はじめに
最近では外来生物による被害を報じるニュースを耳にする機会が多くなってきています。人間が直接的にその被害を被る場合もあれば、地域の生物多様性や農作物、樹木などの自然環境がその被害を被る場合もあり、被害のケースは様々です。
樹木に被害を与える外来生物としてクビアカツヤカミキリが有名です。クビアカツヤカミキリはサクラやウメ、カキ、モモなどに寄生してその樹木を弱らせ、最悪の場合には枯死を引き起こす外来生物です1)。日本では2012 年に愛知県で初めて確認されて以来、関東や近畿でも被害が確認されるようになってきました2)。このようにクビアカツヤカミキリは桜並木の美しい景観や食卓を彩る季節の果物の脅威となっています。
クビアカツヤカミキリの生息が確認された自治体やその近隣自治体においては、被害の最小化や生息数/生息域の拡大防止を目的として、注意喚起や駆除などの様々な施策が実施されています。
本記事では、群馬県自然環境課様による「ぐんまクビアカネット3)」という施策をご紹介させていただきます。
ぐんまクビアカネットの概要
群馬県自然環境課様が実施している「ぐんまクビアカネット」は、クビアカツヤカミキリの発生・被害情報を投稿する「入力フォーム」およびその結果を公開する「クビアカネットマップ」という 2 つの取り組みで構成されています。
入力フォーム
成虫のクビアカツヤカミキリの個体や幼虫の痕跡、樹木への被害などを発見したときにその情報を投稿するためのフォームです。パソコンやスマートフォンを用いて、被害を確認した場所や被害の種類、被害の様子を撮影した写真などを投稿します。
クビアカネットマップ
投稿された情報を閲覧するためのアプリケーションです。被害発生地点と被害の概要を確認することができます。上の画像は記事執筆時点 (2022 年 8 月 8 日) のクビアカネットマップのキャプチャです。この時点では 75 件の投稿があり、そのほとんどが成虫の発見に関する投稿であることがわかります。また、地図上のクビアカツヤカミキリをクリックするとポップアップが開き、投稿された情報をより詳しく確認することができます。
ぐんまクビアカネットを支える技術
ぐんまクビアカネットは、Esri が提供するクラウド GIS サービスである ArcGIS Online を基盤としています。ArcGIS Online ではノンコーディング (プログラミングなし) で情報の収集や公開を行うための仕組みが多数提供されているため、高度な IT 知識を有する人員でなくとも容易にアプリケーションを作成することができます。これらの仕組みを活用し、ぐんまクビアカネットはノンコーディングで構築しています。構築にあたっては担当職員の方が実際にアプリケーションにカスタマイズを施しました。 なお、情報を収集するフォームを作成するために ArcGIS Survey123、情報公開を行うアプリケーションを作成するために ArcGIS Dashboards を活用しています。
さいごに
本記事では群馬県自然環境課様におけるぐんまクビアカネットの取り組みをご紹介しました。この取り組みが実を結び、群馬県内でのクビアカツヤカミキリによる被害が減少することをお祈りしています。
(2) 国立研究開発法人国立環境研究所. “侵入生物データベース”. 2022. https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60560.html, (参照 2022-08-08).
(3) 群馬県. “【7月1日】「ぐんまクビアカネット」の運用を開始しました(自然環境課)”. 2022. https://www.pref.gunma.jp/site/houdou/101582.html, (参照 2022-08-08).
クビアカツヤカミキリをはじめとした病害虫や有害鳥獣による被害の情報収集や公開、地理的な分析を検討したいという方がいらっしゃれば、こちらまでお問い合わせください。