先日、一部地域において、WAGRI※ が提供する農地関連データを ArcGIS Online のコンテンツとして試験的に公開しました。今回は公開したコンテンツとその活用例をご紹介します。
※農業データ連携基盤 (WAGRI) は、内閣府が実施する戦略的イノベーション創造プログラム (SIP) において構築された農業データプラットフォームです。WAGRI を利用することで、ユーザーは農業に関するさまざまなデータ (農地・土壌・市況など) を統一の API を使って取得することが可能です。2019 年 4 月から農研機構が運営事務局となり、本格運用が開始されています。
WAGRI に関する取り組み状況
ArcGIS と WAGRI との連携の取組みについて、農林水産省および WAGRI 協議会のホームページに概要資料が掲載されました。ArcGIS Online では、OpenID Connect による認証の連携、WAGRI の一部地域のコンテンツを ArcGIS Online 上で利用することが可能です。以前のブログ記事「OpenID Connect を使用した ArcGIS Online と WAGRI との連携」では WAGRI と ArcGIS Online との認証の連携についてご紹介しました。
公開中のデータ
ArcGIS Online に公開したデータは、WAGRI API を介して取得できる「筆ポリゴン」と「農地ピン」の 2 種類です。筆ポリゴンは農地の耕地面積調査等を目的として農林水産省によってデータ整備・公開されているデータです (農林水産省のホームページからダウンロードすることも可能)。農地ピンは、農地の概ね中心を代表点としてデータ化したもので、農地の権利関係や利用状況などの調査結果を持つデータです (全国農業会議所が運営する全国農地ナビにて閲覧が可能)。
これらのデータは、ArcGIS Online の [レイヤーの検索] メニューに WAGRI と入力することでデータがリストアップされ、マップに追加して利用することができます。
活用例
農地の種別の確認
筆ポリゴンの属性値である「耕地の種類」を使って、農地の種類 (田または畑) を可視化することができます。農地の最新の区画形状が利用できることで、農地の種類別に農地面積の把握、災害時の損害査定の基礎データとしての活用などが考えられます。
借り手・買い手を募集している農地を探す
農業事業者が経営規模の拡大などを目的として、借り手・買い手を募集中の農地を探すためのデータとして利用できます。農地ピンが持つ面積属性と組み合わせて可視化することで、農地の規模も加味した選定も可能になるでしょう。
現地確認調査での利用
農林水産省の公開資料によると、行政等による農地関係業務において現地調査は大きな負担となっているそうです。農地関係の現地調査には、農地の利用状況調査、経営所得安定対策に係る作付け状況の調査など、制度ごとにさまざまな調査があるものの、現在でも紙ベースの調査が広く行われています。こうした現地調査の効率化には ArcGIS Apps が提供する現地調査アプリが有効です。
たとえば先日国内サポートを開始した ArcGIS Field Maps を利用することで、モバイルデバイスを使って現地調査が行えます。自治体職員や農業委員会の担当者は筆ポリゴンや農地ピン、周辺の地図情報 (災害リスク、土壌図など) を現地で確認しながら調査業務を実施でき、調査業務の負担軽減が期待できます。
今回は、ArcGIS Online で利用できる農業データ連携基盤 (WAGRI) のデータについて紹介しました。
なお、先日ブログで取り上げた政府機関オープンデータポータルにも WAGRI のデータへのリンクを掲載しています。
WAGRI API で提供されるデータは順次拡大されており、今後も ArcGIS ユーザーに有益なデータを公開していきたいと考えています。ご期待ください。
■関連リンク
・ArcGIS Hub による「政府機関オープンデータポータル」を公開しました!
・OpenID Connect を使用した ArcGIS Online と WAGRI との連携