米国時間 2022 年 8 月 11 日 (日本時間 2022 年 8 月 12 日) に、ArcGIS Pro をベースにした商圏分析・エリアマーケティング特化型アプリケーション「ArcGIS Business Analyst Pro」 (以下「BA Pro」) の最新バージョン 3.0 をリリースしました。今回のバージョン アップの内容をご紹介します。
ArcGIS Pro 3.0 以降では、新しい形式のロケーターのみ対応となり ArcGIS Business Analyst 用 2022 年版データに付属する従来形式のロケーターでは動作しなくなります。ロケーターを使用する住所のジオコーディングを行う必要のあるユーザーは、3.0 へのアップデートをしないようにお願いします。
なお、新しい形式のロケーターを搭載した 2023 年版データは年内リリースの予定です。
グリッドおよび六角形の生成ツール
新しく「グリッドおよび六角形の生成」ツールが追加されました。指定したエリア内に、正方形グリッド、六角形、H3 六角形 (※) のいずれかを作成できます。また、作成したポリゴンに任意の人口統計変数を集計するだけでなく、ポリゴンの重心を起点としたバッファーを生成し、バッファーに対して任意の人口統計変数を集計した結果をポリゴンに付与することもできます。
なお、六角形などの規則的な形状のグリッドに集約することで、均一なポリゴンで主題を表現し、一目で全体的な傾向を把握できるようになります。また、六角形の方が円に近い形状をしているため、グリッドと比較してバイアスが低下してデータに含まれる曲線的な傾向をより自然に表現できます。そのため解析に接続性や移動のパス要素がある場合に六角形のグリッドをお勧めします。詳しくは「六角形を使用する理由」をご確認ください。
※ Uber の六角形階層型空間インデックスに基づき生成される正六角形
テリトリー デザインの品質改善
テリトリー デザインは、営業管轄エリアやデリバリー エリアなどにおいて、なるべくテリトリーをコンパクトにしつつ、そこに紐づく属性 (営業ノルマや世帯数など) を均等になるようにテリトリーを作成・管理することができる解析機能です。
本バージョンでは、テリトリーの解析を実行する際のアルゴリズムが拡張され、新たに「遺伝的」アルゴリズムが追加されました。遺伝的アルゴリズムを利用すると、解析時間は長くなる傾向にありますが、距離や属性を使用したバランス調整やバリアなどの複雑な制限を設定しているテリトリーに対して、より正確な結果を求めることができます。
新しいレポート テンプレートが利用可能に
以下のツールについて、新しいレポート テンプレートを利用できるようになりました。ベーシックな表形式からインフォグラフィックスのようなレイアウトに刷新されており、重要な情報が強調表示されて分かりやすくなっています。
なお、現在ではこれらのテンプレートは英語表記で出力されますが、ArcGIS Business Analyst 2023 年版データのリリース時に日本語表記のテンプレートを提供予定です。
市場占有率の計算ツールは、エリア内の人口統計変数に対する顧客の数に基づいて、市場占有率を計算します。また市場占有率を詳細に記載したレポートも作成できます。本リリースでは、レポート内にマップが生成され、グリッド内の各エリアの占有率がカラーコードで表現できるようになります。またポイントの総数や占有率の中央値などの分析概要を瞬時に把握できるようにもなります。
近傍の位置の検索は、選択した距離タイプに基づき、サイト (店舗や施設) に最も近いロケーション ポイントを選択するツールです。ロケーション ポイントの数は、サイトからの距離や抽出する最大ロケーション ポイント数、割合を指定することで制限できます。本リリースでは、従来のレポート テンプレートより詳細な情報を掲載したレポートが出力されるようになります。
オーバーラップ測定ツールは、2 つ以上のポリゴンのオーバーラップ量を計算するツールです。オーバーラップは、ポリゴンの交差部分上の範囲を示します。本リリースでは、オーバーラップ領域に関するより詳細な情報がレポートに記載されるようになります。
上記 3 点のレポート テンプレートの詳しい説明については ArcGIS リソース集に近日掲載予定です。なお、BA Pro を使用して作成したレポート等の配布については注意事項がございます。詳しくはこちらをご一読ください。
データセットの接続
ArcGIS Pro のオプションに新しく [Business Analyst] オプションが追加され、任意の場所に配置したオフライン データの設定ファイル (dataset_description.xml) に直接接続できる機能が追加されました。これにより、データセットをローカルにインストールすることなく Business Analyst 解析時のデータ ソースとして利用できるようになります。
残念ながら、現在の最新データである 2022 年版データでは本機能はご利用できませんが、次バージョンである 2023 年版データから利用可能なように開発を行っておりますのでご期待ください。
おわりに
より強力になった BA Pro 3.0 を是非ご活用ください!