目次
はじめに
今日の都市は、道路や橋といった重要なインフラの持続可能性に関する様々な問題に直面しています。現在、稼働中の老朽化したインフラ施設は信頼できる設計データ等がないことが多い、というように言われています。今後、重要なインフラ施設は、数カ月から数年の間でインフラとして稼働しながら、再建もしくは改修していく必要があります。
上記のような問題に直面している膨大なインフラ施設を効率的に管理するためには、継続して更新、運用、保守を行うプロセスが必要です。ArcGIS 製品では、BIM (Building Information Modeling) と GIS (Geographic Information Systems) のデータを統合し、それらの施設管理に寄与することができます。GIS と BIM をリンクさせるためには、BIM や CAD と GIS 間とでデータ交換を最適化することが重要です。
ArcGIS 製品では、プロジェクトごとに GIS や BIM、3D データを同じ場所に保存し、共有することができるようになりました。このデータ共有によって、すべてのプロジェクト チームがワークフローを合理化することで、時間やコストを削減できます。このワークフローは、直接インポートする方法もしくはクラウドを経由する方法による BIM データの活用から、GIS での表示、編集、データ共有といったことなど多岐にわたります。
最終的には、GIS と BIM の統合は、地域社会にとってはより良い成果につながり、BIM・CAD 利用者にとってはより効果的な提案につながります。BIM モデルを GIS に追加するためのワークフローを確認していきます。
BIM モデルの関係者への共有 (利用と共有)
ArcGIS 製品によって BIM モデルを GIS 空間上に追加することで、計画・設計フェーズや、建築フェーズ、運用・維持管理フェーズにて BIM と GIS を統合したモデル空間を活用することができます。昨今、Esri 社とオートデスク社 のパートナーシップの一環として、クラウド (Autodesk Construction Cloud® や BIM 360®) へのリンクが設定され、2 社の異なるクラウド環境が接続できるようになりました。これにより、ArcGIS 製品上で地理空間データや建築データなど、他のすべてのデータとの関連を直接確認することができ、デジタル ツインを構築するための基礎とすることができます。
ArcGIS Pro では、シーン上に BIM モデルを追加したのち、BIM モデルをシーン レイヤーなど Web レイヤーとして ArcGIS Online (または ArcGIS Enterprise) で公開することで、Web シーンへ追加し、ほかの関係者がデータを活用できます。また、ArcGIS Experience Builder もしくは ArcGIS Web AppBuilder を使用することで、エンド ユーザー向けにすぐに使用できる Web マッピング アプリを作成し、コンテンツを技術者以外のユーザーも利用できるようになるため、関係者間の連携向上が期待できます。
シーン レイヤー (I3S ファイル) などの Web レイヤーの作成は、以下のアプリなどにおいて必要です。
- Scene Viewer: BIM データの構造や属性に基づいた操作が可能
- ArcGIS Urban: 詳細な都市計画のシナリオ作成が可能
- ArcGIS GeoBIM: オートデスク社のツール (Autodesk Construction Cloud ®および BIM 360 ®) にリンクさせることで施設の関連データにアクセスすることが可能
インフラ施設情報の更新 (編集と操作)
情報を利用し、それを関係者に提供する上で、データを最新の状態に保つことは非常に重要なことです。ArcGIS 製品を活用することによって、最新情報を用いてシーン レイヤーを簡単に更新でき、このレイヤーを利用した Web アプリなどの利用者は、最新の情報を使って作業することができます。
ArcGIS Pro では、編集ツールによってデータのスタイル設定やメタデータの追加、公開時に不要なデータの削除による最適化などの操作が可能です。また、ジオリファレンス機能によってモデル位置の調整も可能です。
ArcGIS Online のメリットは、土木技術者、設計者、維持管理担当者などの現場担当者が、詳細な BIM 情報を確認し、関連する GIS データや属性をテーブルやレポートなどですぐに編集できることです。Web アプリによってチーム全体が情報を利用できるようにすることで、現場やそれ以外でも効果的な情報の受け渡しが可能となります。
計画や運用プロセスにおける分析可能なコンテキスト表示 (計画・運用と分析)
GIS 上で BIM を利用するメリットは、GIS ツールを使用することでどのような構造物でも、より広域な範囲で高度な分析を行えることが挙げられます。BIM モデルの詳細な情報によって、より効果的な分析が可能となり、計画や運用フェーズにおける意思決定プロセスを改善します。GIS と BIM を組み合わせることで、与えられた BIM モデルが計画初期案のものでも最終案のものでも、ライフ サイクルのどの段階においても、一歩進んだ分析を実行することができます。
BIM モデルを GIS コンテンツ上に配置すること、つまりコンテキスト表示することによって情報に簡単にアクセスすることができ、リスクやセキュリティ問題が早期に明らかになったり、コスト削減やスケジューリングに役立ったりすることが期待できます。
GIS と BIM の組み合わせは、施設が運用される状況の理解につながるほか、環境、人口統計、政治、社会データといった関連するすべての GIS 情報をまとめることで、計画プロセス全体にとって大きなメリットとなります。また、組み合わされた情報に対して管理や解析のためにサード パーティ システムなどと連携することによってより効果的な運用、管理が期待できます。
BIM と GIS の統合による効果的な利用方法には以下のような事例があります。
GIS と BIM の統合を学習するには?
GIS と BIM は、施設のライフ サイクル全体を通じて互いに補完し合います。ArcGIS 製品によって GIS 上で BIM 情報を使用することで、意思決定フローが改善され、施設設計、運用のためのデジタル ツインが作成できます。
これらの運用は GIS と BIM を統合することから始まります。データをリンクさせたり、BIM データを GIS に追加したり、その逆を行うことも可能です。BIM データを ArcGIS 環境でどのように活用できるかを知りたい方は、GIS と BIM のラーニング パスをご覧ください。
※本ブログは、米国Esri の「GIS & BIM: The Benefits of Integration」というブログを翻訳し、加筆等したものです。
関連リンク
ArcGIS Pro 製品ページ
ArcGIS Online 製品ページ
ArcGIS Enterprise 製品ページ
Scene Viewer 製品ページ
ArcGIS Urban 製品ページ
ArcGIS GeoBIM 製品ページ
ArcGIS Experience Builder 製品ページ
ArcGIS Web AppBuilder 製品ページ
BIM/CIM と GIS 基礎解説