六角形グリッドに関するガイド ~ ArcGIS Business Analyst ~:基礎編

本ブログは An authoritative guide to hexagons in Business Analyst: The basics (esri.com) を参考に、日本向けに内容を変更しています。

ArcGIS Business Analyst Web and Mobile Apps の 2024 年 2 月のアップデートで、アメリカにおいて六角形グリッドが使用できる区画に追加されました。この区画はカラーコードマップスマート マップ サーチ適合性解析などに活用できます。この記事では、六角形グリッドの紹介をするとともに、使用するにあたって知っておくべきことを紹介します。

六角形グリッドとは?ArcGIS での利用例

マップ上の特定の範囲をカバーする、規則的な形状のポリゴン(グリッド ポリゴン)を生成する際に、六角形は使用されます。ArcGIS 製品によって作成できるグリッド ポリゴンのタイプは異なりますが、使用される形状は3つの一般的な形状(六角形、正方形、三角形)または、それらを回転してできる形状(六角形(縦)、ひし形)で構成されます。

ArcGIS Business Analyst (以下、BA) 製品では、Pro および Web App の両方で、広く採用されている世界的なグリッド システムである Uber H3 ヘキサゴンを使用します。

製品 六角形を利用する機能
ArcGIS Pro 三角形、正方形、ひし形、六角形、H3 ヘキサゴン、六角形(縦)に
対応します。GeoEnrichment サービスを使用して、
これらの図形に人口統計属性を追加できます。
BA Pro 正方形、六角形、および H3 ヘキサゴンのグリッドを作成する
[グリッドと六角形の生成] ツールを提供します。
ツール実行時に、入力ポリゴンや重心からのバッファー
(道路距離/時間など)に人口統計属性を追加できます。
BA Web Advanced ライセンスを持つユーザー向けに、H3 ヘキサゴンに
事前に集計された人口統計データを提供します。
カラーコード マップスマート マップサーチ適合性分析に利用できます。

六角形グリッドと正方形グリッドのどちらがいいの?

正方形グリッドの場合、構成される正方形の周長と面積の比率が大きく、グリッドの重心から隣接するセル(8つのセル)までの距離が、上下左右のセルと対角線上のセルとで異なるため、サンプリング バイアスが発生します。円は、周長と面積の比率が最も小さくなりますが、すき間なくグリッドを形成することはできません。六角形は、すき間なくグリッドを形成できる円に最も近い形状です。円形に近いため、正方形グリッドのサンプリング バイアスを軽減するとともに、データのパターンが曲線に沿って連続分布する場合も、正方形グリッドより自然な表現が可能です。

また、六角形には、その重心と隣接するセルとの近接性(距離)が一貫しているという特徴があります。この特徴は正方形には当てはまらず、対角線上の点は主軸上の点よりも重心から遠くなります。

六角形グリッドの解像度とは何ですか?

すべてのグリッドは、形状の面積、辺の長さ、または重心から最も近い辺までの半径を定義することによって作成されます。解像度はグリッドがどのように形成されたかを表します。ほとんどの長方形グリッドまたは正方形グリッドは、辺の長さや面積を使用します。たとえば、1km 四方のグリッドの面積は 1km2 で、一辺の長さは 1km です。

H3 ヘキサゴンは、解像度と呼ばれる概念を用いてこれを単純化します。解像度は 0~15 まで 16 段階用意されており、それぞれの平均的な面積や辺の長さが指定されています。これは、H3 ヘキサゴンの解像度を参照することで、面積や辺の長さ、および辺心距離(重心から最も近い辺までの距離)を決定できることを意味します。

BA Web App では、各解像度の簡単な説明として、六角形の内接円の半径でもある「辺心距離」を使用します。解像度 2 の六角形グリッドでマッピングした場合、半径約 158.1km と表示されます。BA Web App では、面積や半径を表現する単位にインチ単位も使用できます。使用する単位は、アプリケーションの初期設定で設定可能です。

以下に、解像度と構成される六角形の平均的な面積と半径をまとめた表を記します。

解像度 平均的な六角形の面積 平均的な六角形の半径(辺心距離)
2 86,802 km2 158.1km
3 12,393 km2 59.7km
4 1,770 km2​ 22.6km
5 252.9 km2​ 8.5km
6 36.1 km2 3.2km
7 5.2 km​2 1.2km

ArcGIS ではどのような六角形の解像度がサポートされていますか?

ArcGIS Pro および BA Pro を使用すると、任意の解像度でユーザー定義の六角形とグリッドを作成できます。テッセレーションの生成 (Generate Tessellation)ツール や グリッドと六角形の生成 (Generate Grids and Hexagons)ツールを通じて、H3 ヘキサゴンの 16 段階すべての解像度をサポートしています。

BA Web App は、解像度 2 (平均半径 158.1km) から解像度 7 (半径 1.2km) まで、6 つの H3 ヘキサゴン解像度でデータを提供します。

六角形のセル ID とは何ですか?

BA Web App の H3 ヘキサゴンは、「8928308280fffff」のような 15 文字 (64 ビット) の 16 進文字列である H3 インデックス名を使用します。各文字列は一意であり、六角形のセル (多角形) とその六角形の重心の両方を参照します。H3 インデックスを左から右に読んでセルの解像度を理解することはできますが、人間にとってはあまり使いやすいものではありません。BA Web App では利便性のために、H3 ヘキサゴンの解像度、H3 インデックス、郵便番号、郡、州などのよく知られた地理的領域がポップアップで表示されます。

以下の例では、解像度 5 と 6 で同じ場所でポップアップを表示しています。H3 インデックスに加えて、郵便番号や州名なども併せて表示されます。

六角形、六角形(縦)、H3 ヘキサゴンの違いは何ですか?

ArcGIS における六角形は、6 つの辺のうち 2 つが水平である六角形を指します。六角形(縦)は 90 度回転され、垂直な 2 つの辺があります。六角形の場合、最も長い寸法は x 軸であり、横六角形の場合は y 軸になります。

ArcGIS で六角形または六角形(縦)を作成する場合、六角形の面積と対象エリアの左下/右上を指定することで、対象エリアが再分割されます。六角形のスケールごとに、六角形のサイズが異なると、異なる六角形グリッドが生成されます。これは、対象領域に六角形全体が収まる必要があるためです。

H3 ヘキサゴン システムは、解像度と呼ばれる 16 の事前定義されたサイズを持つ六角形を使用します。このポリゴンは、すべての解像度にわたって同じ位置合わせと回転に従い、すべてのスケールにわたって一貫したグリッドを提供します。

上の解像度の 7 分の 1 の面積の六角形セルで下の解像度の六角形グリッドは構成されます。六角形の性質上、1 つの六角形を 7 つの小さな六角形に完全に分割することはできないため、より細かい六角形が上のレベルの六角形内に完全に含まれるわけではありません。ただし、上のレベルの六角形と外側の 6 つの囲まれた六角形のそれぞれは共通の頂点を共有します。これは、上の図に示すように、より小さい解像度の 3 つの六角形がより大きい解像度の六角形の頂点で結合することを意味します。 (図は Uber 提供: https://www.uber.com/blog/h3/、図 8)

ArcGIS Business Analyst はどのような六角形を使用しますか?

上で説明したように、H3 ヘキサゴンは BA Pro と BA Web App 上で共通して利用できます。BA Web App は、解像度 2 ~ 7 をサポートし、BA Pro は 16 の解像度すべてをサポートします。H3 ヘキサゴンのマップは BA Pro と Web App の間で共有できます。

また、BA Pro ユーザーは、上で説明したように、独自のグリッドと六角形を作成することもできます。BA Pro を使用して空の六角形格子 (H3、六角形、または六角形(縦)) を作成したり、GeoEnrichment を使用して Esri の人口統計や独自の統計データセットを各グリッドに集計したりできます。BA Pro に作成した六角形グリッドは、BA Web App のワークフロー (色分けされたマップ、スマート マップ検索、適合性分析) で使用できます。

六角形はどの国で利用できますか?

H3 ヘキサゴンは、2024 年 2 月にアメリカのデータセットに導入されました。15,000 以上の人口統計変数がすべて利用可能です。BA Web App の機能とデータ範囲の向上に伴い、他の地域や国も追加される予定です。

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