2025 年 9 月 1 日 に、防災気象情報をリアルタイムに提供する ESRIジャパン データコンテンツ Online Suite 気象オンラインサービス (ゲヒルン版) (以下、「気象オンライン」) に更新版の気象関連レイヤーを追加しました。本ブログ記事では、更新版レイヤーの改善点を中心にご紹介します。
目次
気象オンラインとは?
ESRIジャパンが提供する GIS データ配信サービス「Online Suite」の一部であり、気象庁のリアルタイムな防災気象情報をゲヒルン株式会社から提供を受け、ArcGIS で解析できる形式で配信するものです。データ変換を行うことなく、ArcGIS 上で防災気象情報をすぐに利用できる点が特徴です。すべての情報はフィーチャレイヤーの形式で提供されるため、GIS 上で簡単に空間的な解析を行うことが可能です。
提供コンテンツ
気象オンラインでは後述する、降水情報や災害危険度(キキクル)、台風情報、地震情報など、各種防災気象情報をワンセットで提供しています。また、拡張レイヤーとして「雷情報」の提供も行っています。
降水情報
- 解析雨量
- 高解像度降水ナウキャスト
いずれも降水に関する情報ですが、解析雨量は「過去1時間の降水量分布 (≒降水実績)」を面的に示すデータです。一方、高解像度降水ナウキャストは「現在時刻~1時間先までの降水強度の分布」を予報したもので、内水氾濫などから身を守るための判断材料となります。


災害危険度
- 浸水害の危険度分布(浸水キキクル)
- 洪水警報の危険度分布(洪水キキクル)
- 土砂災害の危険度分布(土砂キキクル)
- 指定河川洪水予報
気象庁から、過去の降水量や予測される降水量をもとに、各種災害リスクを「危険度」として分かりやすく表現した情報が「危険度分布 (キキクル)」として提供されています。この情報は、過去の災害事例を踏まえ、地域ごとに設定された基準に基づいて作成されています。土砂災害、浸水害、中小河川の洪水災害に対応した情報があり、大河川については「指定河川洪水予報」が提供されます。



気象警報等
- 気象特別警報・警報・注意報
- 早期注意情報
- 土砂災害警戒情報
災害の発生のおそれを表す「気象警報・注意報」や、警報級の現象が5日先までに予想されるときに発表される「早期注意情報」、避難指示の発令や避難判断を支援する「土砂災害警戒情報」を提供します。



台風・地震情報
- 台風解析・予報情報 (5 日予報)
- 地震情報 (震源、震度情報)
- 推計震度分布
台風情報では、台風進路や中心位置に関する実況および予報の位置情報、名称・最大風速・中心気圧などを5日先まで提供します。地震情報では、震源情報や細分区域・市町村等・観測地点までの震度情報に加え、震度5弱以上を観測した地震においては、気象庁が推計した 250m メッシュ単位の面的な「推計震度分布」も提供します。



更新版レイヤーの改善点
今回のアップデートでは、上記提供コンテンツのうち、降水情報・災害危険度・気象警報等に関する更新版レイヤーを新たに提供します。更新版レイヤーの改善点は以下の通りです。なお、台風情報と地震情報は 2023 年に先行して更新版レイヤーの提供を実施しております。
① データ提供までのタイムラグの削減
地震情報などは既に対応済みでしたが、気象関連のレイヤーに関しても、一定時間ごとの定期的なデータ処理から、新しいデータが格納され次第、処理を開始する方式に変更しています。また、気象警報等のデータに関しては、今まで 10 分ごとに処理を行っていた間隔を 5 分ごとに変更することで、データ提供までのタイムラグを削減させています。
② 時刻フィールドの統一
従来、異なるアプリケーションからの利用に対応するため UTC(協定世界時)と JST(日本標準時)を格納した複数の時刻フィールドを保持していました。更新版レイヤーでは、各レイヤーに優先タイムゾーンを設定することで単一の時刻フィールドで、各アプリケーション上で JST (日本標準時) のみを表示できるようになりました。
③ 過去1時間を振り返れるレイヤーを追加
最新時刻から過去1時間の降水量や災害危険度などを振り返って把握できる、タイムスライダー対応のレイヤーを新たに追加しました。これにより、災害発生時に降水量や災害危険度の変化を把握することができるようになりました。
既存レイヤーの対応について
時刻フィールドの統一の影響により、更新版レイヤーは既存レイヤーと異なるスキーマを保持しています。そのため、更新版レイヤーを別レイヤーとは別のレイヤーとして新たに追加する対応を行いました。既存レイヤーについては、名称に「Classic」を付与し、2026 年 12 月末まで並行して稼働する予定です。すでに気象オンラインをご利用中のお客様は、配信終了までの期間内に「Classic」の名称が付いていない更新版レイヤーへの切り替え準備および移行作業をお願いいたします。
気象オンラインは、今後も提供レイヤーの更新や追加などを行っていく予定です。どうぞご期待ください。