人流データ、結局どれを使えばいい?大事なのは“何に使うか”

「人流データ」とは、各種センサーやスマホなどの端末の位置情報をもとに人が“いつ・どこに・どれだけ”いるのかを統計化したデータの総称です。観光・まちづくり・交通・防災・商圏分析などで、混雑の把握、来訪の可視化、回遊や OD (発地×着地) の分析に使われます。本ブログ記事では、人流データの主要なタイプとその特徴を整理し、細かな仕様の比較ではなく「目的に応じてどのデータを使うべきか」を紹介します。

測位方式ごとの“性格”をつかむ

同じ “人流データ” でも、どの縮尺で景色を見るかによって選ぶ相棒は変わります。人流データの計測方法の種類を紹介しつつ、それぞれの性格をサクッと押さえます。空間粒度・時間粒度が細かければ良いわけでは無く、目的に応じて適切な方式のデータを選ぶことが重要です。

基地局データ = “広く・安定” で効く

スマホが基地局と通信した履歴をもとに作成される人流データです。スマホの電源さえ入っていれば計測対象に含まれるため、母数が大きく、絶対数や時系列の増減を安定して把握できる点が最大の強みです。反面、お店ごとの来訪や個別の動線は細かく出すことは難しい傾向にあります。(代表的な仕様の目安:空間粒度 250 ~ 500m、時間粒度 1 時間)

GPS データ = “細かく・近く” を覗き込む

アプリ経由の緯度経度ログをもとに作成する人流データです。GPS ログを利用するため、来訪判定・周遊・OD (発地×着地) など細かい動線把握まで踏み込めます。ただし、基地局データと比べると母数は比較的少なく、アプリの種類や OS の仕様によって取得数が変動しやすいという特性があります。(代表的な仕様の目安:空間粒度 ポイント/125 〜 500m、時間粒度 数分~ 1 時間)

Wi-Fi = 屋内は任せろ、でも屋外は苦手

Wi-Fi のアクセスポイントを基準に滞在や移動を推定する人流データです。駅・モール・イベント会場の混雑や動きを把握するには効果的ですが、位置はアクセスポイント基準のため GPS ほどの精度は出せないと言われています。また、Wi-Fi アクセスポイントの少ない屋外では位置情報の取得が不安定となり、補完役として使うのが現実的です。

主要人流データのざっくり比較

ここでは GIS データストア人流データカテゴリーに掲載されている代表的・標準的な人流データのみを対象に比較します。オプションで追加できる仕様や未掲載のデータは含まれておらず、世の中のすべての人流データを網羅した表ではない点にご注意ください。

名称データ提供元測位方式空間粒度 (代表)時間粒度 (代表)標準で扱える種別
モバイル空間統計株式会社ドコモ・インサイトマーケティング基地局500m メッシュ (一部 250m メッシュ)1 時間滞在中心 (到着/出発などを含む場合あり)
KDDI Location DataKDDI株式会社GPS125m〜500m メッシュ15 分~ 1 時間滞在・来訪・OD・周遊など
ポイント型/メッシュ型 流動人口データ株式会社AgoopGPSポイント/50m〜1km メッシュ15 分~ 1 時間滞在・来訪・OD・周遊など
Geo-People: 高精度人流データジオテクノロジーズ株式会社GPSポイント/125〜250m メッシュ15 分~ 1 時間滞在・来訪・OD・周遊など

表から分かるように、測位方式の違いが空間粒度・時間粒度・得意な分析内容に直結することが分かります。GPS データを基にした人流データは、細かな行動分析が得意ですが、母数は基地局データの方が圧倒的に多いため、データの信頼性や値の妥当性にも配慮が必要です。

人流データ 選択のコツ

いろいろな種類がある人流データですが、どのように選択したら良いのでしょうか?一つの案としては、以下のようにチェックする方法があります。

  • 目的を 1 行で書く (例:◯◯駅周辺でイベント時の来訪と回遊を把握)
    • 目的が人流の傾向 (増減・分布) なら → 基地局中心
    • 目的が来訪・滞在・回遊・OD など行動の細部なら → GPS 中心
    • 目的が屋内混雑やフロア内動線なら → GPS + 必要に応じて Wi-Fi
  • 空間粒度を決める
    • 500m 〜レベルで十分 → 基地局が安定 (絶対数に強い)
    • 125〜250m or ポイントで欲しい → GPS (細かなデータが取得可能)
  • 時間粒度を決める
    • 1 時間単位で十分 → 基地局 or GPS (どちらも対応、母数安定は基地局)
    • 15 分〜単位で波形を追いたい → GPS 中心
  • 必要な属性 (性別・年代) を決める

シーン別の選び方

もう少し具体的に「このようなシーンには、このような人流がおすすめ」となるように紹介します。ただし、必要な要件は案件ごとに異なるため、あくまでも一例としてとらえていただければと思います。

A. 広域の人口動態や“増えた/減った”の波を見たい

推奨:基地局
理由:母数が大きく、時系列の増減や広域の傾向を安定把握
GIS 活用:500m/250m メッシュのヒートマップで平日/休日・季節差を可視化

B. 商圏内の人口を把握したい (昼間・夜間人口の把握)

推奨:基地局、GPS
理由:基地局データは、契約情報にもとづく性別・年代×常住人口の推定が安定しており、商圏内の“基礎需要”を最も精度よく算出可能。増減の傾向が分かれば十分なら GPS でも OK。
GIS 活用:商圏ポリゴンに対して人流データの集計処理を実施して、昼夜差を可視化

C. 商業施設や観光拠点の“来訪”を細かく測りたい

推奨:GPS
理由:来訪判定・前後の立ち寄り・滞在など、行動の細部を直接扱える
GIS 活用:ポイント データを用いた分析や、メッシュ集計データをもとに時間帯別来訪を可視化

D. 回遊・動線 (経路、所要、速度)

推奨:GPS
理由:経路・滞在まで追える。
GIS 活用:ライン化、集計で移動・滞留の型を可視化

人流データは GIS に載せるまでが本番

人流データを “いざ GIS で扱おう” としたときに、最初にぶつかる壁はとにかく取り込みが大変という点です。ここでは、実務でよく起きる苦労ポイントだけを率直に整理します。

  • 提供形式は CSV が中心:行数が膨大で、開くだけでも重く、整形が手作業になりがち。
  • GIS 化に前処理が必須:メッシュコード・緯度経度・秘匿値など、そのままでは地図に載らない “表データ”。縦長のデータを横長に加工しないと GIS のレイヤーとして扱えない。
  • データ量が圧倒的に多い:時系列×空間×属性が掛け算になるため、簡単に数百万〜数千万行に到達し、PC スペックによっては固まることも日常茶飯事。
  • 毎月・毎週データが届くと運用負荷が跳ね上がる:更新のたびに“取り込み→加工→ GIS 化”のルーティンが発生し、属人的になりやすい。
  • ArcGIS なら大容量も比較的扱えるが、それでも簡単ではない:操作に慣れていないと、読み込み/フィールド演算/結合の段階でつまずきがち。

“自分で GIS 化しない” という選択肢もある

上記のように GIS データ化することに苦労することの多い人流データですが、自分で GIS 化しない方法として Online Suite 人流データ オンラインサービス (KDDI Location Data 版) を利用する選択肢もあります。GPS データを基にした KDDI Location Data を用いて、月平均の人流を毎月更新し、ユーザーは取り込み作業なしで利用できるという性格のサービスです。ArcGIS 上で見るだけでなく、商圏に対しての人流データを集計し、インフォグラフィックスとして出力することも可能です。

まとめ

今回は人流のタイプ別に特徴や選択時のコツについて紹介しました。具体的に「この案件にはどの人流を使えばよいか」を考える際に、少しでもヒントになりましたら幸いです。どのデータを使ったらよいか迷うという方は、GIS データストアをご確認の上、お問い合わせください。

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