ArcGIS Insights を使った新型コロナウイルスの解析事例

新型コロナウイルスによるパンデミックは、政府、企業、個人に前例のない課題をもたらしました。このような危機的な状況下では、データから迅速に正しい道筋を見つける能力が重要になります。新型コロナウイルスの感染拡大防止に対応する組織・団体様は、新型コロナウイルス対応支援パッケージを通じて、さまざまなアプリやサービスを利用することができます。最近、利用可能なアプリに追加されたのは、セルフサービスのデータ解析および可視化ツールである ArcGIS Insights (以下、Insights と表記) です。Insights を使用すると、空間分析、統計分析、予測分析、およびリンク分析を実行し、その結果を組織や一般の人々と共有することができます。本ブログでは、イギリスでの Insights を使った解析事例を紹介したいと思います。

ArcGIS Insights for COVID-19 Analytics

この事例では、NHS  (National Health Service)PHE (Public Health England) が公開しているオープンデータを使って以下のような疑問を Insights で解析しています。

・どの一般診療所 (GP) が最もリスクの高い患者にサービスを提供しているか?

・地理的関係が意思決定にどのように影響するか?

解析では、まず英国エセックス郡の一般診療所のデータといくつかの主要な指標のデータを入手し ArcGIS Pro を使ってそれらのデータを統合し ArcGIS Online に公開しました。これによって Insights で解析する準備が整いました。

まず診療所の所在地を地図に可視化しました。しかしこれだけでは、このデータは私たちに有益な情報を教えてくれません。私たちは、一般的に高齢者が病気の高いリスクにさらされていることを知っているので、75 歳以上の患者の割合でデータを表示してみます。

これで診療所の患者数を比較する手段が得られましたが、年齢に加えて、特定の基礎疾患を持つ人は感染すると合併症のリスクが高くなることがわかっています。上記の図からわかるように、データには、がん、慢性心臓病 (CHD) 、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) 、糖尿病、高血圧の有病率の属性があります。この情報を別々のフィールドに分けて意味を持たせるのは少し難しいですが、健康に関わる指標を合計して新しいフィールドを追加して計算すると、診療所のリスクの高い患者の集団を比較するためのより全体的な傾向をつかむことができます。

今回のパンデミックは、身体的な健康の問題だけでなく長期的な外出の禁止や自粛など日常生活への新たな制約により、私たちの精神的な健康にも悪影響を及ぼす可能性があると考えられています。そこでメンタルヘルス、介護問題、失業に関する情報を使用することで、メンタルヘルス上の問題のリスクの高い人々のうち、どの診療所がより多くの患者にサービスを提供している可能性があるかを特定することができます。これらのレイヤーを同時に地図上に表示することで、診療所のデータをより有効に活用することができます。

Insights は、データの分析を迅速に実行できるツールを備えています。例えば、ウィルスの拡散を抑えるためにいくつかの診療所が閉鎖を余儀なくされた場合、どの診療所が「ハブ」となっているのか、他のどの診療所が最も近い場所にあるのかを知ることは非常に重要です。最寄りの検索ツールは、各診療所と最も近い施設との距離を表すラインデータセットを生成します。このツールを実行すると、どの診療所がハブとなっているか、より多くの患者が容易にアクセスできる施設がどこかを示唆するパターンがデータに現れます。

最後により詳細にデータを探索できるようにサマリーテーブルを追加したところ、最終的には下図のような解析結果となりました。

この解析は、Insights の活用例を示すことを目的としてまとめられたものであり、権威ある情報源とはみなされないことにご注意ください。そしてこのブログ記事が、読者の方にいくつかのアイデアを提供できたら幸いです。もっと ArcGIS Insights の使い方を知りたい方は、Learn ArcGIS の Insights を参照してください。この機会に ArcGIS Insights による「場所」という観点を使った新しい解析に是非ご活用ください!

※本ブログは、esri UK & Ireland の GeoXchange の記事 ArcGIS Insights for COVID-19 Analytics を翻訳し加筆したものです。

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