ArcGIS Online で現地調査業務を改善する

図2

いま ArcGIS Online を利用して現地調査業務の改善を図る利用者が増えています。時間短縮、品質向上、工数削減を実現する事例が多く見られるようになりました。今回は、ArcGIS Online を用いた現地調査の準備、運用、メリットなどをご紹介します。

クラウド GIS 導入前の調査業務の課題

クラウド GIS 導入前の調査業務では、表 1 のような課題がありました。

表1

表 1 クラウドGIS導入前の調査業務の課題

クラウド GIS の発展・普及・定着により、クラウド GIS が表 1 のすべての課題に対して有効な解決策となることが認識されるにつれ、調査業務に利用される機会が増加しています。

導入が進む大きな理由として、冒頭で述べた調査業務の品質向上、工期短縮、工数削減効果が期待できることや、スマートフォンと通信技術の一般化が進んだ結果、ハードウェア、ネットワークの調達・運用コストが低下したことも追い風になっていると考えられます。

クラウド GIS の導入効果が具体的に示されている事例として、福岡県北九州市における河川巡視点検業務があります。表 1 の課題と共通ですがクラウド GIS を導入した結果、業務工程が 4 工程から 2 工程に削減されました(図 1)

図1

図 1 クラウドGIS導入による業務工程の削減

また、費用面では図 2 に示すような効果が出ています。委託先の工程削減により委託費用がおよそ 50% 圧縮されています。

図2

図 2 クラウドGIS導入による業務効率化

調査フォーム設計・実装プロセスの改善

調査業務を支えるソフトウェアも進化しています。前述の河川巡視点検の事例では、Collector for ArcGIS が利用されていました。Esri 社は調査者が利用する調査フォームをデザインしやすいように Survey123 for ArcGIS で調査フォームのデザインと実装のプロセスを見直しました(図 3)

図3

図 3 調査フォームのデザイン・実装プロセスの改善

図4

図 4 調査フォームのデザイン・実装と現地調査員のデータ入力

従来のプロセスでは、調査項目等の設計から調査フォームの確認の間にはデータベース設定や調査フォーム作成等の作業が必要でした。このため即時的にフォームを確認するのが難しい状況がありました。

Survey123 for ArcGIS は、図 3 の「改善後のプロセス」を提案します。設計と確認を繰り返し行える(オレンジ色の矢印)ように、プロセスを変更します。その結果として、管理者は調査項目と調査フォームを同時に行えます。もともと調査担当者が利用する画面と、調査結果を格納するデータベースは表裏一体なものなのでこの方法は非常に合理的です。

Survey123 for ArcGIS ではこのプロセスを実現するために XLSForm を採用しました。図 4 のようにフォーム設計を Excel で行い、Survey123 Connect for ArcGIS で動的にフォームを生成し、確認します。確認後に Excel の設計を修正すると自動的にフォームが更新され、動的なフォーム編集が可能となっています。

調査ノウハウの共有

Excel フォームのもう 1 つのメリットが調査ノウハウの共有です。先人の実装結果の Excel ファイルを共有するだけで、誰でもがフォームを自分の環境で再現できます。図 5 は ESRIジャパンで公開中の ArcGIS Solutions 内の「管路の緊急調査 (Survey123 版) テンプレート (ダウンロード) 」ページです。管路の緊急調査の調査フォームがダウンロードできるため、そのままあるいは一部を変更してすぐにフォームを作成し、調査実施できます。

図5

図 5 調査フォームの共有も大きなメリット

さいごに

今回ご紹介した Survey123 for ArcGIS は以下の URL より無償ダウンロード可能です。ArcGIS Online の無償トライアルと組み合わせて評価できます。

Survey123 for ArcGIS Resources