ArcGIS Pro では様々なラスターを利用することができますが、合成開口レーダー (SAR) データもサポートしています。 SAR はレーダー センサーの一種で独自の信号を送受信し、昼夜を問わず雲がある状況でも地表を観測することができる特性をもち、発災時などにも活用されています。(参考: SAR の概要)
本記事では、合成開口レーダー (SAR) を搭載した衛星である Sentinel–1 の GRD (Ground Range Detected) プロダクトから、ArcGIS Pro の合成開口レーダー ツールセットを使用した前処理の方法と ArcGIS Pro 3.2 で新しく追加された [明るい海洋オブジェクトの検出] ツール で船舶を検出する方法についてご紹介します。今回は瀬戸内海の船舶を検出してみました。
データの準備と前処理
- Sentinel-1 GRD データを入手します。
今回は Copernicus Data Space Ecosystem | Europe’s eyes on Earth から取得しました。サイトを利用するためのユーザー登録を行うと無償でデータをダウンロードすることができます。 - 解析のための前処理を行います。
Sentinel-1 レベル 1 の SAR 画像は解析やビジュアライゼーションを行う前に補正や変換を実施する必要があります。本手順は以下のワークフローで処理を行いました。
明るい海洋オブジェクトの検出ツールでのオブジェクト検出を最適化するため、[放射量キャリブレーションの適用] ツールの 「キャリブレーション タイプ」 では 「ガンマ ノート」 を選択する必要があります。
船舶の検出
- [明るい海洋オブジェクトの検出] ツールで船舶の検出を行います。
このツールでは海洋上おける明るい人工オブジェクトとして風車や石油の掘削装置などを検出することができます。
・入力レーダー データ: 手順 2 で前処理を行ったデータ
・出力フィーチャ クラス: 検出フィーチャの保存場所と名前
上記画像内で点滅しているフィーチャが検出されたオブジェクトです。周辺にはコンビナートがあるため、近くを航行したり停泊したりしている船舶が検出できました。
なお 、マスク フィーチャ パラメーターで陸域や水域を指定しマスクできます。この設定により、水域のみにおける人工オブジェクトを検出します。そのほか、検出したいオブジェクトの大きさを指定することもできます。たとえば、最小長と最小幅を指定することで大型船舶のみを抽出対象として指定した処理が可能です。
今回は Sentinel-1 を利用した分析方法をご紹介しましたが Capella を含む SAR センサーもサポートしています。センサーの詳細につきましては、合成開口レーダー (SAR) センサーのサポートをご参照ください。
また、船舶の検出以外にも森林劣化指数 の算出やカラー合成の作成機能などを利用して、森林植生の変化や洪水の被害を分析することができます。ぜひ ArcGIS Pro、ArcGIS Image Analyst で 合成開口レーダー (SAR) を利用した解析を行ってみてください。データ付きで手順を確認することができる Learn ArcGIS も準備されています。