六角形グリッドに関するガイド ~ ArcGIS Business Analyst ~:マッピング&解析編 

本ブログは、An authoritative guide to hexagons in Business Analyst: Mapping and analysis (esri.com) および An authoritative guide to hexagons in Business Analyst: Data enrichment (esri.com) を参考に、日本向けに内容を変更しています。

ArcGIS Business Analyst Web and Mobile Apps の 2024 年 2 月のアップデートで、アメリカにおいて六角形グリッドが使用できる区画に追加されました。この記事では、六角形グリッドのマッピングや解析での活用法についてご紹介します。

マッピングと解析における六角形グリッドのメリットは?

六角形グリッドは、接続性や近接性・移動経路に着目して位置に基づく解析を行う場合に推奨されます。標準区画 (州、郡、国勢統計区など) は、各区画の大きさが異なるため、色分けして表示すると、大きな区画のデータが過度に強調され、その区画が重要であるという誤った認識を与える可能性があります。

上の画像は、郡レベル (左) と解像度 5 の六角形グリッド (右) でミネソタ州の人口総数をマッピングしています。左の画像では、北東部のセントルイス郡を表す大きな濃い紫色のポリゴンが目立ちます。一方、右の画像のように、六角形グリッドでマッピングすると、その地域の人口がまばらであることが明らかになり、区画サイズの違いにより生じるバイアスを軽減することができます。

分布のパターンを表す方法の一つにヒートマップがありますが、この方法は局所的な変動を受けやすいといった特徴があります。六角形グリッドを使用することで、データの特性や整合性を損なうことなく、連続的かつ一貫した方法で変数の分布を表現することができます。

マッピングにおける六角形グリッドの使用例

六角形グリッドが有効な使用方法の一つは、マッピングによる視覚化です。標準区画を用いたマップを作成する場合、大きな区画が過度に強調されるため、小さな区画に潜む、重要な傾向が隠れる場合があります。六角形グリッドの場合、各変数が人口、世帯、企業の分布に基づいて各六角形セルに割り当てられ、サイズと分布が均等に表現されます。

以下の例では、カリフォルニア州リバーサイド郡の収入の中央値と住宅価格の中央値をマッピングしています。国勢統計区 (Census Tract) を区画レベルとして使用すると、東側に広がる広大な区画に目が引かれます。

解像度 7 (半径 1.2 km) の六角形グリッドを使用すると、マッピングの結果は見やすくなります。誰も住んでいない森林や山・砂漠などのエリアは六角形グリッドがないため、パーム スプリングスやコーチェラで大きな変化が見られます。さらに、アリゾナ州との境界付近の都市は、低価格住宅に高所得世帯が集中していることが分かりますが、標準区画を使用した場合、この特徴の把握は困難です。

六角形グリッドの欠点は、州、郡などの形状が失われることです。 BA Web App で分析範囲の設定機能を利用して、リバーサイド市などの小さなエリアの区画のみを描画してみましょう。この場合、半径 1.2 km の六角形は大きすぎて、データに存在する重要な特徴や傾向を表示できない可能性があります。国勢調査細分区 (Block Group) は、この縮尺のカラーコード マップで使用でき、「高所得かつ高級な住宅街」を表す紺色の区画は、市の南西部に集中していることが分かります。

六角形グリッドを使用した場合も、この特徴はまだ把握可能ですが、北側のエリアは、単一の六角形が複数の区画にまたがるため、詳細な変化パターンの多くが失われています。

スマート マップ サーチを使用する場合、六角形グリッドは、ターゲットの条件や特徴に合致するエリアにフォーカスさせるのにも役立ちます。収入の中央値と住宅価格の変数を使用して、住宅価格の中央値が 500,000 ドルを超え、収入が 100,000 ドルを超えるエリアのみを表示するようにマップをフィルタリングします。国勢調査細分区 (Block Group) レベルでは、この条件を満たす都市部と郊外部を抽出しますが、最も面積の大きい区画が目立つため、潜在的な解釈バイアスを持ちます。六角形グリッドを使用すると、人口の少ないエリアは除外されるため、結果を解釈しやすくなります。ただし、六角形グリッドは再集計を行った結果であり、集計誤差があることをご注意ください。

六角形グリッドは、単純な区画のため、フィルターの変更やスマート マップ サーチでの変数の追加/削除が高いパフォーマンスで実行できるため、以下が効率よく分析するための順番の例になります。

  • 六角形グリッドを使用して変数間の関係を調査し、データに隠されたパターンを探索
  • 国勢調査細分区 (Block Group) などの標準区画に切り替えて、このパターンが再集計の影響によるものでないかを調査

解析における六角形グリッドの使用例

ArcGIS Business Analyst Web and Mobile Apps の 2024 年 2 月のアップデートにより、アメリカ国内では適合性解析で 15,000 以上の変数すべてに対して六角形グリッドが簡単に利用できるようになりました。

適合性解析は、ユーザーで定義した重み付けモデルをもとに、複数の変数を組み合わせてランク付けを行う機能です。六角形グリッドを利用することで、区画の大きさが異なる影響を排除した分析が可能になります。たとえば、社会科学の分野では、政策の変更を必要とする要因を調べたい場合に、元データの収集方法に関するバイアスを除去したい場合があります。六角形グリッドを使用すると、これが可能になり、様々なスケールでモデルに基づく結果を表示できます。

上記の例は、国勢調査細分区 (Block Group) レベルでの住宅に関する分析です。標準区画をもとにした分析では、面積の大きな区画がマップ上で目立っていますが、解像度 7 (半径 1.2 km) の H3 ヘキサゴンを使用すると、最高スコアと最低スコアの位置がはるかに見やすくなります。

六角形グリッドの使用が適切な場合の例を教えてください。

六角形グリッドの利点の 1 つは、周辺の拠点やクラスターの検索が容易になることです。また、正方形グリッドと異なり、疑似的な直線パターン (linear data artifacts) を生成する傾向もありません。六角形グリッドは、重心間の距離が 6 方向すべてで同じであるため、距離バンドを使用して周辺を検索したり、競合他社などのポイント データを集計したりして、データをグループ化する場合に適しています。特に多くのポイントが互いに重なっている場合に、ポイントを一貫して集約してデータ内のパターンやクラスターを視覚化することができます。一方、正方形グリッドや標準区画は隣接セルとの重心間の距離が異なるため、バイアスを生じさせます。

H3 ヘキサゴンの面積は場所によって変化しますか?

広域にマップを作成する場合、H3 ヘキサゴンを含むグリッド格子の形状には歪みが生じます。BA Web App では、解像度ごとに簡単な説明として、平均的な半径を提供しています。たとえば、解像度 5 の H3 ヘキサゴンの平均的な半径は 8.5 km で平均面積は約 252.9 km 2ですが、これらの値は、場所に応じて変化します。解像度 3 の H3 ヘキサゴンの平均面積は 4,785 マイル2ですが、実際の測地線面積は約 2,300 ~ 5,800 マイル2の間で変化します。

下の例では、解像度 3 の H3 ヘキサゴンを使用してアラスカのマッピングを行っています。投影の影響により、高緯度側の六角形が低緯度側より大きくなっていることが分かります。

異なる空間解像度で六角形を利用する欠点は?

正方形や三角形とは異なり、六角形を別の解像度に分割・結合ことはできません。解像度が異なると六角形の辺は重なり合わず、異なる解像度間でデータの集計または分割時に、割り当てに関する誤差をもたらします。



複数解像度の六角形は、解像度の低い六角形が解像度の高い六角形と重なるため、正方形のように連続した複数サイズのグリッドを形成できません。一方、正方形と三角形は、異なる解像度のポリゴンを使用して、任意の領域をさまざまなサイズのポリゴンに再分割できます。下の図は Uber の提供によるものです (図 11、https://www.uber.com/blog/h3/ )。

二変量スタイルは六角形で使用できますか?他にはどのようなスタイルがありますか?

カラーコードマップの六角形を使用して二変量マッピングが利用できます。このスタイルは、2 つの変数間の関係を理解するのに最適な方法の 1 つです。

点の大きさと色を用いて、2つの変数間の関係をマッピングするテクニックを使用することもできます。下の例は、収入と住宅価値の関係を示すリバーサイド郡のマップです。収入は低い (青) から高い (赤) まで示されており、点のサイズは低い住宅価値 (小) から高い値(大) を表します。収入と住宅価格の両方が高い地域は六角形の中心にある「大きな赤い点」として表示され、低収入で住宅価値の低い地域は「小さな青い点」で表示されます。

ドット密度とは、属性値に基づいて六角形内にドットをランダムに配置する手法です。値が大きいほどドットの数が多くなります。六角形の輪郭を透明になるように調整し、ドット密度を調整することで、余分なセルを描画することなく、六角形はクラスターをよく表現します。

ドット密度にエリアの色を合わせて使用することで、視覚的に理解しやすくなります。以下の例では、収入を 20 のクラスに分類し、連続的な緑色のカラーランプを適用し、境界を非表示にしています。これにより、カラーランプの変化にドットが追加され、値が高い場所が強調されます。

同じデータをカラーランプだけを使用して表示しても、同じインパクトはありません。

六角形グリッドで表示されないエリアがあるのはなぜですか?

Esri は、H3 ヘキサゴンの構築時に、海・森林・砂漠など、誰も住んでいない場所には六角形を表示しないように調整しています。湖や水域に人が住んでいる場合は、その区画は六角形として提供しています。

異なる地域の六角形グリッドを統合できますか?

H3 ヘキサゴンは、重なり合うことが無いように設計されているため、単一のレイヤーに結合できます。たとえば、州の輪郭を解析範囲として使用してアリゾナ州の H3 解像度 6 のマップを作成し、以前に構築した隣接するカリフォルニア州の H3 解像度マップをオーバーレイできます。境界に沿って重複した六角形を削除する必要がある場合がありますが、アリゾナ州の地図の端にある個々の六角形は、カリフォルニアで隣接する六角形に正確に重なります。なお、異なる解像度の H3 ヘキサゴンのマップ (レイヤー) はシームレスに結合できないことに注意してください。

BA Web App の六角形グリッドのデータを Excel にエクスポートできますか?

2024 年 2 月より、適合性解析のデータを Excel にエクスポートできるようになりました。カラーコード マップとスマート マップ サーチでは、六角形データのエクスポートは許可されていません。

Living Atlas of the World のデータを追加して、六角形のマッピングと分析に使用できますか?

六角形グリッドのマップや他のタイプのグリッドが Living Atlas of the World または ArcGIS Online の共有フィーチャ サービスとして利用できる場合は、Web マップおよびレイヤーの追加 の機能を利用してそれらを使用できます。組織内で共有されているフィーチャ サービスも使用できます。

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