フィールドワーク型ワークショップを支えるしくみの実践 ~気づきの共有とオープンデータ活用を促進~

フィールドワーク型のワークショップを効果的に進めるしくみ

オープンデータ活用や新規サービス創出などの切り口で、近年、フィールドワーク型のワークショップが頻繁に開催されるようになりました。フィールドワーク型のワークショップでは、実際に現地に赴いてその地域の様子を写真やメモに残したり、ときには地域の方にインタビューしたりすることで、既存の資料やデータのみでは分からなかった気づきを拾い上げます。ワークショップ会場に戻った後は、その結果を付箋に書き出すなどしてチーム内で共有し、いっそう深い知識を創出することが一般的な流れです。

このようなワークショップでは現地を歩いて回ることになるため、地理情報をうまく活用することでワークショップの実施効果がいっそう高まります。そこで、ESRIジャパンにて、フィールドワーク型のワークショップを効果的に進めるためのツールを試作しました。

このツールは、Web 上のマップを用いることで、「現地での情報収集」→「ワークショップ会場での気付きの追加」→「フィールドワーク結果の全体共有」→「成果データの活用」という、ワークショップの一連のステップを円滑かつ効果的に進めることを目指しています。具体的には、ワークショップ専用のポータルサイトを作成し、このポータルサイトから、各ステップの目的に特化したアプリケーション群にアクセスできるようにした仕組みです。あわせて、スマートフォンの操作に不慣れな方も参加しやすくなるよう、帳票型の紙地図も併用できるようにしています。

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試作にあたっては、ArcGIS Online と ArcGIS Online に付属する各種アプリケーション群(ArcGIS Open DataWeb AppBuilder for ArcGISOperations Dashboard for ArcGIS、各種 Web アプリケーション テンプレート)、および ArcGIS Pro を用いました。プログラミングは一切行わず、標準機能のみを用いて実現しています。

 社会資源発掘ワークショップでの実践

上記のワークショップ支援ツールを活用する機会として、2015 年 12 月、千葉県浦安市にて開催された「ソーシャルリソースを探せ!」マッピングワークショップに参加しました。このワークショップは、認知症の方を地域で支えることのできる社会資源(ソーシャルリソース)の発掘と、オープンデータ活用を考えることがテーマです。

ここでの社会資源とは、介護・福祉の領域で、本人の生活の支えとなるようなお店や施設、サービス等を指します。一見すると社会資源と思えないような商店や施設であっても、視点を変えたり、少しの工夫を加えたりすることで、認知症の方の生活を支えることのできる立派な社会資源となり、認知症の方が普通に暮らせる地域になっていきます。このワークショップでは、「休憩場所」、「見守り・通報」、「情報提供」、「車いす対応」等々のさまざまな視点から社会資源になりえる候補をフィールドワークで発掘し、参加者間での対話の後、全員でその結果を共有しました。

フィールドワークは調査エリア別に 3 チームに分かれて行いました。各チームでは、帳票型の紙地図を用いて社会資源候補を発掘する役割と、スマートフォンで情報収集用 Web アプリケーションを操作して写真撮影とデータ入力を行う役割を分担して調査を行いました。

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フィールドワークを終え会場に戻った後は、気づきの追加・編集用 Web アプリケーションを用い、集めた社会資源候補をマップ上に表示しながら社会資源としてどのような役割を果たすか、要介護者にとってどのような意味があるかを各チームで対話し、必要に応じて情報を追加・編集しました。

ワークショップの最後には、対話した内容をチームごとに発表し参加者全員で共有しました。その際、マップと写真を組み合わせたダッシュボードを用いました。社会資源候補の一覧をチーム別に色分け表示したことに加え、チーム別に絞り込んで表示したり名称で検索したりして、各チームがどこでどのような発見をしたかを確認しつつ、社会資源の役割やその地域に対する認識を深めることができました。

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ワークショップの終了時点で、ポータルサイト上から社会資源候補データが即座にダウンロードできる状態にもなりました。ワークショップの結果を広くオープンデータとして発信でき、マップやアプリケーション作成等の活用フェーズへ円滑に進められる土台にもなりました。

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幅広い応用可能性

フィールドワーク型のワークショップは、介護・福祉、防災・防犯、観光など地域と関わりの深いテーマはもちろん、新規事業開発に向けた現場観察のような企業内のワークショップにも応用することができます。皆様もぜひ取り組んでみてはいかがでしょうか。

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