ArcGIS ユーザーのための内挿ガイド: 内挿の基礎知識

これから ArcGIS での内挿の機能についてシリーズ記事として掲載していきます。内挿の基本的な考え方から ArcGIS で利用できる内挿法の特徴や違いを整理し、内挿法を選択する際のヒントをご紹介します。今回はその第 1 弾「内挿の基礎知識編」です。

内挿とは

内挿とは、既知の数値データ群 (サンプル データ ポイント) をもとに、計算によって未知の部分の値を推定する手法のことです。たとえば、以下はアメダス観測所の位置とある年の 8 月の平均気温データを地図上に可視化しています (データ提供元: 気象庁のホームページ)。

実際に測定された観測所における気温を確認することはできますが、観測所がない街の気温はわかりません。内挿では、すでに分かっている周りの値から値が分かっていない地点の値を補間することができますので、このサンプル データ ポイントをもとに ArcGIS Pro で内挿を行ってみます。

内挿を行うことによって観測所のない街の平均気温も推定値として確認することができるようになりました。

確実な正しい値を知るためには各地点で実際に測定する必要がありますが、すべての範囲の空間を隙間なく調査するのはたいへんな時間と手間がかかることが予想されます。もちろんそのような実測した正しい値が必要な場合もありますが、網羅的な調査が現実的ではないという場合には、代表的なサンプル データを取得して内挿を行うことで他の場所の値を計算します。

内挿が利用できるのは?

内挿は空間に分布する複数のものには空間的な相関があるという前提で行います。言い換えると、近くにあるもの同士が類似の特性を持つ傾向があるデータが内挿に向いているといえます。たとえば、道路を挟んで A 町と B 町が存在するとします。A 町で雨が降っている場合、道路の向かいに位置する B 町でも雨が降っていると高い確率で推定できます。道路を境に急に晴れている確率は高くありません。

この場合、空間に分布しているものは「雨」で、空間は「近接する A 町と B 町」の範囲、相関があるということは「A 町で雨が降っていれば、B 町でも雨が降っている」と推定することができます。距離が近いほど推定の信頼度は高く、距離が遠いほど推定の信頼度は低くなります。

一例として上の項目ではアメダスの気温データの例をご紹介しましたが、ほかにも降雨量、気温、標高値、化学成分の濃度、騒音レベルなど、空間的に連続した広がりをもつ現象の場合、内挿して未計測地点の値を求めることで、面的なデータを取得することができます。

内挿のデータ形式

GIS で扱うデータ形式には、ベクター データラスター データがあります。

内挿を行うことで、サンプルとなる地点のポイント データ (ベクター データ) を補間してラスター化された面的なデータ (画像ファイル) が出力されます。どこが境界なのか不明瞭な空間的な連続性をもつ現象 (標高や気温など) を表す場合、一般にラスター データを利用するためです。

ベクター データは、 建物の形状や行政界、道路など、はっきりと対象物 (地物) の境界を認識できるものの表現に適しているため、内挿補間された面的な表現にはあまり適していません。

内挿の方法

サンプル データから各地点の推定値を算出する方法はさまざまです。この推定方法のことをモデルといい、モデルごとにデータについての仮定が異なります。さまざまなデータに適用できる汎用性のあるモデルもあれば、特定のデータに特化したモデルもあります。モデルごとに異なる計算方法で推定を行いますが、内挿の手法は一般に、決定論的方法と地球統計学的方法に大別されます。

決定論的方法

周囲の測定値および指定された数式に基づいて各地点に値を代入します。この数式によって、得られるサーフェスの滑らかさが決まります。計算にはポイント間の距離のみを考慮するため、サンプル データの空間的な配置については考慮しません。

該当する ArcGIS の主要な内挿法: IDW(逆距離加重)、Natural Neighbor、トレンド、スプラインなど

地球統計学的方法

自己相関 (測定点相互の統計的関係) を含む統計的モデルに基づいています。このため、地球統計学的手法は、推定サーフェスを作成できるだけでなく、推定の確実性または精度の尺度も提供します。サンプル ポイントの空間的な配置も考慮して空間的相関関係をモデリングしますので、サンプル ポイントとの距離は同じでも、データの配置によって推定値が異なる可能性があります。

該当する ArcGIS の主要な内挿法: クリギング

ここまで内挿の基本的な考え方や仕組みをご紹介しました。第 2 弾以降では ArcGIS で利用可能な具体的な内挿手法や利用時のヒントをご紹介します。

関連リンク

フォローする