設備ネットワークの管理を可能にする ArcGIS Utility Network のご紹介 その2

その1では、ArcGIS Utility Network (以下、Utility Network) の概要、ライセンス、コンセプト、およびそのメリットについて説明しました。今回はコンセプトの中の「設備やその振舞いをより現実に近い形でモデル化」と「ダイナミックなビジュアライゼーション」についてデモムービーを交えて紹介します。ここでは電力の配電設備を例に説明しますが、ガス、水道などの各設備でも同様の管理を行うことができます。

設備やその振舞いをより現実に近い形でモデル化

設備間の接続性や関連付けの定義

電柱には開閉器や変圧器、避雷器などのさまざまな設備が付属しています。開閉器には高圧線やジャンパー線が接続されています。このようにある設備に他の設備が付属している、あるいは、接続している状態を Utility Network が提供する情報モデルを利用して表現できます。情報モデルが持っている機能はそのまま利用できるので、たとえば、以下の動画のように電柱を移動させると付属している設備も連動して移動します。

開閉器やバルブなどの設備の開閉状態を切り替えたときの振舞いの定義

電力分野では開閉器を開けた時にその先に電気が流れなくなり、ガスや水道の分野ではバルブを閉めた時にその先にガスや水が流れなくなります。Utility Network では、開閉器やバルブといった流れを制御する設備の属性値が特定の値 (たとえば「開」「閉」) のときにリソースの流れが止まることをモデル化できます。以下の動画のように、開いている開閉器を境に高圧線およびジャンパー線 (円弧) の電気の流れが正しく表現できていることがわかります。

構造物に設備が格納されている状態の定義

歩道上にある開閉器塔には開閉器や変圧器といった設備が格納されています。また、地中には洞道と呼ばれるトンネルがあり、その中に収容と呼ばれる棚があり、さらに、収容には送電線や通信線などが格納されます。電力会社ではこれらの設備1つ1つを管理しています。格納されている設備は非常に狭い範囲に密集して存在しているので、これらを GIS 上で効果的に表現することはとても難しい問題でした。Utility Network ではこのような「格納」状態をモデル化できます。以下の動画では、地中の洞道の断面図を表示するデモを紹介しています。Utility Network 上で洞道に格納される収容、収容に格納される電線をそれぞれモデル化し、それを利用して断面図を作成しています(断面図作成自体はUtility Network の機能ではありません)。

ダイナミックなビジュアライゼーション

フィーダーや配水系統といった設備ネットワーク全体のサブセットの可視化

電力分野では変電所から出てきた配電線ごとに、変電所を起点として各家庭を終点とする範囲をフィーダーと呼びます。また、水道分野では配水場から出てきた配水管ごとに、配水場を起点として各家庭を終点とする範囲を配水系統と呼んでいます。Utility Network ではこのような設備ネットワーク全体のサブセットを管理し、可視化できます。以下の動画は、障害が起きて開閉器の開閉状態が切り替わったときにフィーダーの範囲が動的に更新されることを示しています。フィーダー単位で指定した設備の数を取得したり、統計量を算出したりすることも可能です。ここではフィーダーごとの引込線数を取得しています。開閉器が切り替わったタイミングで引込線数も更新されたことがわかります。ガスや水道の場合は供給する管路がループを構成しますが、そのような場合にも対応しています。

設備ネットワークから動的に結線図を作成

電力分野では、変電所や開閉器などのトポロジカルな関係を把握しやすくするために設備ネットワークを模式化した結線図を使用します。Utility Network ではこの結線図も動的に作成できます。以下の動画では左側に GIS データ、右側に結線図を表示しています。GIS データと結線図は連携しているので、結線図上で選択した設備が地図上でどの設備にあたるか、また、地図上で選択した設備が結線図上でどの設備にあたるかを知ることができます。また、開閉器を切り替えたときにフィーダーの範囲に応じて動的に結線図も更新されます。結線図作成の際には、結線図上に表現する設備の種類を取捨選択し、どのようなレイアウトを適用するかを豊富に用意されているテンプレートから選択できます。

本記事では Utility Network に実装されている設備の振舞いや結線図の機能を紹介しました。次回は編集やトレース、そして Utility Network によってArcGIS プラットフォームの活用の幅をどのように広げられるかを紹介します。

本記事で紹介したデモでは、画面インターフェイスは簡単なプログラムを作成していますが、情報モデルを取り扱うバックエンド側はプログラムせずに実装しています。断面図の描画のように Utility Network 単体で実現できないワークフローは別途用意されている各種 SDK を利用してカスタマイズできます。

※Utility Network は現時点では国内でのサポートは未対応ですが、本記事をご覧になって本製品に興味を持たれた方はお問い合わせフォームからお問い合わせください。