はじめに
ArcGIS Living Atlas of the World に、市区町村別の CO₂[1]排出量を示した CO₂排出量 市区町村別 2019年(令和元年)が追加されました。
カーボンニュートラルの実現のため、温室効果ガス[2]の排出量削減が求められている昨今、非常に興味深く、様々な解析に利用できるデータかと思います。
今回はこちらのデータの中でも、身近な家庭部門の CO₂排出量についてご紹介します。
家庭部門 CO₂排出量について
家庭部門 CO₂排出量の推計方法
はじめに、家庭部門 CO₂排出量がどのように推計されているのかご説明します。
各市区町村の家庭部門 CO₂排出量は、世帯数に比例すると仮定し、都道府県の世帯当たり炭素排出量に対して、市区町村の世帯数を乗じて推計されています。(環境省 HP より)
最後に 44/12 を乗じているのは、炭素排出量を CO₂排出量に換算するためです。
炭素原子 1 個に対する二酸化炭素分子 1 個の重量の比を掛けると、炭素の量から二酸化炭素の量を算出できます。
家庭部門 CO₂排出量の算出方法に出てくる「各都道府県の家庭部門炭素排出量」は、以下のデータより推計されています。(経産省 HP より)
都市ガス:ガス事業年報及びガス事業生産動態統計をもとに推計
熱:熱供給事業[3]便覧の販売量を都道府県別に集計
電力、プロパンガス及び灯油:家計調査の購入数量をもとに推計
家庭部門 CO₂排出量が多い市区町村
CO₂排出量は各市区町村の世帯数をもとに推計されていることから、世帯数が多いほど排出量も多くなります。
それでは、家庭部門 CO₂排出量が多い市区町村トップ 10 をご覧ください。
政令指定都市がトップ 10 を占めていますが、世帯数全国 1 位の横浜市を札幌市が上回っており、1 世帯当たりの CO₂排出量が多いということになります。これはなぜでしょうか?
環境省「平成31(令和元)年度 家庭部門のCO₂排出実態統計調査(確報値)」より、暖房の使用量が多い地域ほど、世帯当たりの CO₂排出量が多い傾向があります。
また、冷房の使用量が多い沖縄も全国平均を上回っています。
以下の画像は、冒頭でご紹介した CO₂排出量 市区町村別 2019年(令和元年)を使用し、各市区町村の家庭部門 CO₂排出量を地図で表現したものです。[4]
北海道や東北、北陸といった暖房使用量の多い地域を中心に、世帯当たりの CO₂排出量が多くなっていることが一目でわかります。
まとめ
CO₂排出量 市区町村別 2019年(令和元年)は、今回ご紹介した家庭部門の CO₂排出量だけでなく、産業部門や運輸部門等、部門別の排出量と排出量合計の属性データも持っています。無償でご利用いただけますので、解析等にお役立てください。[5]
また、ArcGIS Living Atlas of the World には、米国 Esri 社や世界中の ArcGIS ユーザーが随時コンテンツを追加しています。今回ご紹介したレイヤー以外にも多くのコンテンツがありますので、ぜひご覧ください。
脚注
[1] 二酸化炭素のことで、無色無臭の気体です。地球の平均気温を上げる性質を持つ「温室効果ガス」と呼ばれるもののひとつです。炭素 (C) を含む石炭、石油、天然ガスといった化石燃料が燃焼することで空気中の酸素(O) と結合し、二酸化炭素 (CO₂) が発生します。(独立行政法人 環境再生保全機構 HP 参照)
[2] 日本が排出する温室効果ガスのうち約 9 割が CO₂ (経産省 HP より)
[3] 「熱供給事業」とは、一般的には「地域冷暖房」と呼ばれるもので、一定地域内の建物群に対して蒸気・温水・冷水等の熱媒を熱源プラント (ただし熱源設備の加熱能力 21 ギガジュール/時以上) から導管を通じて供給する事業のことです。(資源エネルギー庁 HP より)
[4] 各市区町村の家庭部門CO₂排出量 (千 t – CO₂)÷各市区町村の世帯数×1000
[5] データはあくまでも参考値としてご活用ください。
参考資料
- 環境省「温室効果ガス排出量の推計の前提条件等 各部門の算出方法」
- 環境省「報道発表資料 平成31(令和元)年度 家庭部門のCO₂排出実態統計調査(確報値)について」
- 経済産業省 資源エネルギー庁「第 3 節 2050 年カーボンニュートラルに向けた我が国の課題と取組」
- 経済産業省 資源エネルギー庁「都道府県別エネルギー消費統計の推計方法とその変更について(平成 28 年 12 月 20 日)」
- 経済産業省 資源エネルギー庁「熱供給事業関連サイト その他の情報提供」
- 全国地球温暖化防止活動推進センター「4-5 温室効果ガス排出量の計測単位である炭素換算重量と二酸化炭素換算重量の関係について」
- 独立行政法人 環境再生保全機構「大気環境の情報館 排出物質:二酸化炭素 (にさんかたんそ)」