・アーキテクチャー (Cloud Archtecture)、人工知能 (AI)、自動化 (Automation)) に焦点を当てたデータ・ドリブン戦略をとることで、収益を数億ドル増加させました。

多くの製造業はイノベーションを受け入れ、現場や工場からのデータ収集を行っていますが、同業他社をしのぐデータ・ドリブン型企業を作るには、一部の調査対象企業では取り組みが不十分であることがわかりました。

パンデミックカーブの先取り

これらの課題は、グローバルに展開する製造業企業が今後進むべき道において、ロケーション・インテリジェンスが果たすべき貴重な役割を浮き彫りにしています。PwC の調査は、企業が競争に打ち勝つために活用しなければならない地域や国の違いを反映しています。スマートマップは、空間データを整理・分析し、需要と供給の両方の傾向を表面化することができるため、製造業のエグゼクティブが必要な分野にリソースを配分する判断材料になりえます。最新の GIS は、AI やクラウド技術を使って、膨大な量のデータを文脈に合わせて可視化することができます。

最終的には、世界の製造業はパンデミックに先手を打つことになるでしょう。しかし、そのためには、最新のテクノロジーを取り入れ、地域のパートナーや競合他社の強みや優先事項を認識した上で、段階的な戦略を立てる必要があります。

この記事は WhereNext のグローバル版に掲載されたものです。
原文: Geography Affects Executive Priorities on ESG, Tech