東京都豊島区において 10 月 1 日より道路台帳現況平面図のインターネット配信を開始しました。配信には ArcGIS Online を用いており、データの準備・加工から公開、Web アプリの設定まで、すべて職員の手で行っています。
■インターネット公開までの経緯
豊島区では平成 27 年 6 月に新庁舎をオープンし、今まで土木・建築・都市計画の部門ごとに取得する必要があった関連資料をワンストップで受け取ることが可能となりました。この取り組みをさらに加速させるため、取得率がもっとも高い(来庁者の 8 割)道路台帳現況平面図をインターネット上で配信することになりました。これにより道路台帳現況平面図については来庁せずとも利用可能になり、住民サービスレベルの多大な向上が期待されます。
手書きの道路台帳図
公開に先立って、はじめは自由に見られる閲覧コーナーを開設し、来庁者に触ってもらうことから開始しました。そのフィードバックと担当部署との細かい調整など約 4 か月の準備期間を経て、インターネット公開することができました。
縮尺精度の違う 2 つの道路台帳現況平面図を 1 つのレイヤーで公開
(左:従来の道路台帳 1 / 500、右:地籍成果が完了した地域 1 / 250)
■直面した課題と対応策
道路台帳の公開において解決すべき課題が 2 つありました。1 つは座標系の問題です。GIS 上で正確に計測することを考えると、平面直角座標系で公開する必要があります。もう 1 つは精度に応じたラスター データの統合です。地籍成果の整備地区では地籍成果を基にした道路台帳図を優先表示し、未整備地区では従前の道路台帳図を表示させる必要があります。地籍整備地区は字(あざ)単位になっており、字範囲でラスター データを切り抜いて、従前のラスター データに重ねる必要があります。
ArcGIS Online では、デフォルトの背景地図の座標系が Web メルカトルです。1 つ目の課題を解決するため、ArcGIS Desktop を用いて平面直角座標系のタイル パッケージを作成し、その際に 1/250 や 1/500 といった、ラスターの精度にあわせたタイル縮尺を設定しました。このタイル パッケージを背景地図として利用することにより、Web マップの縮尺を平面直角座標系かつ印刷に最適な縮尺設定が可能になりました。2 つ目の課題には、地籍成果ラスター データをあらかじめ字のポリゴン データで切り抜いて未整備地区にかからないようにし(クリップ処理)、その下に道路台帳ラスターを重ねて統合する(モザイク処理)ことで解決できました。
さらに、広域な表示では ArcGIS Online の背景地図を利用したいため、背景地図を通常のレイヤーとして重ねて、縮尺設定を施しています。これに、Web GIS アプリを簡単に作成できるツールである Web AppBuilder for ArcGIS のスワイプ機能を利用することによって、道路台帳図と ArcGIS Online の背景地形図の切り替えを簡単に行うことができるようになりました。
左:スワイプ ウィジェットによる台帳と地形図の切り替え
右:計測ウィジェットによる距離計測
課題解決のため、タイル パッケージ作成の前段階ではいくつかの連続処理がありますが、ArcGIS Desktop のモデル ビルダー機能を活用して、処理の自動化を行っています。
■関連リンク
・好きなレイヤーを組み合わせてベースマップを作ろう