みなさんは、作成したデータの品質をどのように管理していますか?正しい地図、正しい解析には、品質の良いデータを作ることが不可欠です。本日は、GIS データの品質管理に特化した製品である ArcGIS Data Reviewer についてご紹介します。
目次
ArcGIS Data Reviewer とは
ArcGIS Data Reviewer はデータ品質管理を目的として、データ品質を保つためのルールに基づく検証、エラーの追跡などを可能にする ArcGIS Pro のエクステンション製品です。
たとえば、実際には T 字路なのにデータでは十字になっている、水域を示すポリゴンが農地のポリゴンと重なっているという場合、データが正しくない状態であり、品質が低いデータであると言えます。このようなデータを使用すると、不正確な解析結果をもたらしたり、修正するためにコストがかかったりしてしまうため、仕様や業界標準に適した正しいデータの作成が必要となります。
品質管理のためのワークフロー
Data Reviewer では、エラーを発見する「レビュー」、発見したエラーを修正する「修正」、修正が正しいか確認する「確認」の 3 つのステップで品質管理をサポートします。
エラーが発見されたデータについて、いつ誰がレビューを行い、いつ誰が修正を行ったのかという記録を残すことができるので、データを作成・編集する場合のデータ管理に最適です。
ステップ1:レビュー
まずは、レビューを行い問題のあるデータを発見した場合には、エラーとしてテーブルに登録されます。レビューには、自動レビューと半自動レビューの 2 つの方法があり、データに応じて併せて使用することで、データの品質をより向上することができます。
既定のルールを使用する「自動レビュー」
自動レビューは、レビューアー ルールという 40 種類以上の既定のルールを使用してルールを作成し、エラーを検出する方法です。ユーザーは、自分でコードを書いてルールを一から作成する必要が無く、パラメーターの値を設定するだけで、簡単にルールを作成できます。
自動レビューは、システムがデータ チェックを行うため以下のようなメリットがあります。
- 処理が早い
- 一貫性と再現性に優れている
- データを客観的・網羅的にチェックできる
レビューアー ルールの種類については、ヘルプ ページの一覧表でご確認ください。
【検証チェック】
検証チェックは、作成済みのデータに対してルールを適用したい場合に使用します。
以下の画像の例では、検証チェックの「フィーチャ間ルール」というレビューアー ルールを用いて、「駅ポイントが駅ポリゴンに含まれる必要がある」というルールを設定します。ルールを適用すると、それに違反するエラーが右図のように、マップ上でマークされテーブルに登録されます。
【制約チェック】
制約チェックを使用すると、データの作成作業や、データの更新・削除などの修正作業を行う段階から品質管理を行うことができます。
以下の画像の例では、制約チェックの「フィーチャ間ルール」を用いて、「駅ポイントを作成する際、駅ポイントが駅ポリゴンに含まれる必要がある」というルールを設定します。ルールに違反するポイントを作成すると、右図のようにエラーメッセージが表示され、フィーチャの作成が許可されません。
目視でデータを確認する「半自動レビュー」
半自動レビューは、自動レビューではカバーできなかったデータの欠落やソースとのずれによるエラーなど、人が目視で判断しなければならない場合に手動でエラーを登録できる方法です。
【フィーチャの参照】
ソースと比較して位置がずれている、サブタイプが誤っているなどの理由で修正する必要のあるフィーチャは、[フィーチャの参照] ツールでエラーを登録します。
以下の画像の例では、湖沼ポリゴンの位置が背景地図とずれているため、位置を修正する必要があります。湖沼ポリゴンに「フィーチャの移動」エラーを設定し、テーブルにフィーチャの移動が必要であることを登録します。
【欠落フィーチャのフラグ】
本来あるべきフィーチャが欠落している場合には、[欠落フィーチャのフラグ] をマークし、データに不備があることを登録します。
以下の画像の例では、背景地図と比較すると湖沼ポリゴンの作成が漏れている箇所があります。欠落フィーチャのフラグに「湖沼ポリゴンを追加する必要がある」というエラーを設定し、マップ上で湖沼ポリゴンが欠落している箇所にフラグのポイントを作成することで、テーブルにエラーを登録します。
ステップ2:ステータスの管理
エラーの記録が完了したら、エラー箇所を確認し、[フィーチャの修正] ツールや [フィーチャ属性の編集] などの ArcGIS Pro の標準機能でデータを修正する作業を行います。修正した結果は、更新者や更新日時と合わせて記録することで、データの修正を追跡することができます。ステータスはアイコンでも表示されるので、視覚的にわかりやすい状態で管理することができます。
ステップ3:確認ステータスの管理
修正が行われたデータに問題があった場合には、手動でステータスの更新を行い、再度データの修正が必要であることを記録します。
このように修正と確認を繰り返しながら、高品質なデータの作成を実現します。
さいごに
これまでご紹介した流れで確認のステップまで完了したデータは、信頼できるデータとして地図作製や解析に利用することができます。
また、テーブルに記録されたエラーや確認状況、日付などの情報は、最終的にテーブルをレポートやチャート機能で PDF 等に出力することで、データ精度の証明や修正作業の報告用資料に利用することができます。
ArcGIS Data Reviewer はすべてのエディションでデータのチェックを行うことができますが、新しくレビューアー ルールを作成する場合には Standard 以上のライセンスが必要となります。ArcGIS Data Reviewer にご興味のある方はトライアルでお試しいただくこともできます。ぜひ高品質データの作成に Data Reviewer をお役立てください!
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