はじめに
ArcGIS Living Atlas of the World (以下 Living Atlas) とは、米国 Esri 社、ESRIジャパンや政府機関など、世界中の ArcGIS Online ユーザーが公開しているコンテンツを集めて紹介するカタログコレクションです。
その Living Atlas に大規模地震において一定以上の震度が発生する確率を可視化した確率論的地震動予測地図 (平均ケース・最大ケース) を追加しました。
確率論的地震動予測地図とは?
確率論的地震動予測地図とは、日本とその周辺で発生するすべての地震の位置、規模、確率に基づいて、各地点がどの程度の確率でどの程度揺れるのかをまとめて計算したものであり、次の 2 つの作業によって求められます。
- 地震発生確率は、震源断層によって異なるため、各断層の地震発生確率をもとに、今後 30 年間で個々の地点での揺れがある震度を上回る確率の分布を求めます。
- 周辺のすべての震源断層からもたられる揺れの確率をまとめます。
また、確率論的地震動予測地図には平均ケースと最大ケースがあります。
平均ケース : 最も起こりやすいと考えられるモデルを採用するとの方針で、平均活動間隔や最新活動時期の中央の値を用いて地震発生確率を計算したものです。
最大ケース : 平均ケースでは個々の地震についてみた場合、その発生確率を過小評価している可能性があるため、評価された地震発生確率の最大値を用いて計算したものです。
データの活用例
日本では首都直下型地震などの大規模地震に見舞われることが予想されていますが、日本の中枢である東京都心周辺の地震によって引き起こされる揺れのリスクはどうなっているでしょうか。確率論的地震動予測地図では、期間内にどの地域で一定以上の揺れが発生する可能性があるかを判断することができます。
以下の画像は確率論的地震動予測地図 (平均ケース)をもとにした、首都直下地震で大規模な揺れが想定される都心周辺の「2023 年から 2052 年までの 30 年間で震度 6 弱以上となる確率」です。これによりどの地域で震度 6 弱以上の地震が発生する確率が高いのかを一目で判断することができます。
「将来の地震発生確率マップ」アプリも公開
確率論的地震動予測地図を簡単に見られるアプリも Living Atlas に公開されています。
このアプリは確率論的地震動予測地図のデータをもとに地震の発生確率を可視化した一目でわかりやすいアプリとなっています。本アプリでは
「2023 年から 2052 年までの 30 年間で震度 5 弱以上となる確率」
「2023 年から 2052 年までの 30 年間で震度 5 強以上となる確率」
「2023 年から 2052 年までの 30 年間で震度 6 弱以上となる確率」
「2023 年から 2052 年までの 30 年間で震度 6 強以上となる確率」
が平均ケース・最大ケースでそれぞれ表示でき、計 8 つのレイヤーを簡単に切り替えることができます。またベースマップの切り替えや Living Atlas、ローカル ストレージなどからデータを追加しマップ上に表示することも可能な設計となっています。ArcGIS 製品そのものに触れたことのない方でも扱いやすいアプリとなっています。
また、事業所の住所が記載されたファイルを用意することで、マップ上で事業所を可視化し、確率論的地震動予測地図と重ねて表示することもできます。[データの追加] ウィジェットから [ファイル] タブを選択し、対応されているファイルをアップロードすることによって住所を参照しポイントをマップ上に表示することができます。
ここでは自社の事業所という想定でいくつかの住所が入力された csv ファイルをアップロードしました。これによって、自社の事業所に大規模地震のリスクがどれくらいあるかを調べることができます。既存の事業所の分析だけでなく、新たに立ち上げる事業所についても事前に調べることができます。
まとめ
地震大国である日本にとって地震対策は最重要課題の一つです。確率論的地震動予測地図では、一定期間で地震発生の際にある震度以上となる確率を可視化することができます。またこのデータをもとに作成された「将来の地震発生確率マップ」は、ArcGIS 初心者でも一目でわかりやすい設計のアプリとなっており、地震によって一定以上の揺れが発生する確率を可視化するだけでなく、データを追加してマップ上に重ね合わせて分析することも可能です。
本データは無償でご利用いただけますので、将来の地震に備えるための解析等にお役立てください。Living Atlas では、他にも地震や津波などの災害に関するデータが数多く登録されているので、ぜひそちらもご覧ください。