ArcGIS で使う建物データ完全ガイド

建物データ、それは GIS の中でも利用価値が高いデータの一つ

地図に描かれた一つの建物、それは単なる四角い図形ではありません。
用途、高さ、構造・・・そうした情報を持つ図形は、地図に家屋を表示するために使われるだけでなく、エリア内に存在する「ある条件の建物」をカウントする、といった分析にも利用されます。
日本全国に約 6,000 万棟あると言われる建物構造物。地域の、詳細な分析をしたいなら建物の存在なしには分析は進みません。

では、GIS で建物データを利用するには?建物データにはいったいどのようなものがあるのか?
このブログを読めば、あなたも今日から建物データ マスターです。

データ形状と用途での使い分け

建物データは、形状 (ジオメトリ) からポリゴン (建物形状) ポイント (POI) の 2 種類に分類できます。どちらが必要なのかは他の地物との重なりを見たいのか、単純に数が分かればよいのかによって決まってきます。

ポリゴン (建物形状) データ

  • 特徴
    • 建物の外形を持つデータ
    • データ容量が大きくなりがち
    • 面積を出したい場合や地物の重なりを解析するのに向いている
  • 用途
    • 地図表示 (背景地図)
    • 面積・重なり分析
    • 建物の集計 (棟数・密度)
    • 3D 表現 (ArcGIS Pro シーン)

基盤地図情報は基準点、標高点、行政区画及び代表点、道路縁、軌道中心線 (鉄道)、海岸線、水涯線、建築物 (ポリゴンあり) などが利用できます。数値地図はそれらに地図表現するための要素が加わっており、日本地図センターより 1 メッシュ 483 円 (2026 年 8 月時点) で購入できます (詳しくは電子国土基本図 地図情報 ファイル仕様書参照)。

ポイント (建物・施設) データ

  • 特徴
    • 建物の位置 (代表点) のみを持つ
    • データがポリゴンより軽量ですむ
    • 建物の有無や任意のエリア内の数量を計測するのに向いている
    • 属性として面積 (延べ床面積など) を持っているデータもある
  • 用途
    • 施設検索
    • ヒートマップ分析
    • 建物の集計 (棟数・密度)
    • 属性分析

背景地図に収録されている「建物形状」データの特徴

建物形状が必要な場合は、多くが背景地図製品を利用することになります。地図ベンダーによって属性の整備内容が少しずつ異なるほか、整備エリア = 建物収録範囲にも少し違いがあります。

その建物が個人の家屋なのか、事業用の建物なのか・・・それらを判別するための属性を持っている製品と、そうでない製品があります。ここではどれを使えば欲しい種別が絞り込みやすいのか、比較してみましょう。

ArcGIS Geo Suite 都市地図

  • 建物を全国カバー (道路の面表現などのカバーは約 1,200 市区町村。年々整備範囲は拡大)
  • 28 の分類種別で建物を区分 (ホテル、デパート、駅ビル、倉庫、学校、病院、官公庁、集合住宅など)
  • 地図調整された背景地図製品としても利用可能
  • 全国、または都道府県単位で利用可能

MapFanDB 由来のより細かな建物分類を持っていることが特徴 (一般住宅は未調査・作業中扱い)。属性がデータベース化されているため抽出、検索に扱いやすい。
追加オプションの購入で建物の高さデータを利用できるので、高さが必要ならこのデータ。背景地図として利用しない場合、建物データ単体での購入も応相談。

ArcGIS Geo Suite 詳細地図

  • 約 1,300 都市をカバー (一部地域では建物未収録)、年々整備範囲は拡大
  • 建物の階数 (≒高さ)、10 の大分類の種別で建物を区分 (宿泊、商業、学校、医療、公共など)
  • 地図調整された背景地図製品としても利用可能
  • 全国、または地方単位で利用可能

Zmap-AREAⅡ由来の建物の利用用途分類を収録。 建物の分類は大分類クラスだが、広範囲のエリアで 1 人または少人数で利用するなら他の製品より価格面で優れており、導入しやすい。
表札情報が必要な場合は詳細情報を持つ Zmap-TOWNⅡを利用することになります。

GEOSPACE 電子地図

  • 一部島嶼部を除く全国をカバー
  • 13 の分類種別で建物を区分(宿泊、商業、学校、官公庁、病院、集合住宅など)
  • 全国、都道府県、市町村単位で利用可能

印刷制限や二次利用制限のない地図データ。衛星画像 (航空写真含む) と重ね合わせた利用も関連製品の GEOSPACE CDS なら可能になります。
GEOSPACE 電子地図 (シェープ ファイル) には地図設定ファイルは同梱していないので注意が必要です。

Zmap-TOWNⅡ

  • 全国をカバー
  • 建物名称、表札情報を収録
  • 建物の分類は、個人の家屋 / 事業所 / 名称のある建物 (ビル・マンション・アパート・団地等) / 目標物 / 準目標物
  • 別属性によって無壁舎の判別が可能
  • 市区町村単位で購入可能

住宅地図由来の建物分類を収録、表札情報が必要な場合に必須となるデータ。GIS で利用するには変換ツールを利用する必要がありますが、ArcGIS では変換ツールを用意しているので、簡単な操作で地図調整された住宅地図として利用できるようになります。

基盤地図情報 / 数値地図 (オープンデータ)

  • 全国をカバー (提供は 2 次メッシュ単位)
  • 基盤地図情報ダウンロードサービスからダウンロードして利用可能
  • 建物の利用用途を分類する属性はなし
  • 整備縮尺:1/2500 ~ 1/25000 で都市計画区域外での精度は低め (都市計画域内が 2.5m 以内に対して都市計画区域外は 25m 以内)

国土地理院が整備し、公開しているオープンデータ。費用を抑えたい場合や市区町村よりも狭いエリアを対象としたい場合にはぴったりだが、ユーザー自身でダウンロード・加工が必要なデータであり、民間施設に関する属性は乏しい。
数値地図の全国分の建物を ArcGIS ですぐにご利用されたい方は、ESRIジャパンより提供が可能ですのでご相談ください。

軽量ベースマップに収録される建物データとは

ArcGIS Geo Suite やそのほかの背景地図製品に収録している建物データを紹介してきましたが、スターターパックにも一部建物データが収録されています。
データ基本仕様書を見ると十分使えそうに見えるかもしれませんが・・・これらの製品の建物データは、主要な目標物を収録しているだけであり、任意のエリアで網羅的に建物を利用する用途では不向きです。そのため、以降ではこれらの製品との比較は割愛します。

スターターパック 公共地図 / 広域地図

  • 公共地図:数値地図の主要な建物のみ収録。建物の利用種別ではなく、建物構造 (堅ろう、無壁舎など) の分類がある
  • 広域地図:詳細地図の主要な建物のみ収録。建物の種別属性による分類はなし。

形状は必要ない。とにかく建物の属性だけで利用する「建物ポイント」データ

もし建物形状は不要で、建物の利用用途だけで十分であれば建物ポイントデータに勝るものなし!

建物ポイントデータ / 住宅ポイントデータ

  • 建物種別 (タイプ)、延べ床面積などの属性を収録。複合施設、雑居ビルにも対応
    • 住居であれば、戸建て・マンション・アパートなど計 7 項目
    • 事業所であれば、飲食店・学校・病院 など計 27 項目
    • 商業施設であれば、商業ビル・オフィスビルなど計 4 項目のトータル 38 項目に細分化

住宅地図をベースにした全国約 3,900 万棟のデータを利用できます。住宅のみを対象としたい場合は住宅ポイントデータを、オフィスビル・商業ビルなども対象としたい場合は建物ポイントデータを利用するとよいでしょう。

建物の高さを使う、3D で利用したい

形状や建物種別 (用途) について見てきましたが、最後に建物の高さを持ったデータについて。
これらの建物ポリゴンは、高さ属性を使って 3D へ立ち上げが可能です。

ArcGIS Geo Suite 都市地図

  • 別売りオプション (テーブル データ) の購入で、実数値の高さを付与可能です。

ArcGIS Geo Suite 詳細地図

  • 階数から推定した高さ区分が利用可能です。

数値地図 (3 次元電子国土基本図) ※オープンデータ

  • DSM 由来の高さをもった建物ポリゴン
  • 公開エリアは 2026 年時点ではごくわずかで 2029 年までに順次整備予定

Google Photorealistic 3D (ArcGIS Online 3D シーン ベースマップ)

  • フォトリアルな 3D 都市表現
  • 主用途:見た目・プレゼン (インパクト重視)
  • データソース:Google
  • 提供範囲:49 か国・2,500 都市以上
  • ArcGIS の「シーン」で利用可能

世界規模でリアルな 3D 表現が可能。ArcGIS Online にはすでに 3D 化されたレイヤーが公開されており、ベータ版運用 (2026 年 8 月現在) ながら無料で利用可能。

PLATEAU (ArcGIS Living Atlas)

  • 国土交通省が整備
  • 主用途:見通し解析・高さ解析などの 3D 分析
  • 提供範囲:国内 192 都市 (Living Atlas 登録分)

整備範囲、提供年度は限定的だが、現実との整合度が高く、日本国内で解析利用が可能。

Esri 3D Buildings (ArcGIS Online 3D シーン ベースマップ)

  • ソース:Overture Map 等
  • 主用途:全球カバーの建物データ
  • 提供範囲:全世界

オープンデータ由来。外観のテクスチャがなく、現実との整合度は Google Photorealistic や PLATEAU には劣るが、全球カバーという利点。

まとめ

建物データの使い分け

  • 建物データはポリゴンとポイントの2種類があり、
    • 地図に形状を表示したいならポリゴン
    • 建物の有無、集計をするだけならポイント
    • 空間的な重なりも含む分析をしたいならポリゴン
  • 各製品間でカバー範囲や属性の詳細度が異なり、
    • カバー範囲:Zmap-TOWNⅡ、都市地図、数値地図、GEOSPACE > 詳細地図
    • 建物種別の詳細度:建物ポイントデータ > 都市地図、GEOSPACE > 詳細地図 > Zmap-TOWNⅡ > 数値地図

3D データで利用する場合の使い分け

Google Photorealistic 3D では樹木なども 3D 表現されている

  • 見た目重視
    • Google Photorealistic 3D > PLATEAU > Esri 3D Buildings
  • 解析用途
    • PLATEAU
  • カバー範囲
    • Esri 3D Buildings > Google Photorealistic 3D > PLATEAU

(参考) 数値地図が持つ建物構造とは

数値地図が持っているのは建物の利用用途ではなく建物構造による分類ですが、建築物標準作業手順書 (国土交通省) によればこんな分類があるそうです。

  • 普通建物 (3F 未満および 3F 以上の木造等)
  • 普通無壁舎 (側壁がないもの、温室および工場内の構築物で、3F 未満)
  • 堅ろう建物 (鉄筋コンクリート等の 3F 以上の高さのもの)
  • 堅ろう無壁舎 (側壁がないもの等 3F 以上の高さのもの)
  • 高層建物 (※手順書内に定義なし)

つまり、数値地図の建物構造を使うとある程度の高さ、階数は数値地図でもわかる、ということになります。

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