ArcGIS ユーザーのための内挿ガイド: ArcGIS Pro で利用できる内挿法

ArcGIS の内挿の機能について 複数回にわたってシリーズとして記事を掲載しています。第 1 弾では内挿の基礎知識についてご紹介しました。今回は第 2 弾「ArcGIS Pro で利用できる内挿法編」です。

ArcGIS の主要な内挿法

選択する内挿法によって結果が大きく異なりますので、対象のデータに適した内挿手法を使用することが重要です。

IDW (Inverse Distance Weighted/ 逆距離加重法)

推定する各セルの近く(近傍)にあるサンプル ポイントの値を平均することで、そのセルの値を推定する内挿手法です。距離が近いサンプル ポイントほど相関が強いと考えるため、推定するセルの中心に近いポイントほど、値を平均する際の影響(加重)が大きくなります。

推定値はサンプル ポイントの範囲内に納まります。そのため、IDW で内挿した標高データから尾根や谷は推定されません。 

IDW は高密度で均等な感覚で取得されたサンプルに向いています。たとえば、標高データや国勢調査の基本単位区のデータなどがあります。

[IDW] ツールの詳細

Natural Neighbor

Natural Neighbor 法は、近隣・周辺のサンプル ポイントの加重平均をとります。近隣のサンプル ポイントとの距離によって重み付けする IDW 法と似ていますが、IDW と Natural Neighbor 法では、重みの算出方法が異なります。Natural Neighbor では、内挿に利用するサンプル ポイントからボロノイ図 (ボロノイ ポリゴン)を作成します。さらに、値を推定する内挿ポイントにおいてもボロノイ ポリゴンを構築します。これらのポリゴン同士が重複する割合によってサンプル ポイントの値が影響する重みを決定します。

最も外側に位置するサンプル ポイント同士をつないだ範囲が、サンプル データから作成されるポリゴンの境界 (凸包) となります。Natural Neighbor 法は、凸包の範囲内のセル値のみを出力するため、サンプル データの外側のセルには NoData 値が割り当てられます。そのため、Natural Neighbor 法を利用する場合、必要な対象範囲よりも広い範囲のサンプル データを用意する必要があります。

Natural Neighbor は高密度で大容量なサンプル データに向いています。たとえば、LiDAR データセットなど、大量に取得されたポイント データなどです。

[Natural Neighbor] ツールの詳細

クリギング (Kriging)

クリギングは、地質学の分野で発達してきた高度な地球統計学的手法で、データの空間的自己相関を考慮した統計的モデルに基づいて内挿を行います。サンプル ポイント同士の空間的な配置 (ばらつき) を考慮することができるため、サンプル ポイントが空間的な自己相関をもち、距離または方向の偏りがある場合、クリギングが適しています。ちなみに、IDW とはポイント同士の距離で重み付けする点で共通していますが、サンプル ポイント同士の空間的な位置関係を考慮する点で異なります。
クリギングでは、最初にサンプル ポイントの空間的な自己相関をセミバリオグラムから推定し、サーフェスの値の推定を行います。セミバリオグラムは、近くのものは遠くのものより似ているという地理の原則を定量化します。

クリギングはサンプル データが少ない、地質や大気データなどの測定値の精度が低いデータに向いています。

クリギングは、空間的な統計の知識を必要とする複雑な処理です。 使用する場合は、その原理を十分に理解し、入手したデータがこの手法でのモデリングに適しているかどうかを判断した上でご利用ください。

[クリギング] ツールの詳細

スプライン (Spline)

サンプル ポイント (の値) を必ず通り、サーフェス全体の曲率を最小化する数学関数を使用してセル値を推定する内挿手法です。入力ポイントを正確に通過する滑らかなサーフェスを生成できます。ゴムバンドのようにサンプルとサンプルの間をつないでいくため、滑らかなサーフェスとなります。

スプラインは緩やかに変化する事象を表現するのに適しているため、標高や地下水の水位、汚染の濃度などの変化が小さいデータを表現するのに向いています。また、サンプル値の信頼性が高いデータに向いています。外挿には向きません。

[スプライン] ツールの詳細

トレンド (Trend)

トレンドは、最小二(自)乗回帰の近似を使用して、すべてのサンプル ポイントをひとつの多項式にフィットさせます。サンプル データの値に沿うように一枚の紙をかぶせるイメージです。多項式の次数の設定によって、サーフェスのカーブの数を制御することができます。内挿したサーフェスの推定値とサンプルの実測値の差は可能な限り小さくなりますが、一致することはほとんどありません。このため、データの全体的な傾向を把握したいときに適しています。

トレンドは地域間でサーフェスが緩やかに (徐々に) 変化する事象を内挿するのに適しています。工業地域での大気汚染などです。また、長期間にわたる効果の検証にも利用できます。

[トレンド] ツールの詳細

トポ → ラスター (Topo to Raster)

地形に関する情報(標高、等高線、河川、窪地など)を利用して、水文学的に正しい標高データを内挿する方法です。多くの場合、地形は水の浸食作用によって形作られるため、高地が数多く存在し、逆に窪地はほとんどありません。そのため、連続する排水パターンを得ることができます。トポ → ラスターでは、この情報を内挿処理のプロセスに使用して、連続する流路構造、および尾根と河川を正確に表します。排水条件を加えることで、少ない入力データで精度の高いサーフェスを得ることができます。

[トポ → ラスター] ツールの詳細

バリアを設定した内挿ツール

堤防や崖など内挿範囲内で値の推定を中断させる地物がある場合、その部分にバリアを設定して区域分けし、別々のエリアとして値を推測させることができます。[入力バリア設定を含むスプライン] ツールでは、ポリゴンもしくはラインデータをバリアとして設定した上でスプライン手法を用いてサンプル ポイントを内挿することができます。[IDW] ツールでもライン データをバリアとして設定することができます。

ArcGIS で使用できる内挿法について概要をご紹介しました。解析をしたいデータおよび目的に適した内挿手法の選択の参考にしてみてください。これらのツールを利用するための ArcGIS Pro エクステンション製品については第 3 弾でご紹介します。

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