連日テレビなどで報道される「震度 4 の地域は ** です」とか「本日の計画停電の対象地域は ** です」といった情報には必ず「位置」というものが含まれています。この位置情報はその地域の出身者であったり、土地勘があったりする方にはすぐに伝わるかもしれませんが、土地勘がない方には文字情報だけでは伝わりにくいものです。位置を視覚的に把握するにはやはり地図上に描くのが最も分かりやすい方法です。
位置情報には大きく分けると、
・「東経 139 度 44 分 26 秒、北緯 35 度 40 分 45 秒(ESRIジャパン本社付近の経緯度)」といった座標情報
・「東京都千代田区平河町 2-7-1(ESRIジャパン本社住所)」といった住所情報
があります。これらのうち、住所情報から地図上にその位置をポイントとして展開することをアドレスマッチングといいます。
アドレスマッチングを行うには
ArcGIS でアドレスマッチングを行うには、ArcGISデータコレクション スタンダードパック2010 の DISK 4「全国街区住所」に付属の住所マネージャと住所データベースを使用すると便利です。
住所マネージャをインストールすると、以下のようなツールバーが追加されます。
※住所マネージャおよび住所データベースのインストール方法については、ArcGISデータコレクション スタンダードパック2010 に付属の「住所マネージャ_ご利用手順書_v10.pdf(ArcGIS 10 用)」もしくは「住所マネージャ_ご利用手順書_v93.pdf(ArcGIS 9.3/9.3.1 用)」をご覧ください。
住所マネージャの機能
[住所 DB 設定] ボタンで、住所データベースを設定することができます。住所データベースをインストールすると、そのデータベースを使用するようにデフォルトで設定されますが、正しく設定されていない場合はこのボタンから手動で設定することができます。
その右にある [住所検索] ボタン を使用すると、手入力による住所に対して該当する住所の候補を複数表示し、その位置を表示することができます。
住所の候補には「マッチ レベル」というものがあり、1~5 の数値で示されます。数値が高いほど、入力した住所に対してより詳細レベルでマッチしたことを意味します。
マッチ レベル:
1:都道府県レベル
2:市区町村レベル
3:大字・町丁目レベル
4:番・番地レベル
5:号レベル(ArcGISデータコレクション スタンダードバックに付属の住所データベースでは号レベルまではマッチしません)
ツールバーの一番右にある [住所ジオコーダ] ボタン を使用すると、住所情報を保存しているテキスト ファイルや Excel ファイルをまとめてアドレスマッチングを行い、ポイント データとして作成することができます。多くの住所情報を一挙に地図上に展開するにはこのツールが便利です。
ではサンプルデータを使用して実際にアドレスマッチングを行ってみます。今回は、住所データの無料ダウンロードサイトである「住所.jp」から岩手県の住所データ(CSV 形式)をダウンロードし、アドレスマッチングを行います。住所データには主な事業所データおよび事業所住所も含まれており、今回は事業所が含まれているレコードのみを取り出したファイルを使用します。
サンプルデータのダウンロードはこちら
データの準備
ファイルの中身を Excel で開くと、事業所住所には都道府県名や市区町村名が含まれておらず、それらは別の列に含まれています。都道府県名が含まれていなくとも住所ジオコーダを使用してアドレスマッチングを行うことができますが、精度良くアドレスマッチングを行うには、県名や市区町村名を含む住所を作成することが重要です。これは Excel の計算機能を使用すれば簡単に行えます。
Excel の文字列結合機能(&)を使って新しい列に県名や市区町村名を含む住所を作成
<事業所住所_修正のセル>には、”=<都道府県のセル>&<市区町村のセル>&<事業所住所のセル>” と入力
住所マネージャを使用してアドレスマッチングを行う
住所データの準備ができたら、住所マネージャの住所ジオコーダ機能を使用してアドレスマッチングを行います。
[住所ジオコーダ] ボタンをクリックすると下記ウィンドウが表示されますので、以下の通りに入力情報を指定して [OK] をクリックします。
入力データ:
・入力テーブル:作成した CSV ファイル(住所を含むテーブル)。データ形式は dBase、Excel、Access、パーソナルジオデータベース/ファイルジオデータベースのテーブルにも対応します
・住所フィールド:住所を含むフィールド
出力データ:
・出力先:出力データ。データ形式はシェープファイル、パーソナルジオデータベース、ファイルジオデータベースに対応します
・測地系/座標系:出力座標系。世界測地系か日本測地系を選択することができます
詳細設定:
・変換対象の条件設定(全レコードを変換するか、指定したマッチレベル以上のレコードのみ変換するか)
変換結果
変換が終了すると、作成されたデータが ArcMap に追加されます。出力データの属性テーブルには、住所データでマッチしたレコードの住所を表す “正規化住所” フィールド(実フィールド名は “Out_ADDR”)と、マッチレベルを表す “マッチレベル” フィールド(実フィールド名は “MatchLV”)が追加され、各レコードがどの程度マッチしたかを見ることができます。
ArcGISデータコレクション スタンダードバックに付属の住所データベースでは号レベルまではマッチしないため実際の事業所の位置にポイントを作成することはできませんが、ポイントのおおまかな分布状況を見るには非常に便利です。また市区町村界ポリゴンがあれば、そのポリゴンデータと空間結合を行うことによって、市区町村ごとの集計等を行うこともできます。
さらに詳細なアドレスマッチングを行うには
“号レベルでアドレスマッチングを行いたい” という方は、2011 年 4 月末リリース予定の「ArcGISデータコレクション プレミアムシリーズ 住居レベル住所」をご利用いただくことによってより詳細なアドレスマッチングを行うことが可能になります。リリース情報については ESRIジャパン製品ページをご覧ください。